王都公爵邸編 その5 ハリスのグルメの味一(あじいち)んぼう
なんかサブタイトルの最後が完全にシモネタになってる件。
あれだよね?料理物の作品って人気あるから・・・ほら、ね?
―・―・―・―・―
さて、なぜか公爵家の厨を預かることになった俺。どうしてこうなった?
それもこれも斜向いのおばさんが『あら、そこまでいうのならもっと美味しいモノをあなたが作れるのですよね?』なんて厭味ったらしくねちっこく言うのが悪い。
思わず『できらぁ!』って答えちゃったもん。うん、どこから見ても完璧な自業自得だな。
まぁいいや、前向きに言うならば『自分の好きな素材で食べたいものを作れる』ってことだもんな!
レッツクッキング!!
・・・てことで調理場面はすっ飛ばして食卓である。
あれ?昨日より人数増えてない?いや、確かに20人分作れって言われたからオカシイとは思ったけどさ。
公爵閣下がお誕生日席なのは昨日と変わらないけど右手にはご長男・・・ご夫妻?奥さんめっちゃ美人っすね。深窓の御令嬢って感じの。
お子さんはお2人ですか?女の子と男の子で7歳と6歳の年子?・・・知らんがな!なんだよ!どうせ俺は独身だよ!
そしてその隣には少し離れて昨日はお向いに腰掛けていた次男とおばさん。
あれ?ご次男は独身なのかな?お母様の性格的な問題で嫁の来手が無いのかな?フフッ。
さらに少し離れてお嬢様とお姉様の母娘。うん、今日もお美しい。思わず温かい笑みが漏れてしまう。
ここまでで9名。ちなみに俺の席は無い。なぜか?料理人だから料理の説明とかしないとならないらしい。
昨日はそんなの無かったじゃないですか!!あ、昨日は身内の晩餐だったからなんですね。てか今日は誰呼んでるんだよ一体・・・。
そして公爵閣下の左手、ご招待された大貴族様がご夫婦で五組。きっちりとした衣装に身を包んだ完全に貴族の晩餐会スタイルである。
・・・昨日初めて会ったばかりの小僧に国家の重鎮の飯を作らせるとかどういう了見でしょうか?最低限先に伝えてくれないですかね?まぁメニューが変わるわけでもないんだけどさ。
ちなみに昨日の様に全部まとめて出すのではなく今日はコース料理風に出していく。
なんとなくその方が馴染みがあるしさ。
一品目、前菜は超簡単、湯通しした野菜と野菜をハムで巻いただけの手抜き。
「『野菜スティックのマヨネーズ添えと野菜の生ハム巻き』でございます。野菜は小さな器に入った白いソースに付けてお召し上がり下さい」
「ほう・・・これは変わった味のソースですな?」
「でもお野菜ととても合いますわね?」
「ハムで野菜を巻いただけ・・・なのにこの馥郁とした味わい」
「ハムの塩加減も上からふりかけた香辛料の使い方も完璧ですわ」
『生ハム巻き』と『生春巻き』って似てるよね?見た目も発音も。ハムの塩加減はもちろんハムを切る厚さで加減した。
白いのは普通のマヨネーズ。サルモネラ?そんなモノ光魔法の前では無力なのだ。
この世界に新しい諺『卵に光魔法』爆誕の瞬間である。意味は『猫に小判』や『豚に真珠』と同じ。
二品目、昨日と同じカボチャのポタージュ。冷製のスープにしてみた。もちろん変な香り付けはしない。
「『カボチャの冷製ポタージュ』でございます。季節を少し先取りいたしました冷たいスープでございます」
「冷めたスープなど飲めたものでは・・・これは・・・」
「甘い、とても甘いですわね。それもイヤらしい甘さではなく優しい素材本来の甘さを最高まで引き出している」
「カボチャを潰しただけ・・・なのにこの馥郁とした味わい」
「複雑なお出汁の味わい。これは豚のハムと牛肉かしら?」
個人的にはポタージュイコールとうもろこしなんだけどなぁ。
味噌バターコーンラーメン食いてぇなぁ。とうもろこし要素が少なすぎる。
三品目、魚・・・昨日も思ったけどあんまり鮮度の良くないものが多かったからまとめて捨ててやろうかと思ったんだけどさ、マス?(インドア高校生が魚の種類なんて見分けられるわけ無いだろう・・・て、事で鑑定したらマスって書いてたからマスなんだろう。何だよマスって、あれか!チンry)のかなり大きい(それはもう大きなチンry)のが有ったので鱗、内蔵、小骨なんかを丁寧に下処理して牛乳に漬けて臭みを取り小麦粉をまぶしてじっくりと揚げる。
「『マスの餡掛け』でございます」
「私は魚料理はあまり・・・なんだこれは、臭みが全く無い?」
「このホロホロとした食感と琥珀色のソース、餡掛けと言うのかしら?見事なマリアージュですわ」
「魚を・・・揚げてあるのかこれは?なかなかに馥郁とした味わい」
「付け合せのお野菜もとても美味しいですわね」
甘酢と悩んだが少しくどくなりそうだったので普通の餡掛け。
もちろん片栗粉なんてないので小麦粉でとろみをつけてある。
片栗粉を使った唐揚げ好きなんだけどなぁ。
四品目、ふふふっ、刮目せよ貴族共!これぞ本日渾身の一品!!
「『箸休めのオレンジのソルベ』でございます」
「ピューレ状にしたオレンジ?・・・いやこれは!?」
「ああ・・・なんなのこの官能的な味わい・・・」
「オレンジを凍らせただけ・・・なのにこの馥郁とした味わい」
「この季節にオレンジを凍らせるなど、美食のためにここまでするとはさすが公爵家ですわね」
五品目、肉料理、普通に焼いて食うだけで十分に美味しいお肉だったんだけどさ。ここはあえて
「『牛のカツレツ』でございます、お好みでお塩か別添えの白い器のソースを少し付けてお召し上がり下さい」
「カツレツ?なんともキテレツな・・・これは旨い、衣が肉汁を閉じ込めているのか」
「すごい、すごいですわ・・・このピンク色に輝くお肉・・・」
「肉を揚げただけ・・・なのにこの馥郁とした味わい」
「絶妙な火の通し方ですわね。お塩でも美味しいですがこのソース・・・複雑すぎて素材が半分も分かりませんわ」
そのソース、串カツソース風ウスターソースなんだぜ。・・・串カツ食いてぇなぁ。
「ご満足頂けましたでしょうか?最後に『紅茶とクレープ、季節の果物のジャムを添えて』でございます」
「うん、いい香りだ。ほう、これはいい、しつこくない甘さの甘味であるな。だがちと量が少ないような」
「みためも愛らしくて甘くておいしいですわね。ああ、ジャムが唇から零れそう」
「小麦粉を焼いただけ・・・なのにこの馥郁とした味わい」
「甘すぎないさっぱりとしたジャム、紅茶に入れても美味しいのではないかしら?」
やることはやったので「では私はこのへんでお暇させていただきます」と一言告げて食堂を退出する俺、この後は自分の食事だ!
てか作ったものって貴族様のご飯じゃなくて日本の家庭料理レベルだけどみんな残さず食べてくれたし大丈夫だよね?
それでは、俺も――ごっはん、ごっはん♪
・・・
・・・
・・・
なん・・・だと・・・?
「ええと、Aさん、そこで何をしているのかな?」
「ふひゅ?むぐむぐ、まぐ?」
「まったく何いってんだか分かんねぇよ・・・。てか、その皿、俺が食べる予定の肉が乗ってなかったかな?」
「むぐ!」
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