王都公爵邸編 その24 Q・異世界、そして香辛料と言えば?

 なんというかこう完全に『思ってたのと違う』王都お買い物デートを堪能(?)した俺と蛇と王女様。

 王女様と城下町で逢い引きって本来ならもっとこう・・・甘酸っぱい感じのはずじゃない?お別れの時にお互いに贈り物の交換したりとかさ。

『もう2人はきっと逢えないんだろうな・・・でももしも次に逢えるとしたら・・・』みたいなお約束的な流れとかあるじゃないですか?


 そもそもお別れせずに2人で帰って来てるんだから流れも何もあったもんじゃないけど。

 まぁ下町方面には全く行かないでほぼ『貴族御用達な店』で済ませてるんだからさもありなんか・・・。

 いや、もっとのんびりとしても良かったんだけどね?ほら、買ったじゃん?香辛料。


 そうなのだ、どうしてもアレ、そうアレを作りたいのだ!

 そしてアレの旨さを公爵家に広めてアレ無しでは生きていけない体に・・・。

 オースティア様に「ハリス・・・ああ、ハリスのアレがほしいのぉぉぉぉっ!!」とか言われてみたい!!


「主よ、さっきから顔がかなり気持ち悪いぞ?」

「ふっ、自覚は有る」

「なら止めよ!あれじゃな?今日は帰ったらこのまま酒盛りじゃな!」


 うむ、アレが出来たら一緒に飲めや歌えのパーリーだな!

 帰ってきた公爵家。・・・ああ、王女様もまだ付いてくるんですね?

 いえ、不服が有るとか不満があるとかもちろん無いでありますよ?

 あれ?なんだろう?玄関先に二人ほど仁王立ちしてる人が・・・おかしいな?ここは東大寺の南大門なのかな?

 ちなみに向かって左側の口を開いてこちらに語りかけてくるのがフィオーラ嬢(阿形像)で向かって右側の口を閉じて不敵に笑っているのがリリアナ嬢(吽形像)だ。


「あら、ハリス、お早いお帰りなのね?殿下と城下町の散策は楽しかったかしら?」

「ふふっ、うふふふっ」

「あ、うん・・・」


 てか一人はただ笑ってるだけなのにむっちゃ恐いんだけど!?

 でもここで変に言い訳すると余計に突っ込まれるのは自明の理。ここは男らしく


「いえ、決して散策とかそういうのではなくてですね、そう、たまたま、たまたま出かけるタイミングで王女殿下とお会いいたしまして」


 めっちゃ言い訳した。

 この状況で「うん、楽しかったよ!」って言えるやつはどこか(と言うか頭の)オカシイ奴だけだと思うんだ・・・。

 完全にふくれっ面のフィオーラ嬢と終始笑顔のリリアナ嬢に「か、変わったものをお出しいたしますからそれでお許しを・・・」と全面降伏した後で向かうのはもちろん厨。

 今日はお嬢様方が口に入れるものを作るので『小さな使用人用の厨』ではなく『大きな公爵家ご家族やお客様のお料理を用意する厨』。


 むろんここの料理長には好かれていない・・・と言うよりも嫌われているので良い顔はされないのだが、お嬢様二人プラス王女様(さらに蛇)が一緒にいるので俺に対して嫌味を言うことなど当然出来ない。

 ふっ、いいか?これがっ、権力と言う物だっ!虎の威を借る狐とは俺のことさっ!!

 この雑魚キャラムーブが実に心地良い。あ、買ってきた香辛料とかここにないや。


 さて、行って来いで帰ってきたにも関わらす俺の部屋に既に届けられていた荷物の中から選び出しましたのは・・・いや、選び出すんじゃなくて全部時空庫に入れておくべきだな。どうせ使う時は設計スキルで加工するんだし。でかこの短時間で香辛料が部屋の中ですげぇ匂いを放ってるしな。

 完全にご近所に有った印度料理屋さんのかほり。久しぶりにチーズナン食いてぇなぁ・・・。

 ん?これからアレを作るんだろう?ならチーズナンも作れば・・・おっとみなまで言うな!


