バレンタインデー特別企画 ②
申し訳ありません。いつの間にか日を跨いでしまいましたが、このまま最後まで行きますのでご安心下さい。
バレンタインデー特別企画第二弾になります。
まずは芽依編からどうぞ!
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2月12日
2日後にバレンタインデーを控え、緑川家のキッチンでは芽依が手作りチョコレートの試作を作っていた。
「よし、試作品完成!」
葵姉妹と違い、日頃から仕事で忙しい母親に代わって料理をしている芽依にとって、手作りチョコレート作りはそれほど苦戦する事なくスムーズに完成した。
「それじゃあ真央、悪いんだけど試食お願いね!」
と、リビングのソファに座わる幼馴染の石見真央の元へ完成した試作を持っていく。
テーブルに並ぶ試作の数々を見て真央はテンションを上げながら関心する。
「おおー流石芽依だね〜!トリュフチョコに生チョコ、それにガトーショコラや王道のハート型のチョコまで作っちゃうなんて随分と気合いが入っているねー!!」
「もちろんよ真央!なんてったって京さんに渡すチョコなのよ、このくらい当然よ!!寧ろ私の京さんへの愛の大きさのチョコを作りたいくらいだけど、後から冷静になって流石にその案はやめたわ」
「あはは……うん、ウチもそれはナイスチョイスだと思うよ。芽依ってたまに変な方向に入るからちょっと心配だったけど良かったよ」
「う、うん……ほら!そんな事より早く食べて感想を教えて真央!」
芽依はそう言ってガトーショコラを真央の口へと運ぶ。いわゆる“あーん”である。
芽依程の美少女がするあーんに真央は少し照れながらも一口だいに切り分けられたガトーショコラを食べる。
もぐもぐもぐ
「うーん美味しい!!凄いよ芽依!売ってるやつよりも美味しいかも!」
「本当真央?」
「うん!お世辞じゃなくて、本当に凄く美味しいよ芽依!」
「よかったぁ〜。それじゃあ今度はこっちのトリュフチョコを食べてみて」
「オッケー!いただきまーす!」
パク!
「美味しい!!このトリュフチョコも美味しいよ芽依!!」
と言って上機嫌でトリュフチョコをおかわりする真央に対して芽依は真剣な表情で
「ねぇ真央。ちなみにさっきのガトーショコラとどっちが美味しかった?」
と質問する。
「うーん、どっちかと言えばガトーショコラの方がウチは好きかなぁ……」
「やっぱりかぁ〜……ありがとう真央。それじゃあ他のもの試食してもらっていい?」
「オッケー!任せといて芽依!」
「うふふ。ありがとう真央!」
それから一時間後、全ての試食が終わり芽依は真央の感想と意見をもとに京へと送るチョコレートを決めた。
「決まったよ真央!!1番良かったこの生チョコにする事にしたわ!!」
「さんせーい!ウチも生チョコが1番美味しいと思ったから賛成!!」
「ありがとう真央。これで京さんへ送るチョコが決まったわ!正直、私一人だったらこんな早く決まらなかったと思うし」
「あはは、それじゃあウチは帰るね!」
「もう帰っちゃうの?」
「うん。チョコ食べ過ぎてお腹いっぱいで辛いから……」
「ごめんね真央。この借りは絶対に返すから」
「そう。それじゃあ楽しみにしてるね」
そう言って真央は帰っていった。
そして、真央を見送った芽依はキッチンへ戻ると片付けをしながら
「うふふふ、待ってて下さいね京さん。私のチョコで貴方のハートを射止めて見せますから。うふふふふふ」
一人しか居ない緑川家にしばらくの間、芽依の笑い声が響いていたのだった。
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〜梓編〜
2月13日 バレンタインデー前日
この日、黒羽梓は午前の講義が終了すると、急いで門へと向かう。目的は自分の思い人である先輩に会うためである。最初は昼食に誘ったのだが、偶然にもお互いに午後の講義が無かったのでそのまま出かける事になったのだ。梓的にはデートである。
「はぁ、はぁ、はぁ、やっとついたぁ。先輩もういるかなぁ?」
急いで来た為、荒い息遣いの梓は何度か深呼吸をしながら周りを見回すと、門の側にだらしない前髪とダサい眼鏡をした陰キャを発見した。
「えーと……あっ!いたいた、せんぱーい!」
梓はその陰キャに向かって手を振りながら小走りで向かう。
そう、この陰キャこそ梓の思い人である先輩事[木村 京]だ!!
