東への旅編 その9 エルフ、否、エロフさん

廊下ナウ。


うん、あれだけ『たとえ何があっても部屋を出ないからな?』と確認をとった上で勝手に風呂に入られてこの有様である。

いや、まぁ多分だけど理屈はわかってるんだけどさ。

装備品に『幻覚の腕輪』とか言うのがあったから。


普通の人には『金髪の美少女』ではなく『赤毛の冒険者(ア○ル・クリ○ティンかよ)』に見えるらしい。

俺?俺はほら、魔眼とか鑑定とか持ってるしそもそも知力とか魔力とか人外だもん、そんな腕輪ごときで騙されるわけないじゃん。


「・・・もう入っていいよ」

「いや、もともとここは俺が借りてる・・・いや、何でも無い」


むっちゃジト目、涙目のジト目。『金髪エルフ』プラス『ジト目』つまり『くっ、殺せ!!』だよね?

メルちゃんに続き中々の逸材の登場だな。姫騎士様?あの子はほら、年齢がね・・・。


「で、私に言いたいことは?」

「『エッチなお身体ですね』?それとも『ありがとうございます!』?もしかしたら『もう一回!もう一回!』かな?」

「違うよバカッ!!・・・うう・・・見られた・・・裸見られた・・・」

「いや、そっちが勝手に見せてきたんじゃん?自信満々に服を1枚ずつ脱いで。そこそこのドヤ顔してたじゃん?」

「そ、それは・・・だって男に見えてるはずだったから・・・て言うかそもそもどうして君には魔道具が効果を発揮してないのさ!!」


いや、男に見えてようが脱いでる本人は女の子なんだから普通人前で脱ぐのは恥ずかしいんじゃないか?そういう性癖持ちなのか?

てかむっちゃ逆ギレされてるこの理不尽。まぁむっちゃ堪能させてもらったんだからプラマイゼロ、いや、収支的にはむっちゃプラスだな。


「お風呂も終わったしそろそろ出ていってもらっていいかな?」

「大貴族のお嬢様の柔肌を見ておいて淡白だね君!?いいよ、君がそのつもりならリリアナに『君の婚約者に乱暴された』って言いつけるから」

「やめろこの痴女、言いつける先がフィオーラ嬢じゃなくリリアナ嬢って所がたちが悪いなおい!!」


リリアナ嬢イコール俺の中では『思い込みの激しいヤンデレ』だからな?それも攻撃的(オフェンシブ)ヤンデレではなく防御的(ディフェンシブ)ヤンデレ。

彼氏が浮気したら(他の女性とたまたま話してただけでなのに)


『そうよね、私こんなだもんね?全部私が悪いの。うん、あなたは全然悪くないよ?そうよね、私と話すよりもあの女性と話すほうが楽しいに決まってるもんね?』

などと一晩ねちねちと責めてきた挙げ句に

『私が死んでも忘れないでね?』

とか言いながら刃物を持ち出すタイプ。うん、すごく面倒くさい。


「・・・なんだ、金か?それとも俺の身体が目当てか?」

「どうして私が強請ってるみたいになってるのさ!!・・・でもその二つなら身体で」

「やめて! 私に乱暴する気でしょう? エロ同人みたいに・・・エロ同人みたいに!」

「えろどうじんって何さ・・・。って言うか君、ソレが言いたかっただけでしょ!!」


まぁそうなんだけどね?んー、言いたいことは分かってるんだ。

いや、俺も迷宮での戦闘行為でどの程度経験値が稼げるかの検証はしておきたいから付き合ってあげてもいいんだけどさ。むっちゃ上から目線だな俺。

でもエルフさんが部屋に訪れてから裸体を堪能しただけで何の話も聞いてないんだよなぁ。


「それで、公爵令嬢が迷宮に入らなければいけない理由はお伺いしても良いのかな?」

「・・・君、どうして私が公爵令嬢・・・ああ、フィオーラの所に遊びに行った時に見かけたとか聞いたとかかい?」

「あーまーそんな感じ?」


お屋敷に来てたとか全然知らないしフィオーラ嬢からも存在すら聞いたことないけどな。何故か俺が他の女性と接触するのを極力阻止しようとするからなあの人。信用が無さ過ぎて辛い・・・。


「なら最初から私が誰だか分かってたと?その上で部屋に連れ込み裸にして辱めたと?」

「『勝手に部屋に入ってきて勝手に脱いだ上に勝手に真っ赤になった』だからな?まぁ御令嬢が裸体を晒して性的興奮を得ているのは一旦置いておくとして」

「ないからね?!?!・・・迷宮に入りたかったのは精霊様のお告げだよ。『光と土の精霊がおやっ・・・力を取り戻した。レマメルに向かい大きく、そして純粋な風の魔水晶を手に入れ我に捧げよ。そこで出会う少年がお前の助けになるだろう・・・』てね」

「えっ?お前ん家の精霊そんなハッキリと喋れるの?」


なにそれ恐い。てか子グマとかウサギがそんな喋り方してたら全然可愛くないんだけど?やっぱり精霊の友は上げなくて正解か・・・。いつまでもオーオー言ってるクマのままがいいや。


「もちろん精霊様は喋ったりしないさ、なぜか昔から精霊様が夢に出てきてはこうやってお告げを聞けるんだ」


なにそれさらに恐い。てかあれだろうな。『夢見の巫女』。俺がこの子とあまり一緒に居たくないと思った原因。

ほら、どう考えても邪神の生贄とかにされそうなスキルじゃないですか?絶対そのうち邪教徒に攫われるじゃないですか?俺は自由な感じの騎士様じゃないから面倒事に巻き込まれたくはないんだよ!!


『出会ったばっかりの他人が将来どんな目に遭おうと他人のままなら気にならないから関わらない(キリッ)』


そして俺は何事もなく生きて行くのだ。いや、さすがに邪神とか復活されたら厄介事では済まないから助けるべきかもしれないけどさ。

まずは本人の身内がどうにかするだろう。知らんけど。

てかさ、風の精霊。『光と土の精霊がおやっ』って何だよ。もうそれ『子グマとウサギがおやつ食べたみたいだからわしも食べたい!!』ってことだろ?何偉そうに『我に捧げよ』とか言っちゃってんだよ恥ずかしい・・・。


そして欲しい物が風の魔水晶なら迷宮に入る必要まったくなくね?そもそも『レマメルに迎え』とは言ってるけど『迷宮に入れ』とは言ってないしさ。

『そこで出会う少年』とか言ってるけど俺がどこに向かうか分かってただけだろそいつ。てかこんだけ広い街でピンポイントに俺のこと探し当てちゃうエルフさん何者だよ?

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