Final ──決勝──
(ドラゴンは残念だが)
予選の調子が悪く10番手からのスタートでは。トップ争いはこの4台に絞られてきそうだ。
ふうー。
と、ヴァイオレットガールは息を吐きだす。
「OK。ついてこれるかな?」
いたずらっぽく微笑む。
「まーしかし、今からチェッカーが恋しいわ」
ソキョンはぽそっとつぶやく。このままの順位で終わってくれれば、チームとしては挑戦成功である。が、しかし。
「なんて、言うわけないでしょ。フィチ、ヴァイオレットガールには勝てそう?」
などと、ストレートに尋ねるものだった。
「はい、いけそうです。どこかで抜く機会もあるでしょう」
「そう。期待してるわよ」
「勝利給、弾んでくださいよ」
「まあ、生意気言っちゃって」
不意なおかしみを覚えて、スタッフたちは笑みを見せる。優佳も笑みを見せたが、龍一が気になる。
9位に順位を上げたが、前を抜きあぐねているようだ。最終コーナーを曲がっているさなかだ。
「なにしてんの! ちゃちゃっといっちゃいなさい!」
ソキョンは容赦なく叱咤し、優佳が訳す。
「は、はい!」
と返事するや、龍一は前に張り付き、スリップストリームを生かして並び、そのまま前に出て順位を上げた。抜かれたレーサーは左腕を跳ね上げる仕草を見せ、悔しさを表現する。
「大丈夫、彼なら私の叱咤に耐えられるわ。ヤワなやつじゃないからオファーしたんだし」
優佳の目が気になってか、ソキョンはそんな言い訳じみたことを言い。それもおかしみを禁じえずに、スタッフたちは笑みを見せた。
まあでも確かに、叱咤されてすぐに順位を上げた。
「ヴァイオレットガールちゃんがペースを落としてくれたら、ありがたいんだけどねえ……」
「さすがにそれは虫が良すぎると思いますよ」
「思うだけならただよ」
そんなやりとりがかわされる。その間も、トップ4は順位の変動なくレースを引っ張ってゆく。
レースは45周、そのうちの7周が終わろうとする。トップ4は膠着状態で、ヴァイオレットガールを先頭に様子見の機会伺い。
龍一は1台抜いて7位にまで順位を上げた。そんな彼は言った。
「ソキョンさん、思ったことをそのまま言ってください」
「じゃ遠慮なく……。勝つつもりでレースをしてください! でなきゃ許さないわよ!」
優佳の通訳を通じてそんなやり取りが交わされたのだった。ソキョンのハッパかけは思った以上に気持ちを引き締めた。
「ゲームだから楽しもうなんて思っちゃだめよ、プロとして勝ちに餓えるのよ!」
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