東の果て編 その22 祝福された恋がしたい!

「それでお話というのは・・・まぁ軍事物資の話ですよね?次点で誰かの暗殺?」

「さすがに察しがいいね、物資の話だよ。妹を問い詰めて聞き出した所によると色々と作れるそうじゃないか。あと暗殺は最終手段だから」

「まぁ作ると言うのは正確ではないんだすけどね?布にせよ鉄にせよ素材になるモノ、鉄鉱石や綿花やくず鉄やボロ布などがなければ大した量は補えませんし。あとフィオーラ様をあまりいじめないでくださいね?」

「・・・わかっているよ、だからそんなに怖い顔はしないでもらいたいな。本当に君は妹の事になると人格が変わるとまでは言わないけど融通が効かなくなるよね。そのくせ嫁にって話になると逃げるし」


おおう、やぶ蛇・・・。別に逃げてるわけじゃないんだよ?そもそもが血統とか身分とか違いすぎてお話にもならないってだけだもん。

何故か知らないうちに伯爵様なんて呼ばれるようになってるけど俺自身はまったく納得してないし。・・・もちろん便利に使わせては貰ってるけどさ。


「ま、まぁ、今はその話は置いておくとしてですね。エルドベーレ・・・東の港町なんですが、そこではすでに現地の商会と契約して資源ごみ、鉄くずやボロ布にクズ皮、その他再生可能なごみの回収を行ってもらってます。これを全国規模でしてもらえれば不足分の物資はどうにかなるとは思うんですが。魔水晶も数にもよりますがどうにか出来ますし。ああ国内に鉱山があれば無理やり資源の吸い出しなんかも出来なくはないです」

「想像以上に無茶苦茶だねぇ・・・。いや、ホントに君の実家はなぜ君を追い出したのか・・・フリューネ候が悔しがるのが目に浮かぶよ。鉱山に関しては私の一存では何とも言えないけど資源ごみ?に関しては直ぐにでも手を打とう。しかしすでに港町を抑えて活動してるとかこちらが気付くよりも早くから色々と理解っていたみたいだね?」

「いや、その辺はそうでもないと言いますか・・・。あちらに行くまで全然知らなったんですがヴィーゼンって言う東の果てを遠い親類が統治してまして。その手伝いをしていただけなんですけどね」


「ほう、可愛い子なのかい?」

「何故女性だと決めつけてらっしゃるのかな?」


まぁ幼女だけどね?


「・・・それも置いておくとしてですね。んー、向こうで作っている塩以外は態々東の端まで持っていって加工してまた各地に持ち出すって行為は無駄でしか無いんですよね。かと言って他に拠点があるわけでもないんですけど」

「ふむ、色々な物を集めてそこからまた送り出す拠点・・・か。それも面白い考え方だな。いや、ハリスと話してるといろいろと考えさせられることが増えるよ」

「影からそっと応援させていただきますので頑張ってくださいね?」

「何を他人事みたいに言ってるんだい?娘婿なんだから馬車馬のように頑張ってもらわないと」


絶対にヘルミーナ嬢は嫁にしてはいけないと心に誓った瞬間である。いや、そもそも娘さんは七歳だからね?

とりあえず鉄製品や布製品は命に関わらないけど塩は市場から無くなると非常に不味いことになるので増産(人力での海水のバケツ移動を効率化するだけでいけるはず)のために一度准男爵領に戻ろうと・・・思うんだけど。


「ハリス、次にどこかに行くときは私(わたくし)も付いて行きますからね」

「ずるいです!それならおねぇちゃまももちろんいいよね?」

「それならば婚約者である私も構わないよね?」

「二人で旅をするのもいいかもしれぬな」


いつの間にか俺の部屋に集合している女性陣の為身動きがとれない。

合鍵は然るべき場所で保管しろとあれほど・・・。


「ええと・・・全員お揃いなので一応ハッキリと言っておきますが・・・私と皆様は婚約関係や夫婦関係と言うものはありませんからね?あとフィオーラ様とリリアナ様に関してはそれなりに長いお付き合い、あくまでも知人としてのお付き合いをさせていただいておりますがヴェルフィーナ様と王女殿下に関しましてはほぼ他人ですからね?」


「そうね、まだハリスがお父様に二人の仲を正式に伝えてはいないものね?でもそんな杓子定規に考えなくてもいいのよ?お父様は反対なんて絶対にしないわ。お母様はもちろん大賛成してくださっていますし何も障害なんてないのよ?」

「ハリスちゃん・・・やっぱりお外に出て他の雌猫に目移りしちゃったのかな?もう・・・しょうがない子ね。やっぱりお屋敷で二人きりでおねぇちゃまがつきっきりでお世話してあげないと駄目ね・・・それなら手とか足とか・・・」

「ハリス、もうすでにおたがいの素肌をさらしあったのに他人なんて酷すぎるよ・・・あんなに情熱的な瞳で私の隅から隅まで視姦しておいてそれはないと思うよ?そんな我儘ばかり言うようなら法に訴えるよ?」

「・・・えっ、何このわらわだけ出遅れてる感じ・・・ハリス!信じてるからな?捨てないよな?もう後がないんだからな?」


物凄く前向きなのが一名と拉致しようとしてるのが一名と脅迫してくるのが一名と面倒くさいのが一名。

脅迫してくるのだけは俺の蒔いた種ではあるが。いや、種は蒔いていないんだけどね?(意味深)

うん、そこそこみんな地雷ではないだろうか?これ、全員この国を代表するレベルの美人令嬢様なんだぜ・・・。


「ま、まぁそのへんのお話も国家の一大事が片付いてからおいおいと?考えるような逃げるような?感じでどうかひとつ。いえ、皆様の気持ちは物凄く・・・ありがたく、嬉しいのですが、そもそも身分の差と言うものもありますしご家族のお考えもございます。私といたしましては祝福されない恋は・・・そう、とても、とても辛いのです。なのでどうか一度皆さんのご家族とよくよく話し合ってみてください。そのうえでお嬢様方のすべてのご家族にご納得頂いた上で・・・再度話せればいいようなよくないような?何にしてもまだ成人もしておりませんので次の新年を迎えるまではお許し下さい」


これで最低年内いっぱいはどうにかなるだろう。残り三ヶ月あるなしだけど。

そして行き遅れてても最上級貴族(約一名王族)の御令嬢である。きっとご家族に反対する人が間違いなくいる・・・はず。

だから全員一致でよく知らない男の嫁にしてもよいなどということはまず起こらない・・・はず。

不確定要素が多すぎるけどとりあえず今をしのげればいいのだ!刹那に生きる男、それが俺。

いや、もちろんここにいる女の子全員に不満があるとかはまったくないんだよ?むしろ普通なら――俺がこの国に生まれた上級貴族の御令息だったとか彼女達が普通の町娘だったとか――喜んで、それこそ飛び上がって喜んで興奮で鼻血くらいは出してたと思うもん。


「てことで今回は未婚の御令嬢の方々をお連れすることは出来ませんのでご了承を。これからは頻繁に王都には戻りますので」


「わかりました、ならこうしましょう、私だけ連れていきなさい?」

「ハリスちゃんとおねぇちゃまは姉弟だから大丈夫だよ?」

「未婚とは言えすでに一夜をともにしているのだから気にしなくてもいいよ?」

「勅命である!・・・連れて行って?」


だから駄目なんだってば・・・。

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