第4話

 ある日、何かで口論になった時に、カッとなった彼は私の頬を平手で叩いた。その時はすぐに謝ってくれた。手を上げてしまった事に、ショックを受けている様だった。

 しかし、それがタガを外すきっかけになったのだろう。それから彼は気に入らない事があると、事ある毎に手を上げる様になった。それは娘も例外では無かった。

 すっかり自尊心を失い、恐怖という鎖に絆された私は、ただただ彼が事故か何かで死んでくれる事を願うしかなかった。

 なぜこうなってしまったのだろう。何処の道を正せば今、娘との幸せを掴む事ができたのだろう。考えても答えは出なかった。

 そもそも、私の様な人間には幸せになる人生なんて、最初から用意されていなかったのだ。


 娘は2歳になり、部屋の中を歩き回る様になった。稚拙ながらも言葉も理解し、理由なく泣く事も減ってきたと思う。

 娘は保育園で遊び疲れたのか、帰ってくるなり過ぎに寝てしまった。たまたま休みの彼は、酒を飲みながらテレビを見ていた。まだ寝初めて30分も経っていないし、当分起きる事は無いだろう。

 酒の予備がない事に気が付いた私は、彼に声をかけてすぐそこのコンビニへ買いに向かった。

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