りべんじ?☆まーめいど~人魚姫は二度目の人生を幸せに生きる~

別所 燈

第1話

 私はマーメイド。ある晩、船上の王子様に恋をした人魚姫。


 憧れの王子様フィリップ殿下は私をとてもでてくれた。しかし、彼は隣国のベアトリス姫に出会ってから変わってしまった。


 彼曰く「ベアトリスこそ唯一。ベアトリスと私は結ばれる運命にある」のだそうだ。


 

 そして今、私はフィリップ殿下と隣国から来た麗しき姫ベアトリスと三人で一つのボートに乗り、海で舟遊びをしている。


 最愛のフィリップ殿下をベアトリスに奪われてしまった私は深く落胆していた。



 王子様を難破船から助けたのは私なのに、なぜかベアトリスが王子様を助けたことになっている。

 

 せめて私の口がきけたなら、真実を話すのに。しかし、それを言っても詮無い事。


 私は人間にしてもらう代わりに海底の魔女に代償を支払った。声を奪われ、人の足は一歩踏み出すことに針を踏んだ様に痛む。


 何としても彼の愛を取り戻さねば、魂を持たない私は海の泡となって消えてしまう。

 


 フィリップ殿下がオールをキラキラとした水面に差し込むとパシャリと水面が揺れる、それを見ているうちに私は唐突に前世を思い出した。


 そうだ。私は一度海の泡となって消えたのだ。そしてなぜか私は人生をやりなおしている。



 悲恋のうちに海の泡となった私を、神が憐れんでくれたってことかしら?



 だが、しかし、フィリップ殿下とベアトリスはもう婚約者で、後ふた月もすれば船上で結婚式を挙げることになる。


 え? ちょっと待ってよ。神様、やり直すにしても遅すぎない?


 そこで私は神の真意に気付く。

 そうだ。これは私が幸せになるための繰り返しではない。私の不満と怒りをはらすための繰り返し。


 悲しみは泣きすぎてもう消えている。残っているのは怒りと恨み。

 そうね。この期に及んで、悲劇のヒロインぶっている場合じゃないわね!


 折角やり直せるのだから。恨みをはらしましょ。


 王子と姫は相変わらず、私の目の前でイチャコラしている。ひどい、ひどい、ひどい。私はもうすぐ海の泡となって消えるというのにこいつらは揃って私の目の前でいつもいつも……。


 というか、この二人はなぜ、いつも自分達のデートに私を連れて行くの? いちゃこらを見せつけたいわけ? ギャラリーがいると燃える変態なの? この状況っておかしいわ!


 私はボートの上にすくっと立ち上がる。

 フィリップ殿下とベアトリスがぎょっとしたように私を見た。


「どうしたんだ。ルル、ボートの上でいきなり立つなんて危ないよ?」


 ルルと言うのはフィリップ殿下につけられた適当な名前だ。相変わらず王子は端整な顔に人たらしな綺麗な笑みを浮かべ、私に近づいて来る。


 それをさっしたベアトリスが、すかさずフィリップの腕に掴まる。


「きゃあ、フィリップ様、ボートが揺れて怖いですわ!」


 ああ、わざとらしい女。本当に彼らを見ているとはらわた煮えくりかえそう。ベアトリスはすぐに「きゃあ、きゃあ」騒いでフィリップ殿下にべたべたとくっつく。


 そしてフィリップ殿下は、ベアトリスという婚約者がいながらどういうわけか私にまだ愛を囁く。その挙句に「妹のようにかわいい」だって? お前は妹にキスをするのか!


 許せない!許せない!許せない! 乙女心を弄んだこいつが許せない!


 私は、このやり直しでもまた海の泡となること決定。だっていくら何でも剣で刺し殺すなんて無理。スプラッタでしょ? 

 それに私の為に、大好きなお姉ちゃんたちの美しい髪を犠牲にするなんて出来ない。忘れずに魔女からナイフを貰う件は断っておかなくちゃね。


 とりあえず今は、目の前のこいつを海に叩き落とす!


