第8話 穏やかな日常
(ふぉぁぁああ......凄い......)
快晴の青空の下、僕は今お姉さんと手を繋ぎながら、フローラの街のメインストリートを歩いています。
フローラの街並は石畳みの道に、煉瓦造りの家が立ち並び、街全体の建物はオレンジ、ブルー、エメラルド等の鮮やかな色をしていて多種多様である。馬車が緩やかに走っていたり、通りには沢山のお店や屋台が出店していて、人通りも多く賑やかで何処も活気に満ちている。
「へいっ! らっしゃいっ! 新鮮な採れたて野菜が入荷してるよっ!」
「オーク肉の串焼き、出来たてだよ~! 頬っぺが落ちちゃうよ~!」
「アグルの実、モールの実のフレッシュジュースはいかがですか~?」
僕がお姉さんと手を繋ぎながら歩いていると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえて来ました。
「あんらぁ!? エリスちゃんじゃないのぉっ!? ヒイロちゃんもおはよっ♡」
「エリーゼさん、おはようございます♪ しかし、今日は一段とまた......」
Aランク冒険者の【秘密の花園♪】のリーダー、【殺戮の天使】ことエリーゼさんだ。色々と濃い人でオネエの方です。エリスお姉さんと仲が良いと聞きました。
「今日は街に待った合コンの日なのよぉ~ん♡ 今日こそ素敵な王子様を見つけてみせるわぁん~今日の為にアタシ張り切り過ぎちゃった! てへぺろっ♪」
僕は目を見開いて唖然としてしまいました......エリーゼさんのてへぺろっ♪はインパクトが強すぎます! アフロヘアーにはち切れそうな筋肉の上から青色のドレスを着て、顔は濃い厚化粧、あっ......鼻毛が出てる。
お姉さんも苦笑いをしていた。
「ふぁっと!? 今何時かしらっ!? あらぁやだぁっ!キャンディーちゃん達と合流しなくちゃ......エリスちゃん、ヒイロちゃん、またねぇ~ん♡」
僕とお姉さんは、颯爽と去っていくエリーゼさんの背中を見送った。
(合コン相手の人、吐血するのではないだろうか。まあ、僕には関係ないけど......合コン相手の方ご愁傷さまです)
そして、僕達は気を取り直して街を散策するのでした。お姉さんの手を握ってると何だか嬉しい気分になります。試しにお姉さんの手をにぎにぎとしてみよう。
「にぎにぎ......」
「ん? どうしたのヒイロちゃん?」
「お姉さんの手......暖かい......」
「うふふ......じゃあ私もにぎにぎ♪」
お姉さんが可愛いくて癒されます♪ 笑顔のエリスお姉さんを見てると何だか微笑ましいです。
「ヒイロちゃん♪ お姉ちゃんが抱っこしてあげようか?」
「うっ......外では......恥ずかしいぃ......」
「あらあら、照れ屋さんですね〜うふふっ♪」
あ、お姉さんがニヤニヤしてる......これは僕に何かいじわるしようと企んでいますね? お姉さんの思い通りには行きませんよ......ん? おおっ!? あの果物美味しそう! 甘い匂い......? あれはっ!?
「ふふっ......ヒイロちゃん、私の手を離しちゃだめだよ~あっ! ちょ、ちょっと待ってよ! ヒイロちゃん何処行くのっ!?」
僕は甘い匂いの誘惑に負けて、小走りでお店の中へ入って行きました。
「あらぁ? いらっしゃいっ! お嬢ちゃんは1人で来たのかなぁ?」
店員の茶髪のボブカットヘアーのお姉さんが、にこにこしながら僕に話しかけてきました。
僕は外へ向けて、そっと指を差す。
「あっちっ......居るっ!」
丁度その時、お姉さんが慌てて店に入って来ました。あ、やばい。少し怒ってるかも......あぁ......やってしまった。
「ヒイロちゃんっ! 勝手に1人で行っちゃ危ないでしょ! もう......」
「うにゅ......ごめん......なさいです」
丁度そのとき奥から大きな人影が、こちらへ向かって歩いて来ました。
「アルミナっ! ちょっとこの新しいスイーツを試食してくれないか? お父さんの自信作なんだっ!」
「お父さん! 今取り込み中なの! ちょっと待ってて~!」
厨房の奥から顔を出した大男は、筋肉ムキムキの顎髭を生やした、白いエプロン姿のBランク冒険者【闘牛】テオロスであった。