 さて、材料も揃ったので再び食堂へと∪ターン。今から作成するのはもちろんみんな大好き大好物!の『アレ』なのである。

 あ、しまった!柑橘系の果物買ってきてないや・・・。

 へっへっへっ、料理長ちょっと果物わけてもれぇやすかねぇ?・・・暖色系の色合いのフルーツゲットだぜ!!


 さて、各種香辛料に柑橘系の果物(本日はオレンジっぽいのとレモンっぽいものを使用)さらに・・・大量の砂糖と錬金術で作った炭酸水!

 えっ!?カレーに砂糖?てか炭酸水ってなんぞ?


 ・・・いつからカレーを作ると勘違いしていた?


 そう、今から俺が作るのはもちろん『コーラ』である!!

 もうね、日本を離れて足掛け20年・・・炭酸飲料が死ぬほど飲みたかった・・・。

 あ、シードル(リンゴの発泡酒)は帰って、どうぞ。エール?あんな馬の小○みたいな物が飲めるか!!そもそも微炭酸過ぎて求めてるものとの差がありすぎるし。

 もちろん炭酸水だけなら結構前から作れたんだよ?錬金術だけで出来るから。でもほら、香辛料。北都ではそんなに扱われてないんだよね・・・。てことで


「設計、炭酸飲料コーラ1リットル、炭酸キツ目、1度」


 そう、キンキン、否、キンッキンに冷えたコーラ。黒い液体が手をかざした先でクルクルと回る。

 ちなみに『設計、錬金術、調理、水魔法、火魔法、植物魔法、氷魔法。魔法合成、魔力操作』などなどのスキルを使用しているという。

 ・・・あ、入れ物がないや。どうしようこれ!?水差し、誰かそこの水差し取って!!


「ふぅ・・・危なかった・・・」

「・・・ええぇぇ・・・やはり先程の魔法は危険なものだったのかしら・・・?」

「ん?いえいえ、普通の飲み物ですよ?」

「普通の飲み物は宙に浮かないしあんな禍々しい色はしていないと思うのだけれど・・・」


 フィオーラ嬢がむっちゃ怪訝な顔でこちらを見つめる。

 まぁそんなこたぁどうでもいいんだよ!コーラ!コーラである!テンションの上がり方がコカの葉が大量に入ってそうな勢いで上がっていっちゃうコーラなのである。


「では・・・いただきます!んっ・・・んっ・・・んっ、んっ、んっ、んっ・・・」

「水差しから直に飲むの!?・・・なんとなく飲み方が少しイヤらしいわね・・・」


「ぐぅーーーっ!!!・・・ゲフッ!ペ○シだコレ!!」

「ふっ、くっ・・・くくくくっ・・・」

「ちょっとハリスっ!?殿下の前でいきなり噯気(おくび、いわゆるゲップ)を出すとか何を考えているの!?殿下もそんな笑ってらっしゃる場合ではありませんよ!?」


「ううう・・・うううううう・・・ペ○シだこれ・・・」

「そしてどうしていきなり泣き出したのかしらっ!?」


 だって・・・本当に飲みたかったんだもん・・・コーラ・・・。うめぇなぁ・・・むっちゃうめぇなぁ・・・喉にしみる強炭酸・・・。

 あ、ペ○シは好きなので大丈夫です!むしろペ○シの方が好きまである。カロリー0?そんなラーメン食いに行って麺を抜くみたいな事するわけ無いだろう!?


 ちなみにこの後三人のお姫様にもおすすめしてみたが


「いえ、人前で噯気が出してしまう飲み物はさすがにちょっと・・・」

「わ、私も少し恥ずかしいかな?あ、ハリスちゃんと二人きりの時なら・・・いいよ?」

「ふむ、材料の買い出しに付き合わされたのだ、もちろんいただこう」


 相変わらず男前な王女であった。


「コク、コク・・・。これは何と言うかエールの何倍もいや何十倍も刺激的なのど越しとこの甘いだけじゃない複雑な味わいに少し酸味の効いた後味・・・癖にケプッ・・・」


 思わず吹き出しちゃったらむっちゃ睨まれた。

 てか砂糖は少し減ってるけど香辛料は殆ど減ってないな?これでしばらくは炭酸飲料には困らなそう・・・次は爽やか路線でサイダーとジンジャエールだな!!

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