第100話 「ギンイロアカメドリ」
その鳥がギンイロアカメドリだということは、俺にも一目でわかった。
「ほんとうに見たまんまの名前だったんだ……」
そして、でかい。
俺と同じくらいの背丈なのだが。
「………!」
さらに、怪鳥音と思われたのはこの鳥の鳴き声にほかならず、そばで耳を澄ましてみると、
「はァ~が~ゼ~」
……ハカセ……博士?
「博士を呼んでいるのか?」
俺が言うと、ギンイロアカメドリはうなずいた。
言葉がわかるのか!
「おうおう、久しぶりに来てくれたか」
博士は俺と違って怪鳥音、とは思わずこの鳥が来たのだとすぐにわかったのだろう。水の桶と、エサらしい木の実をこれまた桶いっぱいに持ってきた。
「きゃ~く~きゃ~く~」
「あ、ああ、こちらは〈救い手〉殿だ。我々の強い味方だよ」
「よ~ろ~じ~ぐ~~」
「よろしくな」
俺も一応挨拶をした。
「が~ら~ん~ず~~」
「ガランス?
ちょうどガランスと、お前の噂をしていたところだが、なにか?」
博士はさっき、ギンイロアカメドリの目を研究して機械の竜の目を、と話していたけれど。
〈研究〉ということは、鳥側にしてみれば解剖されたり犠牲もあっただろうことは想像に難くない。でもこの個体とは仲良しだな。
「なんと、〈救い手〉殿」
博士は頭に手をやって。
「ガランスに、気になる馬車が走っていった、と、この銀助は言うのだが」
名前が銀助ってどういうことだよ。
「気になる、って?」
「さあ。銀助は勘が働くんでね、ちょっと心にとめておこうと思うんだよ」
「はあ」
銀助はそれから散々食べて飲んで、また飛び去って行った。
「よく慣れるものなんですか、ギンイロアカメドリ」
「とんでもない! 銀助以外なら、我々は目をくり抜かれているよ」
「……獰猛なんですか」
「いや。この研究所がギンイロアカメドリの研究を始めたからね、恨みは買っているね」
やっぱりそうか。
「魔法生物ってことは、かしこいんでしょ。そこまでの恨みなんて」
「まあねえ」
「先生」
この騒ぎの間に、算数の問題を五ページも解いたロディに呼ばれた。
「よし、採点だな」
〈白の地〉に召喚されてから、誰かの勉強を見るなんて思ってもみなかったし、魔法生物のことなんか初めて聞いた。
これからも思いもかけないことが起こるんだろうな。
でも、ここの土地のあちこちで見られた、こうやって誰でも助け合おうとする気質そのものが、住人たちを守っているところがあるのだろう。
俺もそこになじみながら、できることをやっていきたいと思っている。
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