 私は怒りのハイキックを王子の側頭部にめり込ませた。


 ばっしゃーんと、大きな水を音を立てて王子が海に落ちる。ああすっきりした。思ったよりもずっと胸がすかっとした。復讐からは、何も生まれないなんてきれいごと言う人がいるけれどあれって嘘ね。気分爽快だわ。


 王子はブクブクとして沈んで行ったが、やがて浮かび上がって、バシャバシャを無様に溺れる。


 馬鹿ね。この人なんで泳げないのに、水遊びが好きなのかしら。遠い目で王子を眺める。


「うわ! 溺れる! ベアトリス、助けて!」


 そうなりますよね。ベアトリスが助けたことになっているから、当然彼女に助けを求めるわよね。でも、助けたのは私なの。

 そして、あなたの愛しいベアトリスは今ボートの上で固まっているわ。あなたを助けるようなそぶりは微塵もない。


 しょがないわね。そろそろ本格的に溺れそうだからあなたを助けあげる。いくらなんでも命までは取らないわよ。


 勝手に惚れて押しかけて来たのは私だしね。うん、わかってる。

 私は自業自得なマーメイド。


 彼を助けようと、おもむろに腰を上げた瞬間、狙いすましたようなタイミングで背中を強くオールで打たれた。私は、勢いよく海面にふっ飛ばされる。


 ばっしゃーん!と盛大な水しぶきが上がった。久しぶりの水の中、最高に気持ちいい。


「私のフィリップ様に何するのよ! 私はあんたみたいな横恋慕女に殺されないからね!」


 あろうことかベアトリスは驚くべきスピードでオールを繰り岸へと帰って行く。


 え? ボート漕げたの? しかもフィリップ殿下を見捨てるの?


 私はそれを水の中から唖然と見送りつつ、無様に溺れる王子を回収して岸にあがった。


 岸についたはいいがフィリップ殿下の体が重い。水の中ではすいすい引きずることが出来たのにドレスも水を含んでとても重い。


 必死で、陸にずるずると引き上げていると

「凄いね、君、随分泳ぎが達者なんだね」

 突然後ろから声をかけられて、私はびっくりして飛び上がった。

 

 岩陰から出てきたのはこの国の第二か、もしくは第三王子。名前は……フィリップ様以外は眼中になかったから覚えていないわ。


 見た目は兄に似た端整な面立ちで、金髪碧眼の美男子だ。


 しかし、さすがに一部始終を見られていたのならば、まずい。後先考えずに怒りにまかせ海にフィリップ殿下を蹴り入れてしまった。

 海の泡の前に断頭台の露かもしれない。どっちが辛いの?


 ちょっと怖くて足が震える。


「ああ、そうか君喋れないんだっけ。何にせよ。兄を助けてくれてありがとう」


 あれ、海に蹴りとした現場は見ていないの? 王子様がいい方に解釈してくれてほっとする。


「違いますわ。その女はフィリップ様を海に蹴り落としたのです」


 そこへ女の金切り声が響く。ベアトリスだ。

 え? ベアトリス、ボートで岸に戻るの早すぎない? でも、これで万事休すね。


「おや、それはおかしいね。僕にはルルが兄を助けたようにみえたけれど」

 王子様は庇ってくれるようだ。しかも私の名前を覚えてくれている。


「いえ、違います。彼女がボートからフィリップ様を蹴り落としたのです。私ももう少しで彼女にボートから蹴り落とされるところだったんですよ!」


「うん、君がルルをオールで殴りつけて海にたたき落とすのはみていたよ」

 

 王子様そこは見ていてくれたのね。ナイスです。


「まあ、レイモンド殿下、そんなこと私がするわけございませんわ」

 そうだ。この人、第三王子のレイモンド殿下だ。ベアトリス、ありがとう。おかげで名前を思い出せたわ。


 でも嘘を言ってはいけないと思う。あなたにオールで打たれた背中がさっきから痛むの。


「それに君は兄上を見捨てて、物凄い勢いでボートを漕いで一人岸にもどってきたではないか」

「まあ、それは誤解です。私は助けを求めて必死で岸まで漕いだのです」


 二人の言い合いが過熱してきた。ベアトリスの言っていることは半分事実だが、ここはどうしてもレイモンド殿下に勝ってもらいたいところだ。



そのとき

「うううっ」

とフィリップ殿下がうめいた。


 私はフィリップ殿下の元に行こうとしたが、水でぬれたドレスが重くて早く動けない。そこへ電光石火の勢いでベアトリスが彼の元へ向かう。


「フィリップ様、気が付きましたか?」

 

