おばちゃんは、異世界に来た

まるまる

第1話 異世界なの?

「うーん!今何時?仕事行かなきゃ。えっ!!ここどこ?えっ?えーー?」目覚めるとそこはログハウス風の古い家で、見覚えのない所だった。

「スマホ、スマホ、えーっとカバンは...

もー、どこ行ったの?

私どうしたの?

覚えてないんだけど」

多恵は、知らない場所で目覚めて、パニックになっていた。家の外に出てみると森の中だと言う事に気がついた。多恵は更に混乱し、誘拐?強盗?色んな考えが頭を駆け巡った。

「スマホも無いし、とにかく逃げた方が良いんだよね」そう言いながら多恵は、ログハウスをあとにするが、舗装された道はなく直ぐに躓いた。「あーもう、転んじゃったよぉ、スマホさえあれば亜希ちゃんに連絡出来るのに、こんな山奥じゃ電話も無いよ〜。とにかく、山を抜けなきゃ」

多恵は、また歩き出した。合っているか分からないが、道が続く方向へ歩いた。1時間程歩くと川の音がした。「そういえば喉渇いたな」音が聞こえる方へ行くと綺麗な川に辿り着いた。

「綺麗だし大丈夫だよね」多恵は、川の澄んだ水をゴクゴク飲んだ。「あー美味しい、少し休憩しよう」川の辺りに座り休憩する事にした。

暫くすると、ガサガサっと音がしたが多恵は、片耳が聞こえず気が付かなかった。

多恵が「さぁ、行こう。よいしょ!」と立ち上がり振り返るとそこにはカラフルなスライムが1匹いた。「えーー」多恵は、驚き腰を抜かした。「嘘でしょ?どうすればいいの?」慌てる多恵に、スライムは飛び跳ね笑っている。

「えっ?スライムって笑うの?」と多恵がつっこむと、「笑うよ」とスライムが答え、しゅるるるる〜っと人間の姿に変身した。

多恵は、驚き動かなかった。スライムは、「おばちゃん面白いね、こんなところに1人でいると危ないよ。何しに来たのさ」と話しかけて来た。多恵は、驚いていたが人間の姿になったので少し安心し、「ここがどこだか分からない。気がついたら荷物も無いし、スマホも無いしこんな山奥で知らないうちに連れてこられたみたいなんだけど、どうしていいか分からないし、とにかく山は抜けないと連絡も出来ないし、歩いたら道がボコボコして転ぶし、ちょっと歩いたら疲れちゃったし、喉が乾いてやっとここまで辿り着いたら、スライムは現れるし」

と一気に話した。

「おばちゃんさ、どこから来たんだか分からないけど、ここら辺は危ないから早く街に帰った方が良いよ。じゃあね」

とスライムが立ち去ろうとすると、多恵はスライムにしがみつき「街まで連れてって」とお願いした。スライムは「嫌だよ〜、面倒臭い。ここいらは人間なんて殆ど来ないし、面白いからちょっと見てただけだよ」と多恵を引き剥がそうとしたが、多恵は「これも何かのご縁でしょお願いっ」と言いスライムを離さなかった。

「もう、仕方ないなぁついて来て」とスライムは、意外とあっさり案内してくれる様子だった。「ありがとう。私、多恵、三好多恵って言うの。おばちゃんだけどさぁ、あまりおばちゃんおばちゃん言われるのもね〜。あっ、あなたは?名前?」と多恵が聞くと「おばちゃんさぁ、俺のこと怖くないわけ?一応、魔物なんだけど」とスライムが言い返すと「他に頼る人も居ないし、驚きはしたけど、あなた優しいじゃない?街まで連れて行ってくれるんでしょ?で、名前は?」多恵は、異世界に来たのかも?という期待にウキウキしていた。

「おばちゃん変わってるな。俺、マキト」スライムは、自分を恐れない人間に興味を持った。

「マキト君ね、宜しく。色んなこと聞いても良い?」多恵も、この世界に興味深々で、早く話を聞きたくて仕方がなかった。

マキトは、「やだよー、面倒臭い街まで連れてくだけって言ったでしょ〜」と素っ気なく言ったが、多恵はそんな事お構いなしに喋り続けた。

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