王都公爵邸編 その19 最強の姫騎士様(ラスボス)
大した時間はかからなかったが『決闘と言う名の祭り(嬉しくもない強制イベント)』も終わり、王城より馬車にて公爵邸まで帰宅する。
左右を公爵令嬢と侯爵令嬢に挟まれるという素直に受け取るならご褒美、現実的には罰ゲームの様な時間を過ごしたけどな!
てか罰ゲームの原因がもうひとり居るんだどね?何故か俺の膝の上に座る『姫騎士様』ことヘルミーナ嬢。
そう、完全に包囲されてるのだ。
だってちっちゃい子がむっちゃにこやかにしてるので膝から降りてくれって言うのも大人げないしさ・・・。
てかこの馬車だけ御令嬢率高すぎませんかね?普通は一人一台とかだよね?そんな決まり事はない?確かに。
てかお二人共いいお歳なんですから小さい子供にそんな目を向けるのはどうかと思いますよ?――などとは絶対に口にしてはいけない。
『いいお歳』この界隈ではなかなかの破壊力を有する地雷ワードなのだ。
俺個人的には全然そんなことは思ってないんだよ?でもほら、お二人共現在はご婚約者すら居ないわけで。
社交界では立派ないきお
「ハリス、あなたから何となく不快な思念が発せられた気がしたのですが?」
「ハハッ、ご冗談を」
『某ネヅミ』の様な感情のない甲高い笑い声を出す俺。
ちなみに馬鹿王子を引きずり回した上に踏みつけなじり、ボロボロにしていた『赤い魔神(仮名)』。
王族をあれだけの目に合わせてもお咎めがない、つまり王族。うん、そうだね、王女様なんだ。
と言うよりもこう言った方が早いかな?『王国三大美女の一人』。お名前は『アリシア』殿下。
そう、少し昔に『最後の一人は王族だから合うことはない』なんて言うフラグ立てたやつのせいでこのザマである。
責任者出てこい!!・・・俺だった。
ちなみに三大美女の御年齢だが
フィオーラ嬢・・・18歳
リリアナ嬢 ・・・17歳
魔神 ・・・20歳
三大美女にはおそらく何らかの結婚できない呪いか何かが
「ハリスちゃん・・・逃さない・・・」
「ハハッ、ご冗談を」
楽しそうにしている幼女に比べて左右の美少女の闇が深いです!!
てかさ俺、決闘の勝利の報酬に『王家とは今後一切の交渉を持たない』って入れていたんだよね。
それがいつの間にか『王子とは今後一切の交渉を持たない』に書き換えられてたのは何故なんだぜ?
異議を申し立てたら『えー、宣誓の時にもちゃんと言ったじゃん?でもお前異議申し立てしなかったじゃん?』って返された。
あ、あの時はほら、あの馬鹿王子のせいでガチギレ・・・少々冷静ではなかったから・・・。
クソッ、それもこれもアイツのせい。この恨みハラサデオクベキカ・・・。いや、まぁ恨みはとうに晴らしてるんだけどね。
自業自得、因果応報、抱腹絶倒である。あ、おっちゃんこっち焼肉定食追加でー!
馬車はゴトゴト音を立て道を進むよ公爵邸に・・・普通にお屋敷に入っていく侯爵家の父娘。
なんなのまたみんなで晩餐会(パーリーナイッ)?
まぁいいや、俺は俺で公爵様に話があるしな。
たかだか一使用人が最上級貴族に話があるなどと言っても普通は受け付けてもらえるものでもないけど今日に限ってはほら、祝勝会っぽい雰囲気もあるからいけるだろうとお世話になってるジョシュアじいちゃんに取り次いで貰えるようにお願いする。
・・・夕食の前に会ってもらえるらしい。
うむ、第一関門突破ってとこだな。
今日はいつものメイドさんではなく家令のジョシュアじいちゃんの先導で公爵家の応接間で案内される。
扉を開くと
「何故全員集合・・・?」
何なの?まだ8時じゃなく夕方なのに。
人数多すぎじゃん。応接間ではなくちょっとした会議室じゃん。
「ハリス、まずは良くやったな。本日の一件、大儀であった!」
「はっ!有難き幸せ!・・・ではなくてですね」
別に褒めてもらいに来たわけじゃないんだよなぁ。
言いたいことは3つ。
まずは『勝てたからいいけどフィオーラ嬢やリリアナ嬢を決闘の景品の様な扱いをするのはいかがなものなのか?』と言う話。
答えてくれたのはコーネリウス様。
「それは本人達も納得済みの話だよ。決闘と言うことであちら(馬鹿王子)の言い分も飲む必要があったしね」
「いえ、それでも、もしも私が負けるような事があればどうするおつもりだったのですか!」
「逆に聞くけれど屋敷にいる50人の手練を布製の棒で、尚且一人で手玉に取る様な人間に勝てる相手がいると思うかい?」
「・・・そうだとしも体調不良や何らかの妨害工作などがあればどうなさるおつもりなのですか!!」
「君は本当に妹の事になると意固地と言うか頑固と言うか・・・。もし君が負けた時は無視するに決まってるじゃないか。あれは『君と王子の約束』であって『王家と公爵家の約束』ではないのだからね」
・・・言われてみればその通り・・・なのか?
