東の果て編 その23 バケツ幼女は今日も元気です!

なんとかかんとか戻って来ました准男爵領ヴィーゼン。しばらく王都には行きたくねぇなぁ・・・。

ややこしい話は先送りにしたので置いておくとして、当面の目標『物資の国内生産の増強』である。

まずは一番簡単な『塩の増産』。現状ですら日産1トンと言う当初の予想を遥かに超える生産量なんだけどこの量(1日)で賄えるのは多くて10万人、実際は5万人くらいであろう。肉体労働してるとどうしても増えるからね?塩分の摂取量。

そもそもこの国の総人口何人くらいなんだよ・・・って話であるが、王都周辺『80万人』、西都周辺『45万人』、北都周辺『40万人』、東都周辺『30万人』でその他も合わせれば200万人を超えるらしい。ちなみに日本で言えば大都会岡山よりも少し人口が多いくらい。行ったこと無いけどね岡山。


凡そ半分を国内の塩湖や岩塩で賄っているとしても不足分は100万人分、最低で10トン出来れば20トン以上は欲しい所だけど・・・あれ?数字だけで見るとそこまで難しい話じゃなさそうだよね?だって今の領民の人数(そして幼女がバケツ持って走ってる環境)ですら1トン作ってるんだもん。海水を直に工場まで引き込んじゃえば魔道具の管理と袋詰めだけだからどうとでもなるはず。

あ、メイドさんの製塩の方も袋を持ち上げる道具を用意しないと腰が死んじゃうな。

てなわけで一度工場を停止して工事をしないといけないので作業中の従業員(なのか?)を集めて


「えー、これから塩(っぽい白い粉)工場の改装を行いますので本日はお休みになります!」

「えっ!?・・・えっと、それはわたしでは役に立たないのでお仕事をやめさせられちゃうと言うことでしょうか・・・?」

「ん?いや、生産量の・・・そうだな、簡単に言えば『ここで作る塩が大人気なのでもっと沢山作って欲しい』から中の機械(魔道具)を大きくするって感じかな?人員はどちらかと言えば足りないくらいなのでクビにはなりません」

「・・・よかった・・・」


このバケツ幼女、仕事したすぎじゃね?ちゃんと食べ物は配ってるはずだしそんな困ってる訳でもないだろうに。給料は寸志だし。

いや、この子よく食べるみたいだもんな・・・おそらくエンゲル係数が凄いのだろう。子供が腹空かせてるとか世間体悪いし配給量もう少し増やすべき?ドーリスに任せてるから大丈夫だと思うけど。


「工事自体はそんなに時間は掛からないけど今後の作業内容は結構変わっちゃうからまた明日の朝一に集合するように。てなわけで今日は解散!!ああ、お駄賃に飴ちゃんをやろう。ちゃんとここに居ない人間にも配るんだぞー」


よし、幼女、壷に飴ちゃんを入れておくから代表してみんなに配るように。俺はとっとこ工事を済ませて帰りたいからな。



いままでバケツを手で持って運んでいた海水を工場まで運ぶ方法。

まず思いつくのは揚水水車を作って水路で繋ぐ。でもそこそこの高さまで上げないといけないからちょっとした観覧車クラスの大きさになっちゃうので見た目がね?目立ちすぎるし何と言ってもデカすぎて邪魔になる。

そうだね、みんなが思いつくアレだね。


斜めにした筒型の井戸『アルキメデスの・・・何とか』いや、なんなんだよ。俺はアルキメデスの井戸とかアルキメデスのスクリューとか聞いた気がする。正式名称は不明。

斜めにした筒の中に螺旋状にした繋がったスクリューを付けてそれを回す(筒にスクリューをひっつけて筒ごと回す)と螺旋を一段ずつ水や土砂なんかが上ってくるアレだ。


うん、これもそこそこデカイが観覧車よりは目立たないだろう。5本ほどラインを引いてゆっくりと動かせば故障もしにくいだろうし一本二本故障しても修理するまでは他のラインの稼働速度を上げちゃえば揚水量は減らないはず。