「お? エリス嬢じゃないかっ!」
「ん? えっ!? テオロスさんっ!?」
このお店はテオロスさんが、経営してる甘味処【熊さんの憩いの場】と言うらしく、テオロスさんには娘さんが1人居て、名前をアルミナさんというらしい。
テオロスさんの妻は、今材料の買い出しに行っていて不在だそうで。
「ガッ~ハッハッハッっ! 先日はお疲れっ! フローラの街が魔物で蹂躙されなくて良かったぜ~流石【深淵の氷剣姫】だなっ! 大活躍だったそうじゃねぇかっ!」
「いえいえ、冒険者達や騎士団の皆様のおかげですよ~【闘牛】テオロスさんも大活躍だったと聞いてますよっ!ダグラスベアーを一騎打ちで倒したとか、凄いですっ!」
テオロスは照れくさそうに頭をポリポリとかいた。
「まあ......俺は根性勝負なら負けねぇからなぁ! ガーッハッハッハッ!」
「ふふっ......」
テオロスと先日の戦いの話しを終えた後......自分の趣味について語り始めるのであった。
「まあ、俺は冒険者の任務や依頼が無い時は、このお店でスイーツを作ってるんだ! お菓子作りが趣味でなぁ。試行錯誤してオリジナルのスイーツを作るのが楽しくてな!」
「そうなんですね! 驚きました。あっ! この子は私の妹の可愛いヒイロちゃんです!」
「僕は......ヒイロっ......でしゅっ!」
僕はびしっと、片手を挙げて名前を名乗った。相変わらずカタコト言葉だけど、ちゃんと話せたので一歩前進です!
「おおっ! そうかそうかっ! 小さくて可愛いじゃねえかっ! ヒイロの嬢ちゃん~良かったらおじさんが作ったスイーツがあるんだが、食べるか?」
「っ!? 食べゆっ!」
そしてアルミナさんは何故か僕の方を見てから、驚いたようにして口に手を当てていた。
「ねえっ!? 今僕って言わなかった? いや言ったよねっ!? ボクっ娘ロリきたぁぁああああああっ! ヒイロちゃんっ! 私の事をお姉ちゃんと言ってみてっ!」
アルミナさんが目をハートにして、僕を見つめている......どうやら変なスイッチが入ったみたいだ。これはデジャブの予感......
「まぁアルミナの事は、ほっといてくれ。あいつは幼い少女を見ると、どうやら興奮するみたいなのだ。アルミナが女だったからまだセーフだが、もし男だったら何度捕まっているやら......幼女大好きなロリコンだけど優しい娘だぜ」
テオロスさんは両手を挙げて、やれやれと言った風に呆れていた。
「テオロスさん、しょうがないですよ~
どうやらお姉さんにも変なスイッチが入ったみたいです。何だか僕の貞操が危ういような......まあ、気の所為だよね?
「よしっ! アルミナっ! 奥の席へ案内してやってくれ! 今から新作スイーツ持ってくからっ!」
「ぐふふ......でゅへへっ......きゃわいい♡ ハッ!? 私とした事が、もう少しで幼女を襲う所だった。ん? お父さんごめん、聞いてなかった。何?」
テオロスは再び呆れていた。
「エリス嬢、ヒイロ嬢ちゃん、奥の席空いてるから好きに座ってくれっ! な~に、お代はいらねえさっ! 好きなだけ食べなっ!」
「いえいえ! お代は払わせて頂きますよ! 申し訳無いですし......」
「ガッハッハッハ! 気にするな! 遠慮せず食べてくれ!」
「そ、そうですか? すみませんテオロスさん......では、ご馳走になります」
そして僕はエリスお姉さんに抱っこされて、奥の座席へと連れて行かれました。
(何故僕は、お姉さんの膝の上なのだ?)
席を着いたらお姉さんは、僕を地面に降ろしてくれずにそのままの勢いで、お姉さんの膝の上に乗せられた。
「ヒイロちゃん! これも美味しそうだよっ! プルプルしてそうな感じかな? こっちは生クリームたっぷりだねっ!」
今日のお姉さんは凄いご機嫌な様子です。何だか楽しそうです。そして僕はお姉さんの開いているメニュー表を見ました。数多くのスイーツのメニューがあり、どれも食べて見たいという衝動に駆られますね。ぐぬぬ......迷います。
(ここ異世界だよね? 生クリーム、苺? いや何かの果実? まあいいか、でも美味しそうだなぁ~ジュるっ......)
