#11 ダンス・ウィズ・イービルドラゴン
「ガォォォォォォォォォォォオン‼︎‼︎」
燃え盛るような夕陽を背負い、けたたましく竜が咆哮する。
その肉食性爬虫類めいた琥珀色の瞳が、ギロリとこちらを睨み据えた。
「おいおい、なんだよあれは?」
「名前が文字化けしてる……。あれってバグキャラなの?」
「レベル99って……マジ?」
「おかしい、こんなの攻略サイトに載ってないぞ?」
「撃っちまおうぜ!」
「しゃあねぇ、やるか!」
一人のプレイヤーの声を皮切りに、その場にいた全員が目の前の巨竜目掛けて銃を乱射し始めた。
ドゥンドゥン‼︎ドガガガガガガ‼︎‼︎
薄暗闇の中を銃火が閃き、数百、数千の銃弾の嵐が巨竜の躰目掛け叩き込まれる!
むせかえるような硝煙の匂いが辺りを満たし、凄まじい銃撃音が耳をつんざく!
皆、その場にうずくまるおれのことなど全く意に介さず、撃って撃って撃ちまくっている。
チュン!
いまだ尻餅をついたままのおれの頭上を、一発の銃弾が掠めた。
おれはたまらず、地面にうつ伏せになって弾丸の嵐から身をかわす。
それが幸いしたのだろう。
怒りに満ちた巨竜は、うつ伏せになったおれには目も暮れず、躰をブルルと震わせると他のプレイヤー目掛けて飛びかかった!
「グルォォォォォォォォォォォォォォン‼︎」
竜が尻尾をしならせ、一直線に跳躍する。
まず最初に犠牲になったのは、群衆の先頭にいたネコ頭の男だった。
まるで大砲から放たれた砲弾のような速さで、大口を開けネコ頭へと喰らい付く。
巨竜の顎に噛みつかれ、ネコ頭の腰から下が竜の口内へと飲み込まれた。
「クソッ、離せ!」
ネコ頭は竜の顎から逃れるべく、竜の頭目掛けてマシンガンを乱射する。
しかし、銃弾は全て竜の硬く黒い鱗に弾かれてしまい、ダメージを与えることが出来ない!
竜は銃弾など意に解することなくネコ頭を咀嚼し、ゆっくりと口内へと呑み込んでいく。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ !!!!!!やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ !!!!!!!!!!!!!」
ネコ頭の断髪魔の悲鳴が響き渡り、その叫び声すら竜の胃袋へと飲み込まれていく。
_ニャンラトテップが死亡しました。
画面上に、ネコ頭の死亡ログが無慈悲に流れる。
竜は一度大きくゲップをすると、次の獲物へと狙いを定めた。
竜は腰を低く落とし、躰と地面が水平になるような姿勢で、次の獲物目掛け突進する。
「クソッ!撃て!撃ちまくれ‼︎」
尚も龍目掛けて銃弾を浴びせるプレイヤーたち。
しかし、銃弾は竜の鱗に当たって火花を散らすのみで、かすり傷一つ負わせることが出来ないのだ!
「ダメだ、逃げろ!」
一人のプレイヤーが銃を捨てて、逃げ出そうと身をひるがえした。
しかし、時すでに遅し。
すでに眼前まで迫った竜が大きく腕を振り下ろし、プレイヤーたちを薙ぎ払った‼︎
ザシュ!!!
たった一薙ぎで三人のプレイヤーの上半身が消滅!
切断面から01記号が血しぶきのように吹き出し、辺り一面を赤く染め上げる。
_メメント森が死亡しました。
_コードトーカーが死亡しました。
_たっくんが死亡しました。
更に三人のプレイヤーがロストした。
しかし、暴竜の虐殺はまだ止まらない!
尻尾を振るい、プレイヤーたちを弾き飛ばす!
跳躍し、両の脚で踏み潰す!
爪を振るい、首を斬り飛ばす!
_レマットが死亡しました。
_うしくんⅡ世が死亡しました。
_しげちゃんが死亡しました。
_SAGA県民が死亡しました。
画面上に次々と流れるプレイヤーたちの死亡ログ。
戦場のプレイヤーたちがドンドン減っていく。
そして最後に残されたのはおれと夜兎さんの二人。
竜が次に狙いを定めたのは、おれではなく夜兎さんだった。
夜兎さんは狙撃銃をコッキングしながら、森の中へと逃げ込もうとしていた。
しかし、竜は驚くべき機敏さで夜闇さんの前へと回り込むと、その手で彼女を捕まえたのだった。
続く
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