第2話
しばらく待ちぼうけで伏せっていると、話は済んだようで、主が何やら話しながら前足を私の頭にのせてなで回した。主はとても器用に前足を使うが、この前足の使い方は温かく心地よく、もっとやれば良いと思う。
また主が歩き出そうとするので、後ろを付いていくと、例の『さかな』が走って追いかけてきた。主は振り返ってあーだとかうーだとか唸っていたが、もう一度『さかな』のナワバリまで戻ると、そこを前足で示して「お座り」と私に命じた。
私は小さく吠えてそこに座った。主はまたあーだとかうーだとか唸っていたが、やがて思いついたように「待て」と命じた。その意味なら知っていた。何を待つのかは分からないが、待たねばなるまい。主の命には、おとなしく従うのが良い犬である。
主は満足したように笑うと、またすぐに悲しい匂いになって、今度はちゃんと悲しい顔をして、今一度私の頭をなで回した。ひとつふたつ、更に良く分からないことを私に命じると、主はまた歩いて行ってしまった。主は振り返らなかった。私はどうすれば良いのかと思ったが、主が『待て』と命じたのでおとなしく待つ以外になかった。
『さかな』が主と同じように私の頭に触れようとしたが、威嚇してやった。そこに触れて良いのは、主だけである。私の威嚇に『さかな』は前足を引っ込めて、くるりとナワバリの奥に入っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます