第121話 また打ち合わせ
三名様には風呂でくつろぎつつ、そちらの話をしていただく流れになった。
「すぐにも出立したい雰囲気になってきてるな」
葦原の話では、そうらしい。
「すぐに、か。それはそうだろうなあ」
叔父さんが腕組んで上見てる。
「まとめて振り返ってみましょう」
栞さん、頼むわ。
「あの三名様は、機械の竜の研究をしているブランカで活動するはずが、白い蝶の力で謎空間に飛ばされていた」
そう。
「そして、三名様のそれぞれのご兄妹たちは、ブランカに向かう途中、魔法生物の多いガランスで、白い蝶について手がかりがないか、トージン先生と話をしてる」
そう。
「でも、謎空間が危険なものを寄せそうになって良くないので、グレンさんは三名様を救出しちゃった」
「面目ござらん」
「それは必要だから仕方ないとして。三名様、ごはん食べたら元気になったし。健康状態的に良くなかったかも。その意味でも謎空間、危なかったね。
問題は、」
栞さん、少し考えて、
「あの三名様が救出された場所、森の中みたいだけど、具体的にはどこに出現したんですか? ブランカじゃないですよね?
目が覚めたらそこが都合良くブランカだった。
それはあんまりご都合主義だから避けたいですよね。一応今、現実世界にいるから、話の展開上、いいところに戻っていただかなきゃいけないんじゃないかと思うんですけど」
「それ」
叔父さんが疲れた顔をしている。
「そこですよね」
創作者同士の顔になっている。
「白い蝶の謎を、サヤたちと魔法生物の方面から引っ張ってたんだからなあ。わざわざブランカ行きの途中遠回りしてトージン先生のところに行っていろいろ調べてるのに、その間、兄貴たちはあっさりブランカに戻ってました、ってわけにいかないよなあ」
「グレンさん、結局あそこはどこなの?」
「え?」
え?
「グレンさん、第110話の最後で三名様を救出した人物だよね?」
「なんと?」
「ちょっと待て」
叔父さんが頭を抱えた。
「謎空間に漂う三名様に、旅の騎士であるグレン・グランハルトが声をかけ、なんとなく元の世界に不時着した場面で第110話は終わっている。そんな状況なのだが。
グレンさんはこれまで『四十路ですが』においてクギバネの件とかのように、要所要所で暗躍はしていたがこうして堂々と読者の前で名乗ってはいなかったはずなんだ。だが、今回名乗っている」
そうそう。
グレンさん、あの最後の場面はどこなの?
すると思いがけない答えが返ってきた。
「……拙者、登場人物でござるか?」
「何を今さら」
「あ、どうぞ」
何かを察した栞さんが、スマホの画面に第110話を開く。
「そうでござった。拙者、……いつものように暗躍していたつもりだったのでござるが……よく考えたら、読者諸氏の前に出てしまっているでござるな?」
いやいやいやいやいや、なんだそりゃ?
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