動力?もちろん魔道具だな。・・・いや。歯車を回す魔道具って何属性を使うんだ?あ、無属性でいいのか。


魔道具の方も大きさを2倍にして10台2列くらいでいいかな。常時稼働にして横につないで海水が溢れないように、溢れそうな分はパイプを海に戻すように通して・・・。

てかこれだけの大きさの魔道具を稼働させたら排水される水がちょっとした小川くらいの水量になるよな。そして今の裏側に水場作ったヤツだとそのまま海に流れ込んで近場だけ海水濃度下がっちゃうよな。

・・・陸側までライン引っ張って農業用の水路に流し込むか?もうこの際『水道橋』作って陸側まで一直線で引いちゃうのもアリかなぁ。下水道がないので各家庭に上水道引くのは無理としても。


工場まで海水を流すために引いていた水路をさらに伸ばして岩場から陸側まで通す。足元はもちろんアーチ型にくり抜いてどうせなら飾りも付けて・・・見た目はローマっぽいアレではなく南○寺の琵琶湖疏水だな。無駄にテンション上がるよね、こういう煉瓦作りの大きな建築物。新築の頃の明るい色もいいけど苔むしたりして侘び寂びを醸し出すのもまた良し。


・・・

・・・

・・・


「思った以上に景観が変わったな。てか水道橋の見た目がすごいカッケェな!」


そして解散したのに誰も帰らず(むしろ陸側の住民も集まってる?)見学してたんだ?何なの?暇なの?確かにこの辺娯楽とかないもんね?

いや、俺もこの四年ほとんど余裕も無かったからこの世界の娯楽といえば『泥団子作り』しか知らないけどさ。たぶんソレはハリス君だから楽しかったのであって俺は楽しめないんだよなぁ。


「・・・賢者様、もう完成したんですか!?ていうかあの高いところのレンガ作りの道すごいカッコいいです!あんなの王都とかにもきっとないですよ!?もちろん王都なんて行ったこと無いし死ぬまで行けないと思いますけど!!あ、でもでも、この前みたいにいっぱいお給料?がもらえたらそのうち行けるかも?これってもう今日から働けるんですかね!?あ、でも海からお水引いちゃったらわたしじゃ出来ることなくなっちゃいましたよね・・・」

「お、おう、ありがとう?てかテンションの上下激しいなおい。そしていきなり悲しい話ぶっこんで来るの止めようね?いや、することはたくさんあるからね?そしてバケツも(袋に塩っぽい粉を移す時に)使う・・・かもしれないし?スコップの方が早いと思うけど」

「バケツつかえるんですか!?ならわたしにもできそうです!!」


そして『給料がいっぱい』とかチクリと嫌味を混ぜ込むのも止めようね?

あれか『新しい工場も出来たんだから給料も上がるよな?』ってプレッシャーをかけてきてるのか?確かに生産量が増えればその分給料も上がるけどね?

腹ペコ幼女、恐ろしい子っ!!

そして幼女の『バケツに対する仕事道具としての全幅の信頼』は何なんだろうか?


なぜだか分からないが今日は休んでいいと言ってるのに幼女以外にも


「いえ、明日から働くなら今日中に作業の説明をしておいて頂いたほうが」


などと言い出す始末。

いや、休む時は休もうな?てかよく考えたらこの工場休日とか無いよね?どんなブラック企業だよ・・・。

今日説明しとけば明日来なくてもいいから俺は良いんだけどさ。


てことでどうせなら海水を揚水するところを見せつけて俺の偉大さを知らしめたいので集まっている領民を水道橋の上に登らせて・・・あ、危ないから先に手すり付けておかないと・・・鉄がそんなに大量に残ってないから木製でいいかな?・・・これでよし。


「アルキメデスの螺旋、起動!!」


ワクワクとした目でカラッカラの水路を見つめる人々、てか幼女、落ちたら危ないから手を繋いでやろうか?いや、そんな驚いた顔しなくても・・・あ、手は繋ぐんだ?

てか両手で持たなくても大丈夫だぞ。あとこっち見てないで水路を見ろ水路を。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る