第四章 2つのデート過去の咎
望まぬ邂逅
俺が話終わると、なんとも言えない静寂が襲う。
静まり返る中、俺は
「まぁ、そんな感じかな。どう2人とも幻滅した?」
俺が聞くと真っ先に東子ちゃんが首を横に振る
「そんな訳無い!全然幻滅なんかしないよキム兄!むしろ頑張ったねって言ってあげたいと思った!
それよりも私は、キム兄の事を知らなさすぎだって改めて自覚したぐらいだよ」
東子ちゃんが言い終わると、今度は南ちゃんが
「そうね、東子の言う通り私たちは木村君の事を本当に知らなかったのね。それなのにどっちが先に落とすか勝負なんて本当に、馬鹿みたいね」
「???どうゆう事?」
「ああ、木村君は気にしなくて良いのよ。それよりさっきの女の子は、話に出でいた天音楓さんで間違い無いのかしら?」
「多分、そうだと思います。面影があったし、それに向うも俺の名前を言ってましたから」
「そう、因みに木村君はその子に会いたいとは思っているの?」
南ちゃんの問いに対して俺は
「いえ、それはあり得ません!俺にとって彼女は一生会ってはいけない存在だと思っていますから」
と言って否定すると、南ちゃんが
「それは君が決めた事なのよね?」
そう聞いてきた。
なんで南ちゃんがそんな事を聞いてきたのか分からなかったけど、あの日からずっと俺が思っている感情を伝える。
「ええ、でも彼女もきっとそれを望んでいるでしょう。あの時俺は彼女との約束を破ってしまった。そのせいで彼女は傷ついてしまったんです!俺には彼女に会う資格はありません」
話していくうちに視界がぼやけて来て、目頭が熱くなって泣きそうになる。俺は必死に抑えようとしたけど、ついには涙が溢れて止まらなくなる。
泣いている俺を見ながら南ちゃんが
「なら木村君。直接彼女に聞いてみようか?」
と意味のわからない事を言ってきた。
いや、意味は分かっているのだが、俺は考えたくなかった。
「な、何を言ってるの南ちゃん?」
俺が動揺ていると、南ちゃんがドアを開ける。
カチャ!
すると、そこには大粒の涙を流しながらこちらを見ている幼馴染の女の子、天音楓ちゃんが立っていた。
「な、なんで、ここに?」
俺は驚きながら楓ちゃんに理由を聞く。
「キョー君が倒れた時、そちらのお二人にお願いしてわたしも一緒について来たの」
そう言って楓ちゃんは南ちゃん達を見る。
俺はすぐに南ちゃんの方を見て声を荒らげる
「どうゆう事ですか南ちゃん!?事と次第にによっては俺は貴女を許しませんよ!」
俺は南ちゃんを睨みながら聞く。
すると慌てて楓ちゃんが
「ち、違うのキョー君!私がキョー君と話したいってお願いしたの!だから葵さんを責めないであげて」
「なんで楓ちゃんが南ちゃんの事を知ってるの?」
俺は楓ちゃんの方を見ながら聞いた。
すると今度は南ちゃんが
「木村君が起きるまでの間、私と東子はそちらの天音さんから大体の事を聞いていたんだよ」
南ちゃんは平然と話す。そんな南ちゃんを見て俺は
「成程ね、みんなでひと芝居打ったわけか。それなら何故、俺に過去を語らせたんですか?」
少し言葉に怒気を含みながら聞く
俺の声を聞いて、東子ちゃんや楓ちゃんは少し怯えた顔をしているのに対して、南ちゃんはずっと平然とした態度で
「そんなの、君の事もちゃんと知っとくべきだと思ったからだよ!」
と、俺に言ってくる。それを聞いて俺はようやく理解した。
南ちゃん達は、全てを知った上で俺にあの忌まわしき過去を話させたんだと。
そして俺は南ちゃんに対して
「そうですか、流石は南ちゃんですね。本当に天才的ですよ貴女は」
呆れながら精一杯の皮肉を言うと、南ちゃんは少し笑いながら
「私のことを褒めてくれるのは嬉しいが、まずはこっちが先じゃないか?」
と南ちゃんは楓ちゃんの方を見ながら話す。
俺も出来るだけ目を合わせないようにして、楓ちゃんと話し始める。
「そうですね。それで楓ちゃん、いや天音さんはどうして俺に会いに?俺の記憶が正しければもう2度と会いたく無い、消えてと言われたと思うのですが?」
俺は嫌味を込めて楓ちゃん、いや天音さんに言うと、天音さんは
「そう、だね。たしかにあの時、私はキョー君に酷い言葉を言ってしまったわ。でもあれから私も後悔しているの!なんであの時あんな言葉を言ってしまったんだろうって!」
俺の質問に対して、天音さんは酷く後悔したような表情で話し始めた。
俺はその表情を見て、なんだがやるせない気持ちになりながら話す。
「別に俺が天音さんにしたことに比べれば大した事じゃ無いですよ」
(やめてくれ)
天音さんの声を聞くと、俺の中で何かが溢れてきて、俺はそれを必死に抑えこんだ。
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本日は12時にもう一話投稿しますので、どうぞよろしくお願いします
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