#3 ウェルカム・トゥ・ジャンクジェットシティ

 視界が一瞬白く染まり、すぐに暗転する。




 気がつくとおれは、大きなプラットフォームのような薄暗い場所にいた。




 プラットフォームは側面のレールに沿って斜め上へと上昇し、どこかへおれを運んでいるようだ。




 公式サイトの情報によると、地下都市を追放されたプレイヤーは、一方通行のエレベーターに乗せられ、地上へと運ばれるらしい。




 そしてこのエレベーターは、はじまりの街「ジャンクジェットシティ」への直通便だということだ。




 耳に伝わるゴゥンゴゥンという騒音。




 サイドレールから飛び散るオレンジの火花。




 鼻腔をくすぐる鉄とグリスの匂い。




 プラットフォームの四方に設置された非常灯が回転し、オレンジ色の光が規則的におれを照らし出す。




 ゴーグル越しに伝わるそれらの感覚は、みなリアルかつ扇情的で、これから待つ未知の冒険への期待感を否が応にも高めてくれる。




 周囲を見渡すと、おれ以外にも何人かの人影が見える。


たぶん、おれより先にログインした新人プレイヤーだろう。






_ニャンラトテップがLOGINしました_




_レマットがLOGINしました_




_コードトーカーがLOGINしました_




_TA☆KE☆SHI☆がLOGINしました_




_夜兎浦がLOGINしました_






 画面左上に表示されるLOGIN表記の羅列。


広いプラットフォームが、ログインしてきたプレイヤーで、段々と埋め尽くされていく。




 タキシードを着たネコ頭の男、西部劇風の衣装をまとったカウガール、ライフルを背負った軍人めいた男、ガスマスクを被ったスキンヘッドのチンピラ、夜戦服を着たうさ耳の美少女…etc、 etc……。




 多種多様なコスチュームに身を包んだ胡乱な集団。


皆が皆、とても個性的な格好をしている。


あまりにも個性的すぎて、おれの格好が没個性的に見えるほどだ。




 やがてガゴォンという音と共に、振動を立ててプラットフォームが止まる。


どうやらここが終着点のようだ。




 目の前にあるのは重厚な鋼鉄製の扉。


プシューという音と共に圧縮蒸気が噴出し、扉のロックが解除されていく。




 オレンジ色の火花を散らしながら、扉がゆっくり上下に開いていく。


少しずつ開いていく扉の隙間から、眩い光が差し込み、暗闇に慣れたおれの目を苛む。




 やがて扉が全て開き、その奥に隠されたものが明るみになった。


しばらくして、光に慣れたおれの目の前には、壮大で退廃的な景色が広がっていた。






 煌びやかなネオン看板_






 火花を散らし飛行するドローン_






 路地に打ち捨てられた廃ロボット_






 コンクリート壁に、蔦のように食い込む配管_






 街の中央に屹立する、呪術的装飾が施されたスペースシャトルの残骸_






 ここは地下都市を追放された市民が建設した、廃材と退廃の街。








 ようこそ!ジャンクジェットシティへ‼︎








___ここは、あなたの冒険のはじまりの街










 続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る