見つめ合う二人

岸亜里沙

見つめ合う二人

都内に就職し、一人暮らしを始めた明美あけみ

いつものように仕事から帰宅し、ポストを覗くと一通の手紙が届いていました。

差出人は、明美が高校時代にいじめていた詩織しおりからのものでした。


─なんで私の住所を知ってるの?─


明美が手に取ってみると、その手紙はまっ赤な紙に、まっ黒なインクでこう書かれていました。


『久しぶりね、明美。私はあなたに人生を台無しにされたわ。あなたを中心としたグループに嫌がらせをされ、学校にも行けなくなり、家に引きこもったわ。そして誰ともコミュニケーションを取れなくなった。あなたは軽い気持ちで私をバカにしてたんでしょうね。ブスとかキモいとか死ねとか、今考えると本当にあなた幼稚ね。でも当時の私は凄く傷ついたのよ。何度も何度も自殺しようと考えたわ。だけど私は思ったの。あなたに復讐しなきゃって。だからって私はあなたみたいにバカじゃないわ。洗練されたトラウマをあなたに植え付けてあげる』


明美は恐怖で震えました。


─詩織は一体何を考えているの?─


そして詩織からの手紙のラストに書かれていた言葉がこうです。


『カーテンを開けてごらん』


─一体なんなの?─


明美は恐る恐る、震える手でリビングのカーテンを開けました。


「きゃあああああ」

明美はあまりの恐怖で腰を抜かしました。



なんとそこには詩織が居たのです。


首吊り自殺をした詩織が。


黒く垂れた長い前髪の隙間から覗く目は、大きく見開かれ、明美を見下ろしていました。

口元にはうっすらと不気味な笑みを浮かべた状態で。


詩織の復讐とは、自分の自殺を鮮明に相手に見せつけることだったのです。


明美はこの事件のすぐ後に引っ越しました。しかしそれ以降、明美は精神を病み、部屋のカーテンを開ける事が出来なくなったそうです。

カーテンを開けると、あの瞬間の詩織の不気味な表情が 、脳裏に甦ってきてしまう気がして。

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見つめ合う二人 岸亜里沙 @kishiarisa

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