自分を変えてくれた人


はじめまして、私の名前は「緑川芽依」音羽大学附属高校に通う16歳です。


自分で言うのもアレですが、私はいわゆるリア充と呼ばれる部類の人間です。


なにせ、昔から私はかなり社交的で友達も多く、勉強も結構できて、その上それなりに整った容姿を持っています。

もちろん、男子からは凄く人気です!それに去年の文化祭で、昔習っていたダンスを披露するとさらに人気に火が付き、今では音羽4美姫の一人に選ばれ、「舞姫」と言うあだ名が付いてしまいました。


私が、恥ずかしいからやめて欲しいとお願いしても皆口を揃えて、


「これは音羽4美姫の宿命だから」


と言う理由で断られます。


本当にやめて欲しいです!

私はそんなあだ名を付けられて嬉しいなんて思った事なんて無いし、むしろ周りから腫れ物扱いをされたりする事が増えました。


そんな高校生活を過ごす中で、私が特に親しくしている人がいます。

その人は、私と同じ音羽4美姫の1人で「氷姫」と呼ばれている「葵東子」先輩です。


東子先輩はうちの高校の生徒会長であり、運動神経抜群で、さらに全国模試で一桁台を取るほど頭がいい、まさに才色兼備を兼ね揃えた完全無欠の先輩です!


でも、そんな東子先輩も去年までは今と全く別人のようだったと、知り合いの先輩から教えてもらいました。

なんでも、当時の先輩は今よりも目つきが冷たくて、言動に棘どころかハリネズミがいるくらい鋭く、関わろうとした人に対して冷めた態度を取り続け、まさに「氷姫」呼ばれるに相応しい女性だったそうです。


それを聞いた私は


嘘でしょ?!


と、教えてくれた先輩に言ってしまったが、その先輩の話では事実のようで、実際に東子先輩に関わろうとした人が何人も、トラウマを植え付けられたらしいです。


けど、そんな先輩がある日を境に態度が変わり、自分から周りとコミュニケーションを取り出したとの事です。


それはまるで御伽噺のように、冷たく凍った心を誰かが溶かしたかのようだったらしい。


私はその話を聞いて、憧れると同時に羨ましいと思った。


だって先輩は、自分を変える程の出会いがあったという事なんだから!


それに比べて私には、そんな運命的な出会いは起きていない。


私も、私の事を変えさせてくれる。そんな素敵な人と出会ってみたいと思うようになっていきました。


けれど、現実は残酷なものでそんな出会いは訪れませんでした。あの日までは・・・


それは、私が一人で駅前を歩いていた時のことです。

私が歩いていると、大学生くらいの男が4人、私に話しかけてきました。


いわゆるナンパってやつですね!


「ねぇねぇ、君一人?もしよかったら俺らとあそばない?」


私はいつものように、軽くあしらいました。


「すみませんが、これから予定があるのでお断りします」


するとリーダーらしき男が食い下がって来ました。


「まぁ、そんなこと言わずにさぁ!きっと楽しいよ!」


私はさっきよりも少しキツめの口調で


「お断りします!」


と言いながら、駅の方へと歩くと今度は、私の腕を掴んできた。


「な!何するんですか?離してください!」


「そんな事言わずにほら!こっちで遊ぼうぜゲヘヘ」


怖くなった私は、周りにいる人に助けを求めましたが、誰一人として私の方に目を合わせて来ませんでした。


私が絶望していた時、あの人は現れました!


