メジャーな理由

バブみ道日丿宮組

お題:メジャーな味 制限時間:15分

メジャーな理由

 彼女の作る料理は、特に色がなかった。

 無難の味といえばいいのだろうが、ほんとうに大差がなかった。

 美味しくないわけじゃないし、毎日作ってくれることには感謝してる。

 ボクだって恋人とイチャイチャする時間は大事にしたい。

 だからこそ、

「……カレーが食べたいな」

 しょうもない言葉がもれた。

「お弁当にカレーは難しいと思うよ」

 彼女は頭を傾げた。

 当然の回答だ。ボクでも同じことをいうだろうね。

「休みの日とかに作りに来てくれたりしない?」

 随分と図々しい意見がでたものだ。それを出してるのが自分なのかと思うと、おいおいと思う。

「おばさんの許可がもらえたら、いいよ」

「ほんと?」

「うん」

 満面の笑み。素晴らしいね。写真に残せないのが残念だ。毎日作ってくれるお弁当も撮っておきたいのに、うちの学校はスマホは禁止。

 いや……禁止されてるなら、いっそのことカメラを持ち込んでみようか。

「どうしたの?」

「ん。なんでもない! ボクの彼女さんには頭が上がらないなぁって」

「そうかな」

 若干の赤みを頬に忍び寄せながら、

「今日のお弁当どうかな?」

 感想を問う。

「美味しいよ。自分じゃこんなの作れない」

 感想は決まったセリフだった。毎度同じことを聞かれて答えてるのだが、不審に思われてないか恐怖がある。

「お弁当のほとんどはお店で売ってるものなんだ」

「へぇ……えっ?」

「お店っていっても、コンビニね。スーパーじゃないよ?」

 とんでもない爆弾発言が聞こえた気がした。

 お店で売ってる? お弁当? 彼女のお弁当はコンビニ?

「でも、タコさんウインナーなんて売ってないよね?」

 疑問に疑問が重なった。

 目の前にあるものが信じられなくなりそうだった。

「それは私が加工したからそうなの」

「じゃぁお母さんに許可とってカレーを作るって話は?」

「もちろん、ルーを使ったインスタントだよ」

 何かが崩れ落ちていきそうだった。

 で、でも……それでも作ってきてくれることに変わりない。

 ボクはこれっぽちもお金を出してないのに、彼女は毎度購入してくれてるのだ。そこに愛がなくてなんなのだというのだ。

「台所は今ね。お母さんに禁止されてるんだ。実験しちゃ駄目だって。お手伝いはさせてもらえてるから、技術力はあがってると思うんだけどね」

「へ、へぇ……」

 そうなのか。

 じゃぁ、いつからそうなってたのか? 記憶に一つも残ってない。そりゃ彼女と付き合う前はどうだったのか知るよしもないのだから当たり前だ。

「今度お母さんに許可もらったら、ちゃんと作るね」

「う、うん。期待してるね?」

 本当に期待できるのだろうか。禁止されてるということはそれなりの理由があるはずだ。

 ボクは今日、知らなくてもいいことを知ってしまったような気がした。

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メジャーな理由 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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