妄想小説 Lanp

@koButa87

第1話

「俺……一人います」

静まった空気の中、スッとファルコンが手を挙げた。

「どんな人?」

須貝はiPadに目を向けたまま、ペンを回し、興味なさげに反応した。

「須貝さんは知ってますよ。

ほら、いつも一緒にゲームしてる」

「は?、、んっ……??…………あぁ‼︎‼︎」

須貝はペンを落とし、目と口を驚くほど大きく見開いた。

「マジか‼︎編集出来るの⁈」

「出来るってゆーか、ゲームよりむしろセンスありますよ、編集とかの方が」

「ゲームもなかなかよ、彼女。それ以上って事は……えっぐーー‼︎」

子供のように、はしゃぎ興奮を抑えきれない様子の須貝に福良が聞いた。

「どんな子なんですか?」


「とりあえずね〜、ノリがいい。理解が早い。人狼が上手い。あとは〜いつもなんか食ってるでしょ〜。んで〜、、」

天井を見上げながら、指折り数え、笑っている。時折“フフフ”と笑い声まで出ている。


「へぇ〜‼︎すげぇ良さげじゃん‼︎」

伊沢が指をパチンと鳴らした。


「仕事は普段何してるんですか?ITとか……そうゆう系?」


みんなが食い気味で話す中、冷静に福良がファルコンに聞いた。

「いや、それが全く。普段もパソコンは使ってるけど、フツーにOffice系で書類作成くらいみたい。パソコンより接客してる時間のが長いっぽい。パソコンめちゃくちゃ出来るから“もったいねー”って前から思ってたんだよねー」

「それってさー、そのままウチで続けるパターンはっ⁈」

伊沢はまた指を鳴らしながらファルコンに言った。

「あぁ、、残念ながら、たぶんそれはないっすね、、。今の仕事、好きみたいなんで。今までとは違う業種に三十過ぎてチャレンジして、やっといい感じになってきた!って喜んでたんで」

「へぇー‼︎そっかー、、でも、聞けば聞くほど唆られるわー。」

伊沢は子供がおもちゃをねだるような、キャッキャした顔をしている。

「相手の人生なんだから、無理意地はダメだよ伊沢。」走り出したら暴走しかねない伊沢に福良は少し困ったような、怒ったような口調で言った。

「分かってるって♪じゃぁ、とりあえずその子にアポよろしく‼︎日時が決まったら連絡よろしくっ。はいっ!解散‼︎」


「やっばーーー‼︎ちょー楽しみぃ‼︎‼︎」

伊沢と須貝は、ワイワイしながらハイタッチまでして、跳ねるように打ち合わせ室から出て行った。


「ファルコンさん、最初に僕と三人でとかセッティングできますか……?あのテンションのままだとやばい気がして……」

福良は、ファルコンにもかろうじて聞こえる程度の本当に囁く声で言った。

「須貝さんは気に入ってるの分かってたし、伊沢さんも気にいるだろうしーって、僕は話す前からこんな感じになるのは分かってたかな」

フフフと微笑しながらファルコンは返答し、

「で、早速なんですが今夜空いてます?飲みに行くんすけど、アイツと」

「えっ!うーん……仕事でのお付き合いになるのに、最初の席が飲みかぁ……」


渋る福良にファルコンがたたみかけた。

「いやー、飲みの方があいつの事、分かると思いますよ。シラフの時に初対面だと、ほぼ喋らないんで、あいつ」

「…………うーん…………」

暫く黙り込み悩んでいた。


「………………じゃぁ、行こうかな!よろしくお願いします‼︎」

「よしっ!じゃぁ、上がるときに連絡下さい。先に店、行ってるんで!」


「あ、でもっ‼︎相手の方に聞いてからにして下さいね、僕が行ってもいいか!」

慌てて福良が言った。


「はいはい、律儀だなぁ、相変わらず。分かってますよ。大丈夫です。もう言ってあるんで〜」


「えっ⁈」

福良の驚く態度を見ないうちにクルッと向きを変え、ドアに向かって歩き出した。

手をヒラヒラと振り、ファルコンは打ち合わせ室から出て行った。


心の中では“シラフのアイツに言ったら“絶対ムリー‼︎”って言うに決まってる。まぁ、先に数杯飲ませておけばいいなと思っていた。

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