と言ってフィリップ殿下に抱きつく。


「ありがとう。ベアトリス、君が助けてくれたんだね」


 ちっがーう! 助けたの私だから! 海に落としたのも私だけれど。


 だがしかし、そこから二人の甘い世界が広がっていった。


 ベアトリスが嘘吐きだとかどうだとか関係ないのね。どのみち彼らは愛し合っている。私は敗北に肩を落とした。一時はスカッとしたけれど結局、私は海の泡。


「おい、お前、大丈夫か?」


 悄然とする私にレイモンド殿下が声をかけて来る。意外に優しいのね。今まで全然気が付かなかった。それに金髪碧眼でお顔もとってもきれい。


 そこで私は魔女の言葉を思い出す。「お前には声がなくとも、もの言う瞳があるではないか」。そうよ、その手があったのよ。


 私はレイモンド殿下に目で訴える。『文字をおしえてくれませんか?』 

 そんな思いを込めて彼をじっと見つめる。もしかしたら、通じるかもしれない。


「え? 何? ルルは文字を覚えたいの?」


 すごいわ。通じたわ。ついでにもう一つ試してみましょう。


『お昼まだなの。お腹が空いたわ』


「ああ、わかったよ。ルル、軽食を準備してあげよう」


 嬉しい分かってくれた。

 こうして私は第三王子レイモンドという優秀な通訳を見つけた。



 



 結局ベアトリスとレイモンドの意見の食い違いから、第一王子を海に蹴り落とした件はうやむやのうちに終わり、私は助かった。


 幸い頭を強打したせいでフィリップ殿下の記憶も混濁していた。なにも覚えていないらしい。



 そして私は第三王子レイモンド殿下に文字を教わるようになった。


「へえ、ルルは呑み込みが早いんだね」


 ひと月もすると、何とか文字が書けるようになっていた。そりゃあ必死よ。海の泡まであと一か月しかないんだから。


 だから、せめて真実をフィリップ殿下に伝えたいの。ただそれだけ。


 私は今までの事情をごく簡単に手紙に綴り、フィリップ殿下に渡そうと考えていた。


 でもその前にチェックは必要よね。とりあえずレイモンド殿下に手紙の下書きを見てもらうことにした。


 死に戻りとか説明が難しいのでそこは省き事実だけを並べた。なかなかの出来だと思うの。


『私は人魚。フィリップ殿下を難破船から助けたのは私なの。

 海の魔女と取引をして人間にしてもらったから、王子様と結婚しないと海の泡になっちゃう』

 

 私の手紙を見てレイモンド殿下が驚きに目を見開いた。


「え? 『私は人魚』って、とんでもないな。おい、闇市場に持って行ったら高値が付くぞ」


 レイモンド殿下、違います。そこじゃないのよ。食いつく場所は! 王子様と結婚しないと海の泡になっちゃうってところなのよ。


 私は必死でその部分を指で何度も指し示す。


「海の泡になりたくはないと言うお前の気持ちは分かったけれど。その怪しげな取引ってなんだ?」


 なんか一番重要な海の泡の部分は軽く流されてしまったけれど、取り合ず私は紙に新たに文字を綴る。


『人間にしてもらう代わりに魔女に声をあげた。足は一歩進むごとに針を踏むように痛む』


「それはひどい。どう聞いても魔法というより、呪いだな。君の言っていることが本当ならば」

 私は覚えたての字でさっと紙に書く。


『ひどい。疑うの? 周りの魔物が死んでしまうような怪しい薬を魔女に飲まされたのに』


「そんなもの、よく飲んだな」

 レイモンド殿下が驚愕に目を見開く。

 

