それで。

「毎朝、かように旨い朝餉を馳走になり、ありがたいでござる」

「そんな大層なことでもないよ……」


 グレンさんと叔父さんのやり取りを見ながら俺は、そういや葦原から連絡まだないな、などと考えていた。


「今日も葦原くん、来るよな?

 昼、何がいいかなあ」

「なかなかの健啖家でごさいますからなあ」


 朝の段階で俺たちは、このように平和だったのだ。


「あれ」


 誰か玄関のチャイムを鳴らした。


「梨穂子さん、おはようございます」


 俺が出てみたら、走ってきたのか息を切らした梨穂子さんがいたのだが……


 あ。違う。指輪が光ってるし、巫女さんの方だ。


「……おはよう……こちらは朝なのね? 早くからごめんなさい」


 まさか。


 表を見ると、濃い紫の霧。……は、まだない。


 葦原より早く来るとはどういうことなの〈白の巫女〉さん?

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