7.安息

「シモン、よくやった! どけ! 」

 モルガンだった。

 シモンを助手席に蹴り飛ばし、運転席を占領する。どこもかしこも雨に濡れ、ヘルメットと顔の左半分は血まみれ、リュックの片方の紐も千切ちぎれ、ライフルは形が歪んでいた。

 モルガンはシートの位置を調整し、乗り心地を試すようにドスドスと上下したかと思うと、急発進して山沿いを走り出す。そのGがかかって、シモンはシートに張り付けられた。

「荷台で運の良い野郎が寝てるが、気にせずトバしてやる! 」

 スピードは百キロを超えていた。シモンは荒い運転による吐き気と、モルガンが無事に帰ってきた喜びで、もうなにがなんだか分からなかった。


 トラックは、誰ともすれ違うことなく、孤独な車道をひた走る。

「その血、カラミテにやられた? 」

 シモンは、口から質問と胃の中身のうち、質問だけを出すように努めた。

「あァ!? こりゃちげぇよ、連中の返り血だ! はっはっは! 」

 モルガンはすっかり興奮している。

「それより、シモン」

 だが、ふいにモルガンが冷静になって聞いた。

「お前、なんであんな所にいた」

 シモンは口ごもる。

「ま、あれで死んでたら許さんが、死んでないしな」

「……死ぬわけないだろ。誰だと思ってんのさ? 」

「はっはっは! こんなところで、まだ大口叩くか! 」

「当ったり前だろ! キョーシンゾーなんだよ! 」

 シモンは収納からラジオを取り出し、一瞬でチャンネルを合わせてみせる。

「ほら! ラジオだってお手の物だ! 」


 その強心臓の少年は、三十分も車を走らせると、安心したのだろうか、すやすや眠りについていた。


 そして、その少年が次に目を覚ますのは、翌日、とある病院のベッドの上のことである。

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