「おお黒羽。そんなに慌てなくても大丈夫だぞ?ほら、汗をふきな」
と言って京はハンカチを梓へと渡す。
幾ら寒い2月と言っても、厚着で走って来た梓の額には汗が滲み出ていた。
梓はそのハンカチを受け取りながら
「ふふふ、ありがとうございます。先輩は優しいですね」
と、感謝の言葉を述べる。
だが京にとってこのくらいの事は当たり前であり、今はそんな事よりも
「いやいやこのくらい大した事ないぞ黒羽。それより早く行こうか、なんか周りの視線がいたい……」
自分の様な陰キャが梓の様な美少女と一緒にいると言う事でものすごく目立っていた。
その事に気づいた梓も気を遣って
「そうですね。それでは行きましょうか先輩!」
「悪いな黒羽」
そう言って2人は門を出て駅の方へと向かう。
駅の方へと歩いていると京が
「それで黒羽、どこで昼はどこにするか決めているのか?」
と質問する。
すると梓はドヤ顔で
「もちろんですよ先輩!!楽しみにしてて下さいね!」
「ふーん……まぁ黒羽の方から誘って来たわけだし任せるよ」
しばらく歩いていると、ようやく駅に到着した俺達は併設されている商業施設へと入ると、レストラン街にあるイタリアンレストランで昼食をとる事になった。
以前にも来たことのある店だったので、京はリラックスした様子で食事をとっていると梓が
「……ところで先輩は、明日が何の日か知っていますか?」
と聞いてきたので、京は少し考えてから答える。
「明日?……ああ、そう言えば明日バレンタインだったなぁ……それで??」
「もーう!先輩は相変わらず察しが悪いですね!」
「いやすまん。全然分かんねぇ〜?」
「はぁ、まぁ鈍感先輩に期待はしてませんでしたけど、なんだか悔しいです」
「どうゆうこと??」
と聞くと梓が
「今その答えを教えますね!」
そう言って可愛らしい笑みを浮かべながら
「お願いしまーす!!」
と、店員に向かって手を上げる。
「えっ??」
すると店の奥から店員が甘い匂いを漂わせた皿を持ってやって来た。
その皿には、ティラミスとプリンの様なものがフルーツと一緒に盛り付けられていた。
「お待たせ致しました。こちら当店スペシャルメニューの『チョコティラミスとホワイトチョコのパンナコッタ』で御座います。どうぞごゆっくりお召し上がり下さい」
店員はドルチェの説明をすると一礼して戻っていく。
京が驚いていると梓がにやけながら
「ふふーん。どうですか先輩?梓からのサプライズバレンタインは?びっくりしたでしょう!」
と、してやったりと言いたげな表情をしながら聞いてきた。
「ああ、流石に驚いたよ黒羽。それにしても、なんでバレンタイン前日なんだ?」
「だって先輩、どうせ他にも沢山の女性からチョコレートを貰うんでしょうから、早めに渡した方が印象に残るんじゃないかなぁと思いまして!」
と、無邪気な笑顔で答える梓に京は
「ありがとうな黒羽」
と、頭を撫でながら感謝の言葉を伝える。
すると梓は顔を赤く染めながら俯き
「う〜……これだから先輩は狡いんですよ」
と小声で呟いた後、京の顔を見ながら
「それじゃあ先輩、来月のホワイトデーは3倍返しじゃなくて10倍返しでお願いしますね!」
「なっ?!10倍……だと……」
「はい!10倍です!」
「……分かったよ黒羽。ホワイトデーは10倍にして返してやるよ!」
「本当ですか?!約束ですよ!」
「ああ、約束だ!」
こうして京はホワイトデーに梓へ10倍のお返しをする約束をしたのだった。
たがこの約束が後に大変な事態になる事を京はまだ知らない……
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次回はいよいよ日和編となります。
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