 だってしょうがないじゃない。


『そのときは王子様が大好きだったから』


 ああ、そのときのことを思い出すと今でも……。いいえ、涙は出ないわ。あの頃の自分を殴ってやりたい。

 しかし、レイモンド殿下は他人事だから冷静だ。


「ここで言う王子様は、フィリップ兄様の事か。だが、その取引っていうのは王子と結婚ってことだよね? お前はその契約を交わすとき、フィリップを名指しした?」


 いや、船上の彼に一目惚れをしたのだ。名前など知るわけがない。


『その頃フィリップ殿下の名前は知らなかったから。王子様と結婚ということで約束した』


「わかった。兄上限定というわけではないのだな。ルル、とりあえず呪いを解きに行こうか、わが国にも魔法使いはいるからね。彼に解呪を頼んでみよう」


『そうしたら、私は人魚に戻れる?』

「まあ、成功すればだが……」


 そうか、そうよね。戻れなかったら、私はまた海の泡。自業自得ってものよ。

 するとレイモンド殿下が慰めるように、肩を優しく叩く。


「やってみなければ、分からないだろう。マーメイド」


 そういって、いきなり私を抱き上げた。

 え? ちょっと待って? なんで抱き上げるの? びっくりして私は慌てふためいた。


「おい。暴れるなよ。一足歩くごとに痛むのだろう? だからこのまま解呪のできる魔法使いの元につれていってやる。彼は城に常駐しているからな」


 レイモンド殿下は、フィリップ殿下ほど愛想は良くないけれど優しい。ここのところフィリップとベアトリスのイチャコラばかりみせられていたから、彼の思いやりが身に染みる。


「戻れなかった場合は、私も王子だから、お前と結婚してやろう。そうすれば、泡にならずに済むかもしれない」


とまたレイモンド殿下が嬉しい事を言ってくれる。


 私はレイモンドの腕の中で、ささっと紙に書く。


『本当なら嬉しい。海の泡は寂しくていやなの』

「そうか、そうだよな。で、なんで私の言う事を疑うの?」


 ちょっと機嫌をそこねたようにレイモンド殿下が眉根を寄せる。


『あなたのお兄様のフィリップ殿下も私と結婚してくれるって言っていたのにベアトリスが来てから急に「君は妹みたいなものだから」と言いだしたのだけれど。あなたももしかして同じ?』


 怒られるかもって、ちょっとドキドキするけれど、これはぜひとも確かめておかなくてはならない。ぬか喜びはいやなの。


「失礼だな。私は大丈夫だよ」

とレイモンド殿下はややぶっきらぼうな調子で言う。


 でもやっぱりちょっと不安。フィリップ殿下と顔も似ているし。もてるだろうし。それとも第三王子だと人気がないのかしら? 


 確かこの国は第一王子のフィリップ殿下が継ぐことになっているのよね。フィリップ殿下自慢していたから、覚えているわ。


 いえ、考えるのはやめましょう。上手くいけば、呪いがとけるかもしれないものね。

 そうしたら、私は海に戻るの。


 王宮の回廊をいくつも抜け、らせん階段を地中深く下り、王宮に常駐しているこの国随一の魔法使いの元についた。

 

