子供がこわがる みんなの怪談

北城 真

第1話 心霊写真の恐怖

1-1 心霊写真

 あれは小学校四年生の時


 僕たちの仲間で「心霊写真」が話題になった時期があった。


 中でも一番盛り上がったのは、学校に伝わるこんな話。


 学校の裏にある山を越えたところにある小さな池ーーその池のそばに生えている木を撮ると、髪の長い女の人の幽霊が写ることがある。しかし、それを撮った者は呪われる……。




 夏休み前のある日、その池に「心霊写真」を友達四人で撮りに行くことになった。


 カメラは君(直樹)が持って来た使い捨てカメラだった。


 池の周りは入れないように柵がしてあったけど、みんなでよじ登って、中に入った。


 木は数本あって、どれかは分からなかったから、なお君は片っ端から撮っていった。僕たちはなお君について行って、カシャカシャ撮るのを見た。それだけのことなんだけど、その頃はワクワクして楽しかった。



 五日後の放課後、僕たちはみんなが帰った教室で、なお君が持ってきた池の写真を見た。


 僕が見た写真は、どれもただの写真で、心霊写真らしい物は一枚もなかったが……


「あっ!見て見て、これ!」


 ヨッちゃん(良雄)が興奮して言うので、その写真に目をやると、木の下にうっすらと煙のような白い影が写っていた。そしてそれが髪の長い女の人のように見えていた。


「心霊写真だあ」


 僕たちは何かお宝を発見したように興奮した。


「やったね。なお君」


 僕が言うと、なお君は嬉しそうにその写真をカバンに入れて帰っていった。




 次の日の朝、僕たちが登校すると、直君が深刻な表情で話しかけてきた。


「昨日、風呂で変なことがあってね。……お湯につかってたら、長い髪が一本浮いてきたんだ」


「長い髪って、どれくらい?」

 トシくん(俊雄)が恐る恐る聞くと、直君は手をぐっと横に広げて言った。


「このくらい」


「俺んちも、それくらいのよく浮いてるよ。お母さんのだけど」

 たっ君(孝)の話に、直君は首を振った。


「俺の母さんはそんな長くないよ。パーマかけてるし」


「そうかあ。なんだか気持ち悪いね」


 直君はおびえていたけど、ただ髪が浮いていたというだけの話だったから、これ以上みんなの話題になることはなかった。



 ところが直君はまた次の日も暗い表情で登校してきた。


「直君、もしかしてまた髪の毛でも浮いてきた?」


 僕が心配して聞くと、直君は頷いてから、


「昨日は一本じゃなくて、何本も浮いてきたんだ。それに……」


 そこまで言ってから直君は黙ってしまった。


「それに、どうしたの?」


 昨日のことを知っている仲間も集まってきた。


 直君は少し声を震わせながら答えた。


「あまり髪が浮いてくるから、立ち上がったんだ。すると、風呂の底の方に白い女の人の顔が見えて……」


「あっ、もうダメ!やめてぇ」

 怖がりのトシ君は逃げてしまった。




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