第11話 偽りの名前
「あ、もしもし。
「く、黒咲君!?合ってます……けど、急にどうしたんですか?」
「ちょっと聞きたいことがあって……中代のいるクラスってなん組だっけ?」
「二年二組ですけど……それが何か?」
やはりだ。中代は
やはり電話というものは苦手だ。自分の知っている声によく似ているが、
俺と会話しているのは中代本人でおそらく間違いはないだろうが、やはり違和感というものはついて回ってくる。
今、会話している相手は果たして本当に俺の知っている人物なのだろうかと。考えても仕方のないことなのだが。
「いや、すまん。それがちょっと気になって」
「いえ……用件はそれだけですか?」
ここで会話を終わらせてもいいだろう。
俺はこれから中代の秘密を
俺は
自分の力でどうしようもなく
だが、画面には一件の新着メッセージが届いていた。メッセージを送った人物の名前は
仕事のできる奴だ。そして、一条から送られた内容は俺の予想通りだった。これで俺が抱いた疑念は確信へと変わった。
手札は
だがそれでも、俺は。彼女の正体を見破りたい。
何故だか、初めて中代を見たときに感じた既視感。頭の片隅にあったもやもやが今日、ここで晴れる気がする。
「……中代。聞きたいことはまだあるんだ」
「……何でしょうか」
ふと
「本当に中代は本当に二組に
電話の向こう側で、明らかに雰囲気が変わった音がした。彼女の息を
「何が言いたいのでしょうか」
「お前は本当は二組……いや、この学校にすらいないんじゃないのか」
「どうしてそう思うのでしょうか」
「
一条の所属するサッカー部は大所帯だ。全学年の全クラスから最低でも一人は所属しているらしい。
三学年で六クラス。最低でも十八人以上はいる。よくもそんなむさ苦しい環境で活動できるものだ。感心する。
まぁ実際に調査をしたのは一条なのだが。今度ジュースでもおごってやろう。
「私は目立つタイプじゃないので、覚えられてないだけだと思います」
「
逃げ道は
「
「話は聞かせてもらったわ中代さん。
途中からスピーカーをオンにしていたので、
だが、返ってきた言葉は俺の予想を上回るものだった。
「じゃあ私の本当の名前を当ててください。正解したら証拠として目の前に姿を現します」
「は……?何でそんなことを?」
「探偵部と名乗るからにはさぞ頭が回る人たちだと思いますから。これは探偵部に対する挑戦みたいなものです」
俺は巻き込まれた側だっての。自分が探偵に向いてるから入部したわけじゃない。
「もし当てられなければ、探偵部に個人情報を暴かれそうになったと先生方にご相談させていただきます」
「なんだそりゃ。
「えぇ。でも一般的に噂は二ヶ月半ほど続くらしいですよ」
中代はこうなることが分かっていたのか、いつの間にか彼女の土俵に引き摺り《ず》込まれていた。
罠にかけていたつもりだったが、
「お手並み拝見ね」
「
「対戦相手に指名されたのは君だから。
「どこで
「上司に喧嘩を売るとはいい度胸ね。
八方塞がりとしかいえない状況になってしまった。自分で自分の首を絞めてるかもしれない。だが言いなりになるのはもっと嫌。
彼女の正体という謎を、探偵でもない俺が暴く。本当に大丈夫でしょうか。隣の探偵様の出番はいつ来るんだろう。本気で心配です。
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