孤児院編 その12 突然の別れ話?
さて、フィオーラ嬢との邂逅と言う名の初エンカウントから早くも・・・一週間。うん、大して時間は経過してないんだ。
何が楽しいのか分からないが俺の作業の見学と言う名の邪魔をしに来るのもこれで3回目。
マジでホント勘弁して?作業が進まないと経験値が稼げないのっ!まぁ毎回そんなに長時間滞在するわけじゃないんだけどさ。
教会関係者にやたら注目されるから非常に面倒臭い。
「ふぅん、それであなたならそんな時はどうするのかしら?」
そして俺が作業中とか一切気にせずに話しかけてくるのもどうかと思うよ?何なの?この子俺に興味持ちすぎじゃない?
行ったこと無いけどこのクラスのキャバ嬢さん、いや、ホステスさんが隣に座ってお話してくれるようなお店に通おうと思ったらお幾ら万円くらい掛かるんだろうか?
「そうですね、当日は家に籠もって天候の回復を待ちますね。どうせ見回りに出掛けても何も出来ることなんて有りませんし翌日には通り過ぎてますから」
何の会話かって?
今のお題は『野分(台風)が来た時心配になって畑を確認しに行くのは是か非か』と言うどんな流れでそんな話になったのか全く不明な内容の問答である。
ちなみに前回の『一発金貨一千枚の女』発言に関しては快く(?)許してもらえた。・・・女騎士様にはガッツリと睨みつけられたけどな!
もうね、ホントにいいよね!女騎士ちゃん!などと邪な感情を迸らせながら見つめると剣の柄に手を掛けられるんだけどね!この女(騎士)ヤル(殺る)気満々である。名前は知らない。
ああ、
『少し前に会った彼女の名前を僕はまだ知らない』。
なぜいい直したのかは本人にも分からないから聞かないでくれると嬉しい。
てかさ、フィオーラ嬢、話す時は俺の顔をジッと見つめながら話すんだよ。
大火傷してから追い出されるまでは家族ですら目を逸らしてたのに、普通に微笑んで話してくれる。
何なの?この国の三大美女って見た目が美しいだけじゃなく心も美しいの?天使なの?
もしも中身ハリス君のままなら懲りずにまたストーカー行為が繰り返されてたからね?
もちろんシーナちゃんも普通にお話してくれるんだけどね?あの子も間違いなく天使だな、うん。
あまり関係はないけど『三大美女のあと一人』は王族、本物のお姫様なのでどう間違えても出会うことはないだろう。
あー、残念だわー、ここまで来たら制覇したかったわー(棒読み)。
まぁ公爵令嬢(フィオーラ嬢)に侯爵令嬢(リリアナ嬢)も一般人(貧民含む)はお話するどころかお顔を拝見する機会さえ無いのが普通なんだけどね?
いや、リリアナ嬢はこっちからお屋敷に出向いたから偶然にも運良く(悪く?)会えただけだし、それ考えるといくら自家の領地だとしてもフィオーラ嬢のフットワーク軽すぎじゃないかな?
この見た目でじつはお転婆なの?あん○つ姫的な?ジョ○トイしちゃう感じ?それあ○みつじゃなくだ○みつだな。
女騎士ちゃんならなんかこう稽古とかしててへんなコケ方とかしてジョイ○イしちゃいそうだけど。
特に何もしてないのに俺の中ですでにポンコツイメージが定着してる可哀相な女騎士ちゃんであった。
あ、フィオーラ嬢が来た後はシーナちゃんの機嫌が少し悪くなるのが可愛いと思いました。
そんな日常が続くようになってそろそろひと月。シーナちゃんの火傷の解決方法は未だに見つかっていない。
もう外に連れ出して治療したらそのまま俺だけ消えちゃおうかなどと思いだした今日此頃。さすがに投げやりがすぎるな。
そして相変わらず3日と開けずに顔を見せるフィオーラ嬢。これはもう『通い妻』と言っても過言ではないのではないだろうか?(過言)
繰り返しになるけど彼女『光の聖女様』や『キルシブリテの聖女様』と呼ばれる公爵令嬢。つまり一般人がお目にかかるなんてそうそう出来ない雲の上の存在。
そんな人が最近は度々と教会を訪れている。
何が言いたいかというと
「今日もお参りの人が多いですね」
うん、あなたのせいですね。
あ、そこのおばぁちゃん、フィオーラ嬢を拝む時ついでに俺を拝むのは止めてね?
一応(?)一回死んでるからね俺。現状ハリス君に取り付いた霊体みたいなものと言えなくもないから何かのはずみで成仏しちゃうかもしれないし。
人が多いとか言いながらも騒がしい周りの事は我関せずなのは流石に上級貴族の御令嬢ってところか。教会の隅っこの地べたで彫刻にいそしむ俺を見下ろすように椅子に座り話しかけてくる。
もちろんミニスカートなんて御令嬢がはく訳が無いのでパンチラなんてものは一切無い。素足でもないので踝すら見えてないし。
まぁ一般参拝者が多くても女騎士様が威圧(威嚇?)してるからある程度の距離以上に近寄ってくるような人はいない。お貴族様に近づくのはそこそこ命懸けの行動でもあるのだ。
最近フィオーラ効果で俺の彫った神像も毎日早々に売り切れ御免らしく神父様もホクホク顔だ。
まぁ派手な格好の偉そうな爺さんが喜んでようが凹んでようが(むしろ生きてようが死んでようが)心の底からどうでもいいんだけどね。
「そろそろひと月ね」
「そうですね、今が一番寒い時期ですね」
北海道とまでは言わないけど北陸程度の寒さはある北都周辺。お嬢様は上等な外套で暖かそうだけどさ、俺は結構寒いんだよ?
金銭的にぼちぼち貢献してるからこれでもまだ上等な部類の古着を回して貰ってるんだけどね?貯めた小銭で下着は買えても服まで買うのは厳しいし。
多少他の子より質が上がったとしてもたかだか庶民、否、貧民の古着である。寒い物は寒いのだ!
だからといってあまり厚着すると今度は腕周りとか動かしにくくなるのも難点だし。
でも最近風邪引いたりしてないのは毒耐性を上げたからウイルス系にも強くなったからか、それとも基礎能力値が上がってるから抵抗力(セービングスロー値)が増えてるのか。
馬鹿だからってのは無いと思いたい・・・。
「あなたってこう・・・何も変わらないわね」
「えっ?いきなり何の話ですか?」
着衣で貧富の差を思い知らされ中にいきなりフィオーラ嬢に声をかけられる。
なんなのこの子、付き合って半年くらい経った彼女みたいなこと言い出したんだけど?
あれだよね、この後続けて
『そんなつまらない人だと思わなかったわ』とか
『最近気になってる先輩がいるの』とか
『・・・別れよっか』とか言われる展開だよね?
交際もしてないのに振られちゃうとかそこそこ斬新な展開じゃなかろうか?
・・・まぁ俺は年齢イコール彼女いない歴のピュア拗らせた中年だけどな!
いや、ハリス君には婚約者も居たことだし中の人の恋愛経験はリセットされてると言っても良いのでは?シーナちゃんの事彼女って推し通すのもアリだな。
所謂『困った時の幼女頼り』である。もう幼女じゃなく見た目は少女だけどな!精神的には幼女でも差し支えない気がするけど。
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