闇より出でし光の影

結音(Yuine)

 零


「我が意のままに――」

 重みのある声が暗闇に響く。

 そこに一つの灯。その者の手中より放たれる。

 その者のまとう紫の衣が風に舞う。

「ここに、影を治めて、光を奪う」

 灯は割れ、四方八方に飛ぶ。

 無数の欠片かけらは、この世で唯一の灯となった。

 残された灯。

 その者は、それに気付かなかった。

 口の端に満足そうな笑みを残し、去っていく……

 その姿は、今にも消えてしまうのではないかと思われる程、もろいものだった。しかし、この笑みが、その者が紫の衣を纏って以来、初めてのものであるということを、知る者はいなかった。

 世界は、時を刻み始める。


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