「あらあら......ふふっ......ヒイロちゃん~涎垂れてますよぉ?もう~しょうが無いなぁ、お姉ちゃんがふきふきしてあげる!」
「んにゅぅ」
お姉さんに、お搾りでお口をふきふきとされた。
僕は恥ずかしさの余り少し顔が赤くなってしまいました。こう見えても僕は立派な大人何だけどなぁ......トホホ......。
「へいっ! おまちっ! お手製の【森の熊さんパンケーキ】だよっ!」
「「おおぉっ!!」」
ふわふわの熊の形をしたパンケーキの上には、プリンが乗っており、その上にある白いホイップクリームの上から、ギーナの実で作られた甘いシロップが滝のように流れている。パンケーキの周りには、多種多様の果実の実とソースがかかっており、鮮やかな色彩を放っていた。美味しそうだ!
「美味しそうだねっ! それでは、ヒイロちゃん~手を合わせて」
僕はお姉さんの合図で手を合わせました。
「「頂きますっ(ですっ)」」
「おお! テオロスさん、めっちゃ美味しいですよっ! このパンケーキ凄いふわふわで、生クリームは甘過ぎずに丁度良く、そしてこのプリンっ! 凄い濃厚な味わいであり、スプーンですくうとトロトロした滑らかさ。口に含むとふわりと消えて溶けてしまう。最高ですっ!」
「おおっ! それは良かったぜっ! ヒイロの嬢ちゃんはどうだっ? 美味しいか??」
僕は満面の笑みを浮かべて、こう言った。
「おいちぃ!!」
すると、僕の顔を覗き込んで見ていたお姉さんと、カウンターの方からこちらを見つめていたカルミナさんが、手を口に当てて呆然としていた。
◆エリス視点
(今、ヒ......ヒイロちゃんが......笑ったっ!? 見ましたかっ?! 今のっ! めちゃくちゃ可愛いくて、尊かったですよっ! 金髪ロリエルフの笑顔とか......もうお姉ちゃんは死んでも悔いは無いです)
エリスは目から涙を流し笑っていた。そしてカルミナさんはの方は......
「はぅ......♡」
気絶していた、え? 大丈夫ですか?
「子供は笑顔が、1番良くお似合いだっ! 遠慮せず持っと食べな!」
テオロスさんは豪快に笑っていました。やはりこの街の人は良い人達ばかりですね。温かみがあって、お互いに皆助け合って生きている。私はこの街と人々が大好きです♪
◆ヒイロ視点
「テオロスさんっ! ご馳走様でしたっ! また来ますね!」
「お、美味しかった......でしゅっ!」
「おうっ! また来てくれやっ! カルミナも喜ぶだろうからなっ! ガーハッハッハッ!」
そして僕達2人は店を後にした。もっと他の場所も見てみたいです。
「ヒイロちゃん美味しかったねっ! 屋台も少し見て回ろうか♪」
「うにゅっ!」
2人は手を繋ぎながら道を歩くとお店の屋台の人から声を掛けられた。
「おっ! エリスちゃん! 今日も別嬪さんやねっ! その嬢ちゃんは?」
「おぉっ! エリスちゃんに、そこの可愛いお嬢ちゃん! 良かったら串焼き食べるか? 熱々だよ~っ!」
「良かったら俺の店見ていかないか? エリスちゃんなら値引きするぜっ!」
「エリスちゃん! こないだはありがとねっ! この街を守ってくれて! 良かったら今朝採れたてのトマト持って行ってちょーだいっ!」
(トマトっ!?)
金髪の幼いエルフの少女は、その単語を聞くだけで身体をプルプルと震えさせていた。
「皆さん! いつもありがとうございますっ! この子は私の家族で、可愛い妹のヒイロちゃんですよ!」
いつの間にか僕とお姉さんの周りには、沢山の人達が集まっていた。お姉さんの人気が凄まじい......というか店を離れて大丈夫なのかな......皆さん
「ヒイロちゃん言うのか! よしよし」
「あらぁ~可愛いわねぇ、良かったらトマト食べる?」
「お嬢ちゃん甘いジュースもあるよ!」
「良かったらこれどうぞっ! 私の所で作ってる生菓子だよ!」
「うおっ! てか一口が小さいなぁ!」
僕は次から次へと来る、フローラの街の人達に揉みくちゃにされるのでした。
僕は色々な人になでなでされたり、餌付け?をされた。
「皆さん! 落ち着いて下さいっ!」
エリスが大声を上げた時、少し離れた所で声がした。
「「「今の声は......もしやエリスお姉様っ!?」」」
3人の女冒険者達が僕達の方へと歩いてきました。
「あら?貴方達は......」
エリスとヒイロちゃんの前に現れたのは、Cランク冒険者チームの【バビーチェ】の面々であった。
コミュ障エルフ ♀ 異世界でお姉さんに拾われる~ 二宮まーや @NINOMIYA_M
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