オマエノセイウチ

@noberu

第1話 お前のせいだ

「このぬいぐるみなんか気になる」


社会人3年目の由美は小洒落た雑貨屋に置いてあったセイウチのぬいぐるみの魅力に引き込まれた。


彼女はその魅力に抗うことが出来ず、気づいたら買ってしまっていた。


そのセイウチの首に付いているタグに説明文が書いてあった。


このセイウチはオマエノセイウチと言います。例えば、「××になったのは○○さんのせいだ」とこのセイウチに言うと、本当に××は○○さんの責任になります。


この文章を読んだ由美は、半信半疑で一つ試してみることにした。


さっきのニュースで、放火殺人事件の容疑者の竹田太一が全く容疑を認めようとせず、証拠不十分で罪を逃れようとしてると報道されていたことを思い出した。


由美はセイウチに向かって「放火殺人事件が起きたのは竹田太一のせいだ!」と言った。


翌朝、由美はテレビをつけると例の竹田太一が容疑を認めたというニュースが流れていた。


「これは凄い」とセイウチの方を見た。


しかし、セイウチは特に変わった様子はなかった。


こうして、由美は時々世の為にセイウチの力を使うのと同時に自分の保身の為にも使いはじめていた。


例えば、仕事で自分が発注し忘れたものがあれば先輩のせいにするようにセイウチに頼んだ。


更に由美のお願いはエスカレートし、自分のせいで起きた問題を周りの他人のせいにセイウチの力で変換していった。

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