 結構歩くのね。私はレイモンド殿下の腕の中で楽だったわ。


 扉をノックして入ると、まだ年若い魔法使いが出て来た。凄い魔法使いだというから、お年寄りかと思っていたら、若い男性だった。


 事情説明はレイモンド殿下がしてくれた。

 私は今、一人椅子に座っている。

 レイモンド殿下と偉大な魔法使いトール様は話し合っていた。


「それで、彼女は本物の人魚なのか?」

とレイモンド殿下がトール様に聞いている。実は疑っていたのね。地味にショックだわ。


「ええ、確かに匂いが人外ですね」

 これには我慢できなかったので、私は高速で紙に言葉を綴る。


『人外という言い方はやめてください。私はこれでも海の王国の姫だったのです』


 興奮気味に私が掲げる紙を二人は驚いたように読んでいる。 


「わかったよ。落ち着け、人魚姫」

 そうよね。少し落ち着かなくては。


 そういえば、いままで、フィリップ殿下はとても私の事を可愛がってくれていたけれど、レイモンド殿下のように親身になってはくれなかった。


「確かに強力な呪いがかかっていますね。しかも相当悪質です」

 魔法使いトールの言葉に更にショックを受ける。魔女にすっかり騙されていたのね。


「ならば、解呪を頼む」

「いや、解呪と言っても、これほど複雑なものになると呪いをかけた本人でないと解くのは難しいのです」


「うーん、とりあえず出来るところまでやってみて」


 レイモンド殿下が軽い調子で言う。


 あれ、親身になってくれたんじゃないの? その言い方、完全に他人事。

 

 しかし、魔法使いトール様とレイモンド殿下の話はとんとん拍子で進み。


「ルル様こちらへ」

 私はおかしな魔法陣の中に入れられ、甘いのに苦いおかしな薬を飲まされた。


 レイモンド殿下は少し離れた場所で、じっと観察している。もしかして私、実験台なの?

 そして魔法使いトール様の怪しげな呪文詠唱が始まる。


 次の瞬間、私は突然足に激しい痛みを覚え目の前が暗くなった。





「おい、ルル、ルル、大丈夫か?」

 心配そうに私の名前を呼ぶ声が遠くから聞こえる。

 うっすらと目を開くと目の前に心配そうなレイモンド殿下の秀麗な顔。

「……レイモンド殿下?」

「よかった。しゃべれるようになったようだね」

「あれ? 声が、声がでているわ!」

 私は飛び起きた。

「美しい声だ。よかったな」

と満足げにレイモンド殿下が笑う。


「凄い。凄いわ!」

「それで足の痛みはどうだ? 少し歩いてみろ」


 レイモンド殿下の言う通り、私は寝かされていたベッドからゆっくりと立ち上がり、歩いてみる。全く痛みがない。


「痛くない……。全く痛くないです!」


 涙が出そうなほど嬉しい。私はやっとあの地獄のような痛みから解放されたのだ。


「跳ねても全然痛くない! トール様ありがとうございます」


 人間の魔法使い、すごいじゃない!


「おい、私への礼はないのか?」


 レイモンド殿下が拗ねたように言う。そうね。ここまで連れ来てくれたものね。


「はい、レイモンド殿下、ありがとうございます。私これで呪いが解けたのですね。もう海の泡にならなくてすむのですね」

 そんな私にレイモンド殿下が呆れたような視線を送る。


「マーメイドはちょっとばかなのか? よく見ろ、足は人のままだろう。呪いが解けたら、人魚になるはずだ」

「確かに!」


 レイモンド殿下から指摘されるまですっかり忘れていた。


「ならば私はこのままでは海の泡になるということですね」


 痛みがなくなっただけ、マシと考えればいいのかしら。そうよね、声も取り戻したし、前向きに生きなくちゃ。


「だから、私が結婚してやるといっただろう」


 え? 本気で言ってくれていたの。なんていい人! それなら、善は急げだわ。


「レイモンド殿下。お気持ちが変わる前にすぐに私と結婚をしましょう」

 

 だってフィリップ殿下はあっという間に心変わりしたものね。ここは急がないと。

 しかし、レイモンド殿下は呆れたような顔をする。


「人魚。王族の結婚をなめてはいけない。まず国王と王妃の許しを得なければならない。それから大臣の承認もいる」


「え! 私のいた海の王国では私の父が白と言えば黒いものも白くなったのに、この国の王様は弱いのですか?」


 私の言葉にレイモンド殿下が渋い顔をする。


「失礼だぞ、人魚。この国の国王は暴君ではないんだよ。それに国王は私の父親だ。弱いとか言うな」

「ごめんなさい。……あれ、王妃様は?」

「あの人はフィリップ兄様の母で私の母ではない」

「え?」

 それならば、レイモンド殿下のお母様は誰?