「こらこら、年下相手にそれはダメでしょ」


突然現れたその人は、眼鏡をかけていて少し頼りなさそうなと言うよりも、明らかに陰キャなのにも関わらず私を掴んでいるリーダーの男の手を掴みながら睨んでいました。


すると、邪魔をされたリーダーの男は苛つきながら


「はあ?テメーなんのつもりだ!陰キャのくせに正義の味方気取りか?」


と言って、陰キャさんを脅します。

普通なら萎縮してしまうはずなのにも関わらず、逆に陰キャさんは涼しい顔をして


「はぁ、これだからモテない奴はダメなんだよ。しつこいと女性に嫌われるってママから教わらなかったのかな?あっ!それとも、よほど自分に自信が無いのかな?」


と煽りまくります。

するとリーダーの男は顔を真っ赤にして陰キャさんの胸ぐらを掴みながら


「テメー上等だよ!ちょっとこっち来いや!」


「はいはい、別に構わないけど服を引っ張らないでくれないですかねぇ、服が伸びちゃうじゃないですか」


そう言って、ナンパ男達と陰キャさんは人通りの少ない路地の方へと行ってしまった。


私は、ずっとその光景を見ているだけしか出来なかった。


そして、姿が見えなくなるとようやく私は我に返る。


「はっ!どうしよう、どうしよう・・・そうだ!とりあえず助けに行かないと!」


私は、少し経ってから路地に向かう。すると、4人の悲鳴が聞こえて来たので、私は急いで向かいました。


路地に入ると、そこには予想外な光景が広がっていた。


「いぎゃー!!」


「た、頼むやめてくれ!グヘ!」


「な、なんなんだよお前!や、やめ、うわーーー!」


「ひー!助けて!」


ナンパ男達が全員陰キャさんに倒されて、地面に寝ていたのです!


そんな光景を見て私は不意に


「す、凄い!」


と言ってしまいました。


すると、陰キャさんが私の方を見てから


「あれ?ついて来ちゃったのかい?今回は大丈夫だけど、今度からは危ないからやめときなよ。君は可愛いいんだから、もっと注意してね」


笑いながらそう言って、私の頭を何度か軽く叩いて来ました。


普通ならそんな事をされれば怒ったりするものですが、不覚にも私は照れてしまいました。


「!!」


私は不意に胸に手を当てると、普段よりも心臓がドキドキしていました。


私が呆けていると、陰キャさんが私に話しかけて来ました。


「なんか耳が凄く赤いけど大丈夫?」


指摘されて恥ずかしくなった私は、精一杯誤魔化しました。


「だ、大丈夫です!!多分走ったからだと思いますので、ご心配無く」



と表面上はそう言ってますが、誰も聞いてないので正直に言います。


ごめんなさい嘘です。


本当は、可愛いって言われてものすごく照れています。

わかりませんが、おそらく顔も真っ赤になっていると思います。


不味いです。顔を合わせられません!


コミュ力が高いはずの私がです!

(コミュ力は関係ないと思いますが)


私が黙っていると、陰キャさんが


「それじゃあ俺はここで失礼するよ。もしかしたらコイツらがまた現れるかも知れないから気をつけてね」


そう言って陰キャさんは大通りの方へと向かっていきます。

私が、お礼を言おうとすると、陰キャさんは何も言わずただ首を横に振って、行ってしまいました。


「かっこいい人だったなぁ・・・」


私はそう呟いてその場を後にしました。


その夜


私は家に帰ると自分の部屋でずっと考え事をしていました。

そのせいで、食事中やお風呂、勉強の時も心ここに在らずで、家族から心配されてしまいました。


それもこれも、今日私を助けてくれたあの陰キャさんのせいです!


いや、あの陰キャさんを責めるのは筋違いなのは分かってるんですが、それでも言わせて下さい。


カッコ良すぎでしょ陰キャさん!!


たとえ陰キャだったとしても、あんなの誰だって惚れますよ普通!!


そう、だから私がこんな風になっているのは全部あの陰キャさんのせいです!


それに、結局陰キャさんにお礼を言えなかったのも原因の一つです!


「はぁ、本当にどうしてしまったのでしょうか私・・・」


考えるのが疲れた私は、そのまま眠りについた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


京は芽依ちゃんを助けた後、駅前にあるカフェで紅茶とパンケーキを食べていました。

そして帰りがけにナンパ男たちに会い、再度喧嘩を吹っかけられましたのでもう一度ボコボコにして、知り合いの刑事に引き渡しました。

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