誰が書いたか当ててください

如月芳美

赤ずきん(締切10/6)

赤ずきん 1

 今日は可愛い孫娘が来てくれる日だよ。嬉しいじゃないか、あたしに会いに危険な森を抜けて来てくれるんだ。パイでも焼いてあげたいところだけど、物忘れが酷くててねえ。

 おや? もう来たのかい、随分早いねぇ。


「おばあさんに早く会いたくて」


 そうかいそうかい、何も出せなくて悪いね。


「大丈夫よ。それよりおばあさん、いつもと目の輝きが違うわね」


 そりゃそうさ、可愛いお前を見たくて白内障の手術をしたんだよ。


「耳も大きくなった気がする」


 そりゃそうさ、可愛いお前の声を聞くために補聴器を埋め込んだのさ。


「お口も大きくなったわね」


 そりゃそうさ、可愛いお前とたくさんお喋りしたいからね。


「それにずいぶん立派な上腕二頭筋」


 そりゃそうさ、もうすぐ来る可愛い孫娘をお前から守らなきゃならないからね。


 あたしゃベッドの上に飛び起きて上腕で首を固め、赤い頭巾を被ったオオカミに選ばせてやったのさ。お腹に石を詰めて井戸に放り込まれるのと、仲間に二度と来ないように言うのとどっちがいいかってね。


 憐れなオオカミが逃げ帰ってすぐに孫娘がやってきたよ。


「おばあさん、そこで慌てて走って行くオオカミに会ったよ」


 そうかいそうかい、オオカミも忙しいんだねぇ。

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