「まあ、いい。お前は人魚だし、人の世には疎いだろう。兎に角、私はお前との結婚の許可を求めて来る。お前は今日から教育を受けろ」


ということで私はレイモンド殿下の言う通り素直に人間の教育を受けることにした。








 だが、現実はそうは甘くはなく、レイモンド殿下との結婚の許可はなかなか下りなかった。



 レイモンド殿下の話によると、私は身元不明で、王宮に不法侵入してきたところをフィリップ殿下に保護されたということになっているらしい。


 え? 私、不審者だったの? 初耳なのだけれど。


 そのため、なかなか結婚を許してもらえない。早くしないとフィリップ殿下の結婚式になってしまう。


 そのうえ、このところレイモンド殿下は私のところにあまり顔を出さない。フィリップ殿下はほとんど一日中一緒にいてくれたのに。やっぱり、人魚は嫌なの? それも運命の乙女を見つけたの?


 すると言葉にせずとも勘の良いレイモンド殿下が答えてくれる。


「違うよ。ルル、私と第二王子のヘンリー兄様は忙しいんだよ。この国の第一王子が運命の愛をはぐくむのに忙しくて仕事をしないからね。その分私達二人が働いているんだよ」


 フィリップ殿下を見てて、すっかり王子様は暇なのかと思っていたけれど、本当は違うのね。


 お仕事ご苦労様です。私も勉強頑張ります。


 間に合わなかったら海の泡だけれどね。でもいいの。少しの間だけでも大事にもらえて私はとっても幸せです。







 ぎりぎりで結婚の許可が下りた。それもフィリップ殿下の結婚式の当日だ。


「ルル、いそげ!」

「はい。レイモンド殿下!」

 

 第一王子であるフィリップ殿下が盛大に船上で結婚式を挙げているときに、王宮の片隅の礼拝堂にレイモンド殿下と私は駆け込んだ。


 誓いの言葉だけの結婚式が執り行われ、慌てて婚姻の誓約書にサインした。


「いいのかい? こんな慌ただしい式で」

 レイモンド殿下が心配そうに聞く。そんなのこっちのセリフ。相手が呪いのかかった人魚でごめんなさい。


「ありがとうございます。レイモンド殿下」


 レイモンド殿下が優しく頭を撫でてくれる。


「いいんだよ。ルル、お前がフィリップ兄さまに一目惚れしたように、僕もルルに一目惚れしたのだから」


 突然の告白、とっても嬉しいです!


 こうして、私は海の泡にならずに済んだ。







 そして今、私はレイモンド殿下と大きな天蓋つきのベッドの上で顔を見合わせて座っている。

 大丈夫よ。初夜の覚悟は、ばっちり出来ているから!


 しかし、ロマンチックに抱き寄せられてキスされることはなく。 淡々と質問された。


「お前は呪いで人魚から人間になったんだよな?」

「はい、レイモンド殿下のお陰ですっかり足の痛みもなくなりました」

 

 そうよ。あなたと魔法使いのお陰よ。これから一生懸命尽くすわね。


「それで確認しておきたいのだが、結局、君の生殖方法は魚よりなの? 人間よりのなの?」


 彼のその質問で私の頭の中は真っ白になった。今までの感謝の気持ちはすごい勢いで時のかなたに飛んでいく。

 私はぷつんと自分の頭の血管が切れる音を聞いた。


「はあ? なに言っているんですか! 人に決まっているでしょ? まさか私が卵を産むとでも思っていたんですか! 私のことをいままで魚類っていう目でみていたんですか? 人魚だからって魚だと思っていたのですね。

 そりゃあ、クマノミとも仲良しですし、たこだって友達です。彼らの言葉も分かります。でも、海の生き物だからって、魚類だなんて一まとめにするとか、ひどすぎます。そんなことをすればクジラだって怒りますよ。あんまりです!」


 ぽろぽろと私の瞳から涙が溢れた。それがベッドの上に落ちると美しい真珠に代わる。


 レイモンド殿下が驚いた顔でそれを見ている。


 ああ、私はやはりまだ人魚なんだ。確かに人間から見たら人魚なんて、魚なのだろうけれど。


 もう、頭の中がこんがらがっちゃったから、今日は床で一人で寝ちゃう。


「おい、ルル、私が悪かったよ」


 レイモンド殿下がベッドの上から謝っているけれど知らないんだから。私はそのまま布団を頭からかぶった。

 