いや、確かに俺がどんな約束しようがフィオーラ嬢もリリアナ嬢も『そんな使用人の言ったことなんて知らないんだけど?』って押し切れば通るだけの権力はあるもんな。
でもなんだこのモニョっとした感覚は。
いや、まだあと2つ!
「そ、それに子爵と言うのは一体」
「ただの平民が王子と対等な条件で決闘が出来るとでも?」
もちろん思ってませんけどね!!
「そ、それなら事前にですね」
「告げていたらごねただろう?」
「何ですかその駄々っ子扱い・・・」
もちろんゴネるけどなっ!!
某家電量販店のおもちゃ売り場で寝転がってジタバタする子供バリにゴネるけどなっ!!
「はぁ・・・畏まりました。もしも負けていてもお嬢様に被害が無かったのなら私が言うことはなにもないです」
「まぁそう拗ねない拗ねない」
「まったく拗ねてなどおりませんからね?」
うう・・・これだからインテリは・・・。ああ言えばこう言う・・・(ブーメラン)。
「ではこれで終わりでいいのかな?」
「・・・いえ、最後にもう一つ」
「それは今は無理かな?あれだけ目立ったんだから居なくなられるとそれこそ公爵家の沽券に関わるからね」
えっ?何も言ってないのに何で分かってるのこの人!?
「・・・居なくなる?ハリス、どういうことかしら?」
「ハリスちゃん、戻ってきてくれるのね?」
「ハリス・・・どっかいっちゃうの?」
・・・てかインテリヤクザ、このために御令嬢を全員集合させてたな!?
てか卑怯だろう!特に幼女はつかっちゃ駄目なやつだろう!!後リリアナ嬢のは逆効果だと思いました。
「・・・いつから気付かれてました?」
「無論前回二人で話した時さ」
特にそれっぽいことは言ってないと思うんだけどなぁ・・・。
亀の甲より年の功ってやつか?うん、今後この人とはあまり深い会話はしないように注意しよう。
「はぁ・・・畏まりました(本日二度目)。もうしばらくお世話になります」
「そうだね、末永く頼むよ」
話も終わりと席を立とうとした俺に
「それで、卿はうちのリリアナとそちらのフィオーラ嬢のどちらと婚約するつもりなのかね?」
「はい?えっと、ちょっと待ってください、いきなり何のお話ですか?」
「何のも何も卿は『貴族の令嬢』をそれも『二人も賭けて』勝負をしたのだろう?」
「いえいえいえいえいえいえ!!それはあのバカ(王子)の言い分であってですね!!私はそんな大それたことなど考えてもおりませんでしたよ!?」
「たぶん本心から思っていなかったんだろうな卿は・・・。だが今日見学していた貴族連中はどう思い、どう考えるだろうな?」
知らねぇよ他所様の貴族の考えることなんざ・・・。
「とうさま、ハリスはフィオーラおばさまかリリアナおばさまとけっこんするの?」
「お、おば・・・さま・・・ミーナ、あなたいつもは『フィーねえさま』って呼んでるでしょう!?なぜいきなり叔母様になっているのですか!」
「ぐっ・・・だ、大丈夫です・・・私は・・・永遠のおねぇちゃま・・・ですから」
幼女の攻撃!クリティカルヒット!二人は9999のダメージを受けた!!
うるうる顔の幼女がこっちにたたっとかけてきたかと思うと座っている俺に抱きつく。
「ハリス、ハリスはミーナのこときらい?」
「そんなことありませんよ姫騎士様」
「じゃああいしてる?」
「あ、愛と言うのはお嬢様には少しお早いと思いますが・・・決して嫌いではありませんよ」
「だったらおっきくなったらおよめさんにしてくれる?」
「それは・・・色々な情勢などの高度な判断が必要な問題でありますので・・・か、考えておきますね?」
「うん!!」
「ハリス!騙されちゃ駄目!その子、今こっち見てニヤッと笑ったわ!」
「そ、そうですよハリスちゃん!口元が『としま』って動いたもん!」
「二人共、こんな幼気(いたいけ)な子供に何言ってるんですか・・・いい大人なんですからそう言うのは止めましょうね?」
まったく、こんな天使みたいな子供をつかまえて。
なぜか二人だけでなく回りの大人たちも愕然とした顔でこちらを見つめているのだった。
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