四話 金髪ロリエルフ
そして実技試験が始まった。
最初は広大な演習場に集まられ、筆記試験合格の祝いの言葉と実技試験の説明が為された。ただトーナメントの模擬戦闘に関しては、今日の実技試験が終わった後に話されるらしい。
なので、魔力測定とノルマ型の試験内容が詳しく話され、受験番号と魔法か武術かのどちらを専門にするかでグループ分けされた。
ただ。
『子鬼人ってこんなに奇異な目で見られるものなのか』
『そうみたいだね。冒険者たちはそうではなかったんだけど』
深緑のローブを身に着けているライゼを遠巻きに、驚いたような何ともいえない視線が集まっていた。
確かに、一般的な常識だと子鬼人という種族は人類種の中では弱い方である。人類には色々な種族がいて、種族によって才能の偏りがあったりする。
例えば、人族は繁殖能力が高く、あらゆる点で平均的な才能を持つ。
森人、つまりエルフは三百年程度の寿命と魔力を扱うのが長けている。
岩人、つまりドワーフは三百年程度の寿命と肉体的な強度がとても高い。
獣人、まぁ、猫人や犬人などといった感じに色々と分かれているが、あらゆる身体能力が高い。
小人は二百年程度の寿命と感知能力にとても長けている。
そして竜人は、四百年程度の寿命とあらゆる側面においての能力が秀でている。しかし、繁殖能力が極端に低い。
と、まぁ、子鬼人を除いたあらゆる種族は一応、何かしらの部分で長けたところを持っているのだが、子鬼人は分かりやすく言えば人族の下位互換である。
まぁ、人族と獣人族以外の種族には繁殖能力は勝っているし、ある部分だけ他種族よりも長けている部分はある。
だが、それでもこの世界の常識では子鬼人は最弱と言われてもいいくらいの種族なのである。社会的地位も同様だ。
ただし、上記では説明していない特殊な種族や獣人の中には子鬼人と同じような種族もいるため、最弱と断定することはできない。
と、言葉を連ねてはいたが、どっちにしろ子鬼人は人類の中ではあまりいい立場ではない。それに一応、ここに来ているのは子供たちはある程度のレベルがある子たちである。
なので、魔力を感じる術も多少なりとも持っているのだが、ライゼが放出する魔力が微量すぎて魔法学園に入学する意味があるのか首を捻っているのだ。
これが子鬼人ではなく獣人とかだったら武術を中心に学びに来たのかな、と捉えられるが子鬼人の場合は不可解でしかないのである。
ただ、実力主義の冒険者の枠組みだと十一歳の子供でありながら、最低ランクよりも一つ上のEランク冒険者であるライゼは不可解な目では見られたりしない。
そもそも、冒険者は実力主義の中で生きてきたため、種族の特性は理解していても、それだけで全てを推し量ることはしないのだ。推し量ってしまうと命を落とす危険があったりするので、新人の内にそこら辺を徹底的に教育されるのである。
まぁ、なので、主に仕事を冒険者の依頼でこなしていた俺達はその視線が新鮮だったのだ。
ライゼは面白そうに笑っていた。
それからグループ分けが終了し、各グループが引率者によって引率されて移動する。そして、広大な演習場に併設されている小さな演習場に辿り着いた。
そこには、机に手をついて椅子に座っている老人と
老人は、どこにでもいる老人である。優しい目つきで俺達を見ている。
ただ、ロリなのは見た目だけで、中身は俺らよりも遥かに年上の可能性がある。というか、試験官であろう彼女は俺達よりも年上だろう。
それにしても。
『なぁ』
『うん、凄いね』
先程から感じていた膨大な魔力はこの二人の魔力であった。他の小さな演習場からも大きな魔力を感じるが、ここにいる二人は別格である。
しかも、
そう、揺らいでいたのだ。
『なぁ、あの魔力量で隠蔽しているってことは』
『うん、相当の魔力量の持ち主だよ。しかも、あれだけの魔力をあそこまでの小さな揺らぎで抑えているんだ。魔力操作技術も達人どころの話じゃないよ』
俺達は驚きを表情に出さないようにしながら、こっそりと会話する。俺は深緑のローブの首元に隠れているため、俺の尻尾がライゼの首にあたる。
だから、〝
「名前を呼ばれてた者はこちらに来て、魔力測定と魔法試験を行なってもらう」
俺達が試験官の二人に驚いている間も引率者が試験の説明を再度していた。引率者は試験の進行役も兼ねているのだろう。
周りにいる皆はその進行役の言葉を真剣に、もしくは面倒臭そうに聞いている。
まぁ、実技試験は余程のへまをしなければ合格するのは確実なので、貴族や商人の子の中にはどうでもいいと思っている子もいる。
では、実技が何故あるかといえば今後の学園で学問を学ぶ上でのクラス分けで使うからである。魔力量の測定もその一環である。
そして、今日の実技試験が本格的に始まった。
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