 なんでこんなに傷ついちゃったんだろう。自分でもわからない。






 次の日、それではいけないということで反省した私はレイモンド殿下に謝ることにした。


 昨晩はあまりのショックにてんぱっちゃって態度が悪かったわよね。

 ちゃんと「ごめんなさい」しないと。彼は私の為に結婚までしてくれた人なのだから。


 なんであんなに泣いちゃったのかな。もしかして私、彼に恋しているの?


 ちなみに朝目覚めると、私はしっかりベッドの上で眠っていてレイモンド殿下は執務に行った後だった。あの方どこで寝たのかしら。





 私はその晩寝所で、レイモンド殿下を待った。


「昨晩はごめんなさい。レイモンド殿下」

 彼が入って来るとすぐに頭を下げて謝った。


「いいよ。私も失礼だったね。つい生物学的に興味を惹かれてしまってね。ルル、すまなかったね」


 なんだかレイモンド殿下の言い方が少し引っ掛かるけれど、とりあえず彼が手を差し伸べるので固く握り返す。私達は仲直りの握手をした。


「それでは初夜をやり直そうか」

 そんなふうに改めて宣言されてしまうと緊張する。


「大丈夫だよ。取って食いやしないから、まずはキスからしてみよう」

 この人は、なぜいちいちそういうことを言うのだろう。

 とっても恥ずかしいじゃない。


 そしてレイモンド殿下の綺麗な顔がゆっくり近づいてい来る。私は慌ててぎゅっと目を閉じた。唇に柔らかいものが触れた瞬間、急速に体が縮む感覚に襲われる。


 え、ちょっと待って! いったい何がおこっているの? 慌てて目を開けると……。


「え?」


 レイモンド殿下が驚いたように目を見開いて私を見下ろす。


「!」


 ピチピチッ、そんな音が寝室内に響く。というか私の体から響いているの?


「嘘だろ? これでは本当にとって食えるではないか」


 なぜからしら、すごく呼吸がしづらいの。てか、本当に苦しい。水、水。早くして。皮膚が乾いちゃう!


「おお、そうか、水がなければ、魚は死んでしまうな」


 魚? レイモンド殿下は素早く手近なガラスの花瓶から花をひっこ抜き、私をその中に突っ込んだ。よかった。お水気持ちいい。すーい、すい。あれ?


「淡水だけれど、大丈夫なのか? 見た目は鯛っぽいな。おい、ルル、聞こえているか?」

「ハクハク。ぷくぷく」


 人魚ではなく鯛? なんで? なんで魚になったの?


「なんでと言われても私にも分からん。よし、元気そうに泳いでいるな。明日魔法使いのところにもう一度行ってみよう」


「ぷくぷく」

 やっぱり、レイモンド殿下は私の言葉が分かるのね。

 でも、なんだか体が小さくなったせいか上手く考えられない。


「で、明日の朝食だが、餌はやはりイトミミズがいいか?」

「ぶくぶくぶくぶくぶく」


 いやよ。イトミミズなんて絶対に食べないんだから!





 あくる朝、レイモンド殿下は、私のいるの花瓶の中にパンの欠片を投げ入れてくれた。


「ぷくぷく」

 お腹空いていたの。ありがとう。


「ルル、今からトールのところにいくぞ」

 そうね。早く行った方がいいかもしれない。なんだか私の知能が低下してきている気がするの。

 考えることがとても億劫。



 レイモンド殿下が花瓶を持って移動する。花瓶の水がちゃぷちゃぷぽちゃんと揺れた。ちゃんと人間に戻れるといいのだけれど。

 そうしないと私と結婚しちゃったレイモンド殿下がピンチじゃない?







