打ち上げ

お待たせ致しました!今日から再開していきますので、よろしくお願いします!


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突然だが、俺は今もの凄く困っている!!


無事に撮影が終わり、東子ちゃんが打ち上げを兼ねた食事でもしようと言い出した後、何故か満場一致で俺のマンションで打ち上げが行われることになったからだ!

そのせいで、今俺は4人分の料理を一人で作り続けている。まさに猫の手も借りたいくらい忙しい状況だが、乗り越えて見せる!じっちゃんの名にかけて!……なーんてね!


*******


俺がメインのローストビーフをオーブンに入れた時、ダイニングから催促する声が聞こえて来た。


「ねぇキム兄、まだ〜??」


と、ベタにナイフとフォークを持ちながら煽ってくる東子ちゃんに対して「手伝えよ!」と一瞬だけ言いかけたが、東子ちゃんが南ちゃんと同じで料理が下手なのを思い出した俺は、すぐに口を閉じて調理を再開した。


ちなみに、日和と柊さんはリビングで談笑中だ。どうやら日和の書いた歌詞が柊さんにドンピシャだったらしく、側から見ても分かるくらい機嫌が良かった。日和の方も、意外と柊さんと気が合うみたいで楽しそうだ。





完成した料理を俺はテーブルの上に並べて行く。すると、待ちくたびれた東子ちゃんが目を輝かせながら


「うわ〜!カプレーゼにエビマヨ、唐揚げにローストビーフ、カルボナーラにミートソーススパゲッティ!どれも美味しそうだねキム兄!」


と言って、出来立ての唐揚げをつまみ食いする。俺は東子ちゃんの頭に軽くチョップをしながら注意する。


「こら東子ちゃん!もう少しで出来るから待ってなさい!」


「はーい!」


「宜しい。もう少しで完成するから、リビングにいる柊さんと日和を呼んできてくれる」


「OK!」


と言って東子ちゃんはリビングへと向かう。

その間に俺は調理を終わらせ、飲み物を用意する。俺と日和と東子ちゃんはオレンジジュース、柊さんは炭酸水だ。


全員が椅子に座ったので俺は手を合わせる。それを見て、3人も手を合わせたので俺は


「それじゃあ、頂きます」


と言う。すると三人も


「「「頂きます!!」」」


と言って、打ち上げを兼ねた食事が始まった。




「うーん!美味しいぃぃ!!やっぱりキム兄の料理は最高だね!!」


東子ちゃんが頬に手を当てながら感想を述べる。すると日和も賛同して


「私もキョー兄の料理は毎日食べてますけど全然飽きませんし、寧ろ美味しすぎてお店の料理が物足りなく感じちゃう事もあるくらいですから!」


「いいなぁ〜木村さん。私もキム兄の料理を毎日食べたいなぁ〜」


と言いながら、東子ちゃんは何かを期待した目で俺を見つめてくる。


(東子ちゃんは一体何を期待しているのだろうか?)と疑問に思ったが、どうせ碌なことでは無いだろうと思った俺は一度ため息を吐くと


「はぁ……分かったよ東子ちゃん。事前に連絡してくれれば、東子ちゃんの分も作っておくよ。それに、俺が嫌だと言っても適当に理由を付けてご飯を食べに来るつもりだったでしょ!どうせ」


俺が呆れながら言うと、東子ちゃんは笑みを浮かべながら


「えへへ、バレてたか……」


と言って、小さく舌を出しながら話す。


「そりゃ、出会ってから一年以上経ってるし、東子ちゃんの事ならそれなりに分かってるつもりだよ!」


と言うと、東子ちゃんは顔を少し赤くしながら


「ありがとうキム兄」


と言って、俯いてしまった。

俺と東子ちゃんが話していると日和が


「私だけの特権だったのに……キョー兄のバカ……」


と、誰にも聞こえないくらいの小さな声で呟いた。


この時、日和は誰にも聞こえていないと思っていたようだが、残念ながら一人で黙々と料理を食べていた柊さんが聞いていて、その後リューと柊さんにより、「日和ちゃんを見守ろうの会」が結成されるのだった。



食事が始まり1時間程度が経った頃、俺は東子ちゃんに今後のスケジュールについて確認をする。


「それで東子ちゃん。今日撮った動画はいつ投稿するの?」


俺の質問に対して東子ちゃんは少し考えた後


「取り敢えず明日の朝かな。本当は今日にでも投稿したかったけど、流石にこの時間に投稿してもあんまり意味ないしね」


「よく分かってるじゃん東子ちゃん!」


俺が褒めると東子ちゃんはドヤ顔で


「まぁね!一応、色々と調べたから。それよりキム兄、次の撮影はどうしようか?」


と聞いてたので、日和を見ながら


「俺の事は気にしなくて良いよ。それより日和は何を歌いたい?」


俺が質問すると、日和は下を向きながら


「えーと、次はやっぱり真白三葉の[残響]にしようかなと思ってるんだけど、どうかなキョー兄?」


「え?!」


日和からの意外な返答に、俺は思わず固まってしまった。


つい先日、真白さんとは色々とあったので最近その名前には敏感に反応してしまうのだ。


日和はまだ気づいていない様だが、気づかれ時の事を考えると胃が痛くなってくる。


「なぁ日和。流石に[残響]は止めないか?あの曲は結構難しいぞ。それに日和と真白さんだと声の声質が違うし、俺は……『なんでそんな事言うのキョー兄?!』……?!」


俺がなんとしても[残響]を歌わせ無いように説得していると、いきなり日和が声を荒らげた。俺は恐る恐る日和の方を見ると、腕を組みながら不機嫌な表情をしていた。明らかに怒っている。


(やべー、やっちまったー!!俺の馬鹿!)


俺が後悔していると、日和が冷たいオーラを放ちながら抑揚の無い声で


「それで、なんでキョー兄はそんなに[残響]を歌って欲しく無いの?ねぇ、なんで??」


と、聞いて来た。

日和から発せられるオーラのせいで周囲が極寒に変わる中、俺は柊さんと東子ちゃんに目線を合わせ助けを求めるが、東子ちゃんはすぐに目を逸らし、柊さんに至っては「もう諦めろ」と言いたげな視線を送ってくる始末だ。


もう“ダメだ”と思っていた俺だが、神は俺を見捨てなかった!!


俺がどう答えるか迷っていると


ピンポーン!


と、インターホンが押されたのだ!


(神は俺を見捨てなかった!)


チャンスだと思った俺は、黄猿並みの速さで玄関へと行き、どうせリューだと思い、特に確認もしないでドアを開ける。


「はいはーい、今開けるよ!……って、えっ?!!」


だが、ドアの前にいたのはリューでは無く、日和と同じ学生服を着て、浅茶髪が特徴的な美少女。緑川さんがいたのだった。


緑川さんを確認した俺は心の中で叫ぶ


(ふざけんな神!!)と。

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