第58話 聖樹さんとのお話です。


さて、案内されたのは例のでかい木。


ほえ〜本当にでかい……。


目の前にするとただの壁にしか思えない。

見上げても枝葉が多すぎて、てっぺんは全く見えない。


この木がエルフ達の信仰を集めている〝聖樹〟様。

集落を結界で護る者。



「ほれ、ほれ!! さっさとトレント化するのじゃ!」



はいはい。わかってますよ〜。急かさないでください。

僕は〝聖樹〟様へ近づくと、そっと幹に手を触れる。


おぉ!! お? おぉ?


なんか桜花さん(木)とはまた違う感触。

思ったよりスベスベした幹。

前世で言う百日紅サルスベリみたいだ。


そのスベスベした感触を楽しむように撫で続ける。



〝バシッ!!〟


「いつまで、撫でくり回しているのじゃ! このスケベが!」



桜花さん(人)に頭を叩かれてしまった……。


それにしても酷くない? 人を痴漢みたいな言い方?

あれ? エルフさん達もそんな目? あれ? もしかして………〝聖樹〟様って女性?



「………そうじゃ!」



一言、桜花さん(人)はそう言うとそっぽを向いてしまった。


うん………僕はそこから一生懸命桜花さんに謝ったよ。

だって知らないって言うか……解らないじゃん……木の性別なんて?

わかる人いる?………えーっと、桜花さんは分かると……えっ!!エルフさん達も!!


ごめん。桜花さん。

そんなつもりで撫でてたんじゃないからね。

ちょっと幹がスベスベしてて、触ってて気持ちよかっただけなんだよ……。


え? ゴツゴツしてて悪かったな!だって!?

そんなこと言ってないでしょ!

桜花さんの幹の感触も好きだよ。

落ち着くって言うか、安心するって言うか………癒される……そう、癒されるんだよ。

だから、ずっと触ってたくなるんだよね。桜花さんの幹には………。


だから機嫌治してね……お願いします。


数十分謝り続けて、やっと桜花さんの機嫌が治った……。

僕は息を切らしながら這いつくばってしまう。


なんかやりきった感が半端ではない。


よし、桜花さん。

お茶にしよう。


すると、今度はルーディアが縋り付いてきた。


どうしたの? うん………? あぁ、〝聖樹〟様のトレント化か……。

すっかり忘れてた……。

桜花さんもすっかり興味を無くしてたし……。



さて、改めて気を取り直し……〝聖樹〟さんの幹にそっと


そこで、ふっと思い至る。

〝樹木の〝トレント〟化の設定〟その中の〝自然に育った樹木のトレント化の設定〟………初めて使うんだった。


これって、なんのリスクも制限も無く使えるのか?

初めてがめっちゃでかい〝聖樹〟様って言うのも不安だが……


まぁ、なんとかなるでしょう……。

とりあえず……掛け声は……。



「トレント化!!」



〝聖樹〟様を中心に、急速に緑が生い茂っていく…………そして、僕は気を失ったのだ。


▼▼▼


う〜ん。っと目を覚ますと、桜花さんの顔は間近にあってビビる。

それから知らない顔も覗いてきている。


うん……これはまた桜花さんの膝枕。

優しく頭を撫でてもらうオプション付き。

さすが僕のいも……お姉ちゃん。

癒される。


身体には異常はないみたいだ。

ずっと膝枕していて欲しいけど……キリがないので身体を起こす。


っで、初見の彼女……あなたは誰? って1人しかいないか……。


あ……あぁ〜はいはい。 〝聖樹〟様ですね。


それっぽい、淑女なお姉さんだ。

素晴らしいボンキュ………ゲフンゲフン。

なんでもないですよ〜桜花さん。


僕が起きたばかりだが、座ったまま早速お話し合いスタートです。

ただ、エルフの皆さんは何故か土下座中。


謝罪ではなく、ただ〝聖樹〟様には頭が上がらないそうだ。

ついでに、桜花さんと僕にも……まぁ、どうでもいいけど………。


っで、肝心のエルフの結界に関して……。

〝聖樹〟様から語られた。


桜花さんも言っていた通り、森に生えていた結界樹が伐採されたこと。

なんでも魔力が強く、魔道具、建築の良い材料になる為、各国から集中して伐採されたそうだ。


そして〝聖樹〟様の弱体化……それは簡単に寿命だった。

それらの要因でエルフの村の結界が弱まったそうだ。

そしてこのまま行くと〝聖樹〟様は枯れて、エルフの村の結界は完全に消えるそうだ。


……あぁ、村長さんが泡吹いて失神した………。


まぁ、魔獣が跋扈する村なんて……危険以外の何ものでもないだろう。

とは言え、寿命なら……どうすることもできない。

〝聖樹〟様自身が納得している。


それは何か手を考えないといけないんだろうな〜っと、僕は他人事………まぁ、他人事なんだけど。

そっと空を見上げながら考える。


すると、服の首元が引っ張られ……桜花さんのお膝の上へ。

僕の顔を覗いてくる桜花さん。


うん……可愛い。

っで、な……なんでしょう?



「〝植林〟じゃ。新しい〝聖樹〟を召喚すればいいのじゃ」



あぁ……なるほど……。

とりあえず……試しにやってみるか。



「スキル〝植林〟!!」



僕の両手の中に一株の木が召喚される。


……。

………。

…………なんか薄ら輝いてる………。


きっと……この株は間違いなく〝聖樹〟なんだろう。


あ………ルーディアを含め、他のエルフ達が泡吹いて失神した。



《備考》

旅生活 41日目(オアシス生活179日目)

※追放から197日

・『常夜の森』派遣隊

   ▶︎ユーラ

   ▶︎桜花さん

   ▶︎ルーディアさん

   ▶︎ミミリー商隊 12人


・『忘れられたオアシス』住人

   ▶︎フクロウ族 9人


・植林の内訳

  合計植林 1115本(1115/1280)

  【派遣隊】合計334本

   ▶︎桜     1本 ▶︎梨   33本

   ▶︎桃     33本 ▶︎山椒   33本

   ▶︎茶の木   33本 ▶︎柚子   33本

   ▶︎ナツメグ  33本

   ▶︎オリーブ  33本

   ▶︎シナモン  32本

   ▶︎ハナミズキ 70本


  【常夜の森】1本

   ▶︎聖樹 1本


  【忘れられたオアシス】合計780本

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