王都公爵邸編 その18 赤い魔神
「ではこれより第三王子殿下と公爵家麾下のハリス子爵による決闘を執り行う!!」
いやいやいや!まだリングイン(?)すらしてないのにいきなりツッコミどころ!!!
俺、ただのお嬢様の側仕え!公爵家『麾下』ってそんな旗本とかとか御家人みたいな立場じゃないから!
あまつさえ『子爵』ってなんだよ!ど平民、むしろど貧民だわ!!
何事ぞ!?と公爵家の皆さんが見学している席を高速で見渡すが・・・ガイウス様が笑顔でサムズアップしてた。
お前それアレだろ?サムズアップじゃなくローマの皇帝がコロシアムでやるやつ。
親指を下に向けたら負けた剣闘士(グラディエイター)が殺されるやつ!
「この決闘の勝者の権利として求める物!」
「第三王子殿下はフィオーラ嬢そしてリリアナ嬢の両名、及びハリス子爵の身柄!」
「ハリス子爵は第三王子殿下によるフィオーラ嬢及びリリアナ嬢への謝罪と今後の不干渉、及びハリス子爵に対する――」
あぁ・・・あのクソ王子・・・言うに事欠いてうちのお嬢とリリおねぇちゃまを物あつかいだと・・・。
この前襟首掴んた時についでに首もへし折っておくべきだったな・・・。
「両者前に!!」
いかん、これはあれか、俺の冷静さを無くして少しでも勝率を上げようというあの馬鹿王子の策略か!?
チッ、馬鹿だと思って少々舐めすぎていたか?
でもな、勇者って言うのはな、他人の為の憤りはそのまま攻撃力に加算されるんだぞ?(※そんな能力はありません)
まぁ・・・いい。とっとと終わらせるか。
練兵場の端から中央に向かいゆっくりと歩く。
ちょっとイライラしすぎて逆に物凄く良い笑顔になっている俺。竹○直人の笑いながら怒る人みたいな状態だな。
本日の衣装はそこそこ派手ではあるが貴公子の装い。フィオーラ嬢が見繕ってくれた。ちなみに姫騎士様には暗黒卿のコスプレを強く進められたが。
いや、それ見た目でこちらが悪役認定されちゃうやつだから!!
対して反対側から姿を現したごつい熊みたいな・・・たぶんおっさん?
ガッチガチにプレートメイル着込んでるから兜で顔が見えねぇ。
まぁ素手(武器は持たず)でってルールだけど鎧は着てはいけないとは書いてなかったしね?
まぁどうでもいい、鎧を着てようがドラゴンを着てようが殴り続ければ相手はそのうち死ぬんだから。
「ははっ、手が震えてるぞ坊主、とっととごめんなさいすれば命くらいは助かるかもしれんぞ?」
「黙れ青汁」
何だよ青汁って。緑虫とか三日月藻ならまだしも青汁って。何がまだしもなのかは不明だけど。
自分で口に出したのに意味がわからなすぎてちょっと笑いそう。
「では、初めっ!!先方ドラープ!!」
「悪いな坊主!恨みはないがここで死ねっ!!」
全身鎧男が思い切り右手を振りかぶり俺の顔を正面から殴りつける。もちろん俺はその拳を――微動だにしないで顔面で受け止める。
いや、正確には『HPで受け止める』だな。それ以前の問題で防御力も貫通してないから1ポイントすら減ってないけど。
攻撃を受けた結果は『ガキーン!!』と言う派手な音が鳴り響いた。以上。
うん、高々『レベル5 筋力12』程度の打撃でどうこうなるようなステータスの上げ方はしてないんだ。
「・・・は?・・・え?」
呆気にとられる審判と全身鎧男。この審判も鎧熊が有利になるよう進めるよう馬鹿に言い含められてるんだろうなぁ。
でもさ、青汁と人間様では喧嘩にはならないんだよ?むしろ青汁に喧嘩を売る人間は色んな意味で病院に行かなければならないと思います。
せめて、せめて生き物と戦えと!
先に一発殴らせてやったんだし相手も満足しているだろう。
「もういいか?」
「は・・・あ。つ、続いてハリス!!」
「そこの鎧、死にたくないなら胸の前で両手をクロスさせとけ」
もしも拳が胸を突き抜けるとかしたら完全なグロ画像だからな。
意味はわからなくとも危機管理の能力はあったのか言われた通りに腕を十字に構える全身鎧男。
そのど真ん中に向けて拳を思い切り・・・正拳突きの要領で拳をひねりながら振り抜く。
大砲が発射されたような『ゴドーン!!』と言う破裂音とともに色んなものが潰れるグチャッとした感覚が拳に伝わる。
そして吹き飛び5メートルほど先で川面じゃなく地面を水切り石の如く跳ねる全身鎧男の体。
「よし、次はあいつの番だな」
「い、いえ、あ、あれではもう・・・」
離れた所で馬鹿がイカサマだの何だの叫んでるな、本当に無様な人間だ。王族なら王族らしくしてもらいたい。
ちょっと殴りに・・・あ、赤いドレスの人が叫んでる馬鹿の首根っこ掴んで観覧席からこっちに来る。
何アレ恐い。
全身真っ赤とか『炎の魔神(スルト)』なの?
段差とか障害物とか気にしないで引き摺ってるから『王子のヨウナモノ』が思いっきりいろんなとこにぶつかってる。むしろわざとぶつけてるよね?
目の前まで来た赤いドレスの少女・・・ってほど幼気には見えないな、おっぱいおっきいし。おっぱい、おっきいし!大切な事なので2回言いました。
ワインレッドの髪にルビーの瞳、華奢な体に白い肌。胸元が大きく開き、太ももまで大きくスリットのはいったフリフリのドレス・・・薔薇をくわえて踊ってたらカルメンだな。
自分の事を棚に上げてなんだけどどこにそんな人一人引きずり回すような力があるのか?
「見苦しいものを見せて済まないな。ハリス子爵と言ったか?」
「は、いえ、子爵ではありませんがハリスではあります」
「そうか、いや、なかなかおもしろいものを見せてもらった」
「はぁ、恐縮です?」
「では敗者のこいつにはこの場で直ぐに謝罪とお主達への今後一切の不干渉を約束させよう」
その後は何かを言おうとする度に頭を踏みつけなじられる王子と『赤い魔神(仮名)』さんの調教ショーの様な光景が繰り広げられるのだった。
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