四
それから、しばらくのことは覚えていない。
ただ、「目覚め」と同時に王子が歩み寄り、
「わたしは、先代の闇の王の息子。闇より生まれし王の子であります。
人は、わたしをキャムロルと呼びます。齢二十七。姫より十三上にございます。
どうぞ我ら闇の者にお力添えを」
王子は一礼すると、後ろを指さした。
王子の後ろに、まるで王子の影のように付き従う男が四人。藍色の衣を
ひとりはとても若い…… ように、見える。
「こちらに控えておりますのは、闇の魔道を
藍色の衣を纏った魔導師達は、恭しく頭を垂れたままだ。決して、
「ソナタ、名は。何と申す」
わたしの口からこぼれた言葉は、それだった。
わたしは、ただ、この人達、この魔導師達の名前を知りたかった、それだけで。ほんとに軽い気持ちで訊いてみた、そのはずだった。なのに……
これは、わたしじゃない。
でも、認めたくなくても、今のは、わたし。わたしの声。わたしの口。わたしの言葉。
そんな困惑しているわたしを見透かしてか、一番年輩の感じがする魔導師は答えた。
「まだ目覚めが完全ではありませんな、姫。不完全な目覚めは苦しいもの。早く姫に身体をお譲りなされ、ヨウマウチ ユリ殿」
わたしは、はっとした。
ここ――… といっても、
声になった。音になった。
年輩の魔導師は、にやりと笑う。
またも、わたしの心を見透かしたかのように。
わたしは、驚きと恐怖が入り混じって。何も、声に、言葉に。唇から何かを紡ぎ出すことが、出来なかった。
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