わたらない送電線網

@Fushikian

大鉄塔の下で

 大河が流れる地帯に暮らす人々がいた。それぞれイーストタウン、ミドルタウン、ウエストタウンと三つの地域に分かれ、ウエストタウンだけが他の二つの町と大河に隔てられている。都会のイーストタウンは最も人口が多く、消費活動も盛んである。イーストタウンは発電所を擁していた。ここでつくられた電力が、ミドルタウン、ウエストタウンへと大鉄塔による送電線網によって運ばれていた。ミドルタウンには電力中継基地があり、ウエストタウンへの電力は必ずミドルタウンを経由しなくてはならない。

 人口規模が大河地帯最大のイーストタウンは電力消費も甚だしい。枯渇するとミドルタウンへ電力の返還を求めてきた。ミドルタウンの電力中継基地には電力貯蔵機能もあった。そこからウエストタウンへ送るはずだった電力をイーストタウンに戻すのである。動力源の町からの要請にミドルタウンの長はいつも苦笑いで応えた。

 ウエストタウンは風の町である。牧畜と農業で生計を立てる人々が大半である。風は大河からの風なのだが、同じく川岸の町であるミドルタウンには吹かない。風下の町と二つの町の民衆から揶揄されていた。停電が起きるとウエストタウンでは辻々に松明が焚かれる。それが頻繁に起きる。

 「風だ!わが町には風があるではないか!」

 ウエストタウンの長は停電の夜に叫んだ。翌日町の主だった者を集めて会議が開かれた。

 「風力発電所だ。われらは風力発電所をつくろう。そして大鉄塔送電線網から独立しよう」

 ウエストタウンの人々は決意した。松明の明かりが灯りはじめた町で変化が起ころうとしている。そのころイーストタウンを見下ろす大鉄塔に一羽の鵜が止まっていた。間もなく日が沈もうとしている。黒々としたシルエットとなった鵜は一声高く鳴いた。

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