猫の性別と、性格

島尾

猫についての考察

 私はピアノ教室に通っている。長いこと通っていて、先生の一番弟子だ。


 レッスンが終わると、先生が飼っている猫三匹と戯れる。これを自分の楽しみとしている。


 猫の一つは、黒猫でオス猫。「クー」という名前で、私は「クー」と呼んでいる。この猫は甘えん坊の最上級で、一旦撫でるとゴロゴロ鳴る喉の音が止まらない。しかも嬉しさが極まると、カミカミと甘噛みをする。


 猫のもう一つは、トラ猫でオス猫。「こたろう」という名前で、私は「こたろう君」と呼んでいる。この猫はクーちゃんに劣るものの甘えん坊で、一旦撫でるとゴロゴロ鳴く時間は長い。



 さて、続いてはメス猫である。


 猫のさらに一つは、サバトラ猫でメス猫。「エコ」という名前で、私は「エコさん」と呼んでいる。はじけそうなほど太っていて、むちむちしている。触り心地は段違いに素晴らしい。極めてにゃあにゃあ鳴く回数が多く、おそらく多量の要求をしている(すなわち不満を抱えている、ということだろうか)。この猫は、甘えない。素っ気ないとは言えないが、撫でてほしいという意思は無い。


 猫は三匹と書いた。これで終わりである。


 しかし先生のレッスン室は、先生のご両親の家の中にある。すぐ隣には先生ご自身の家がある。


 先生も、ご自身で猫を飼っている。よってこの猫についても紹介せねばなるまい。


 名前は「ハナ」。私は「ハナちゃん」と呼んでいる。ハナちゃんは大人になってから人の家に来たため、前述の三匹とは様子が異なる。端的に言うと、戦闘態勢に入りやすいのだ。撫でると「シャー」「タローン」などと、一般の鳴き方をしない。これは他人である私の前での態度なのかもしれないが、例の三匹とは明らかな違いである。


 先生は言う。


「オスよりもメスのほうが性格がどっしりしている」


 そこで、私は問うた。


「去勢手術はしていますか」「うん、してる」



 

 オスよりもメスのほうが性格的に安定し、自立する力があるのは、人間を含む多くの生物に当てはまる気がする。メスは子を守るため、自立する義務があるためだ。熊を例にとるならば、メスは子に対するオスの襲撃にさえ備えなければならない。他にも、例を挙げれば次から次へと出てくるのではないだろうか。


 ただ、去勢をしているか否かという問題のほうが大きいのではないかと思えてならない。それは特に、人間に当てはめた場合に顕著に想像される。

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猫の性別と、性格 島尾 @shimaoshimao

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