東への旅編 その10 クセがすごい
「・・・んー、まとめると『お、大きめの風の魔水晶がほ、欲しい・・・』でオーケィ?」
「ああ、言い方が少しアレだけど・・・それで合ってるよ。風の魔水晶は火や水ほどは大きいサイズのは見つからないからね。それに純度の高いものとなると・・・迷宮の奥にいる魔物を倒して手に入れるくらいしか思いつかなくてさ」
「そうなんだ?まぁそんなに興味ないからいいや・・・ほれ」
話を聞きながら小声で右掌に5センチ大の魔水晶を創り出し風の属性を込め・・・ぽんと投げ渡す。
「ん?何を・・・ってコレ、風の・・・」
「いくらで買う?」
えっ?お金取るの?・・・当たり前だろう!!
そもそも俺がこの街に居る理由は金策だぞ?丁度良い所に困ってる貴族様がいるなら全力で恩を売ってお金を貰う。
これぞ正にウインウインの関係!ウインウイン。ちなみにウインウインに『紫の』とか『ピンクの』とか『赤黒い』とか付けるととたんにいかがわしくなるぞウインウイン。
「どうして君がこんな立派なモノ持ってるのさ・・・こんな大きいの・・・初めて見たよ・・・」
なんなのこの子、最初に似たようなことをいい出したのは俺だけど完全に誘ってるよね?てかやっぱり痴女だろこいつ。そんなエルフさん、嫌いじゃないぞ?むしろ大好物です。
「で、いくらで買う?」
「君は本当にもう少し会話を楽しむとかそう言うゆとりを持ったほうがいいとおもうんだけど?」
だって、何方かと言えば、お金を置いて、早く出て行って欲しいんだもの。
またはもう一回お風呂に入って欲しい。
「そうだね、金貨・・・20枚でどうかな?」
「そうかーお嬢様はソレがいらないのかー。まぁその辺の商家にでも売ってくるから返して?」
「な、なかなか足元を見てくるね君・・・」
「だってここで変に俺が貸しでも作ったらあとあと関わって来そうだし?絶縁されるくらいの勢いで取れるだけ搾り取っておいたほうが後腐れ無さそうだろ?」
「いや、普通は公爵家の令嬢とは関わり合いを持ちたがる物だけどね!?私、自分で言うのはなんだけど婚約の申込みが引きも切らない美少女だよ?さらに裸まで見ておいてその言い種はどうなのさ!!」
「ホントに自分で言うななんだよなぁ。そしてこの国の美少女って呼ばれてる女の子は全員クセがありすぎるというかアクが強すぎると言うか」
まぁ現状で関わってる女の子がみんな貴族様だから仕方ないって言えば仕方ないんだけどさ。
てことで最終的には『金貨55枚』でお買い上げ頂きました。
「・・・信じられない・・・普通は献上とかするよね?むしろこんな可愛い子ならプレゼントするよね?」
「まぁ迷宮に潜って無為に時間を過ごすよりお金で解決するほうがよかっただろ?」
「それはそうだけどさ。でもあなたから受けた『この御恩は必ず返す』からね?」
「おっ、戦争か?」
「だって『金貨300枚相当はする』大きくて純粋な風の魔水晶を私のために『金貨55枚で譲ってくれた』んだものね?」
今日イチのいい笑顔になるエルフさん。
なっ!?えっ、風の魔水晶ってそんな高いの!?!?火とか水とかもっと安いって話じゃん!!Cさんに騙され・・・いや、そもそもサイズの大きいのはその二属性より数が少ないってエルフさん本人が言ってたしな。むしろ小さいのも少ないのではなかろうか。
「いえいえ、これでも公爵家の元使用人。あくまでもフィオーラ様のご友人のためですからお気になさらず」
「いえいえ、卿に受けたこの御恩、ヴァンプス家の名にかけて必ずやお返しいたします。さて次のお話なのですが」
「うん?まだ何かあるのか?」
「もちろんさ。・・・乙女の素肌を見たのだから当然責任はとるのでしょうね?」
「・・・それは言わない約束では?」
「あれ?そんな書面を君と交わした記憶が私にはないのだけれど?」
・・・図ったなシ○ア!?じゃなくてエルフ!!
さて、翌日である。
俺と蛇は一路東に向かって旅の途中である。
・・・公爵令嬢?そんな人は知らない、いいね?
くそっ、おかげさまで薄暗いうちに宿を出発させられたんだからなっ!人、それを夜逃げという。
だってさ、今までで一番状況的に言い訳が出来ないじゃないですか?だったら最初から見るな?むしろあの状況で見ないと言う選択肢が出る奴は男じゃないと思うんだ!
笑って済ませられる未来もあったわけだしな。たとえソレがどんなに確率の低い未来であろうとも、裸体の為ならばソレに賭ける。そうそれが漢である。
で、このザマである。蛇に散々『お主、馬鹿じゃろ』と言われたがこれからもこんなチャンスがあれば是非とも進んで活用していきたいものである。
お金は夜のうちに部屋から持ってきてもらったので懐は暖かくなった。でも食料がね・・・買えてない。
まさか街に着いて二日後には旅の空だなんて思ってないじゃん!あの街でそこそこのんびりしようと思ってたし。
まぁ無いものを悔やんでも仕方がない。そうハリス君のたった一つの取り柄は前向きな心なのだから。
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