「トール、ルルにキスをしたら魚になった。何とかならないか?」


 魔法使いのトール様が、私を花瓶の上から覗き込んで青くなっている。


「一時的には人間には戻せるとは思いますが、強力な呪いなので、私では完全に解けないかと思います」

 トール様、少し逃げ腰ね。


「しかし、お前のお陰でルルは声を取り戻し、足の痛みもなくなり快適そうだったぞ? そのことについてはとても感謝している。トールお前は優秀な魔法使いだ。きっとできるさ」

 

 レイモンド殿下、飴と鞭ですか?


 でも言っていることはやっぱり無茶ぶりだと思うの。

 とりあえず「海の泡にならなくて良かったわ」ということで私的にはハッピーエンドだから気にしないで。諦めがついたわ。

 これからは鯛として生きて行きます。魚と人間はさすがに夫婦は無理だと思うの。

 レイモンド殿下、ご迷惑をおかけしてごめんなさい。

 


「しかし、これ以上魔法をかけたら、どいういう影響がでるかわかりませんよ」

 トール様がレイモンド殿下の言葉に慎重に答える。私もあなたが正しいと思うわ。


「彼女は恐らく人になったり、魚になったりを繰り返すと思うのだが」


「それには私も同意です。ルル様はかなり不安定な状態にあると思います」


「それならば、せめて魚類以外の陸上の動物にしてくれないか? 今回はたまたま近くに花瓶があったから助かったものの、なければルルは死んでしまうところだった」


 なるほど、その手があったわね。でも可愛らしい猫ならばいいのだけれどゴリラとかハイエナとかになってしまったらどうしよう。レイモンド殿下、捨てずに私を飼ってくれるかしら? 

 野良ゴリラとか悲しいわ。どうやって生きて行けばいいの?


「ぷくぷくぷく」

 やっぱり私、魚がいい。勝手知ったる海に放流して。


「分かりました。そういう事ならば」

 トール様が何だかやる気になってきているわ。やめて、そんな無茶ぶり聞いちゃダメよ。


「ルル、大丈夫だよな」


 いやよ! 私は花瓶の中水面でぴちゃりと尾を鳴らす。

 私はこのまま魚でいいわ。


「ほら、ルルもやってくれと言っている。頼んだぞ!」


 言ってないってば! どうしちゃったの、レイモンド殿下。


「かしこまりました。そこまでおっしゃるのならば、力の限りを尽くしたいと思います。そうですね。私も美しいルル様にお会いしたいですから」


といってトール様がいい笑顔を見せる。なんだか二人が盛り上がっている。

 

 ちょっと待って私はこのままでいいの!


 でも、無力な魚の私は、あっという間に魔法陣の真ん中に花瓶ごと置かれてしまう。絶体絶命。

 私は不安でぱちゃぱちゃと水面を鳴らす。


 するともう一度レイモンド殿下が私のそばにやって来る。


「ルル、大丈夫だよ。怖がらないで。トールは素晴らしい魔法使いだから安心して」


 あれ? やっぱり、私の言いたいことわかっているじゃない。要するにレイモンド殿下は私が魚では嫌なのね。


「それは違うよ、ルル。君は今不安定な状態なんだ。だから、またいつ人間に戻るか分からない。そして、いつ魚になるか分からない。それはとても危険なことなんだ。もしもそばに水がなかったらどうする? だから、陸上の生き物にとトールに頼んでいるんだよ。大丈夫、私はどんな姿の君もうけいれるから」

 

 レイモンド殿下、わがまま言ってごめんなさい。私、頑張ります。


 そのうちトール様の呪文詠唱が始まって、私の体がぼうっと明るい光に包まれた。とてつもない痛みに目の前が真っ暗に……。





「ルル、ルル?」

 レイモンド殿下の声に目を覚ますと、彼が心配そうな顔で覗き込んでいる。そしてその後ろにはトール様の姿が見えた。


「レイモンド殿下、ここは……」

 私はどこかのベッドの上で、毛布にくるまれていた。


「ああよかった。目覚めたね。まだ、王宮の地下だよ。ここはトールの実験室だ。とりあえず成功したようだよ。お前は人間に戻った」

「え? 私、人に戻ったのですか?」

 毛布の下を確認すると手があって足がある。よかった。もう魚じゃない! 


「そうだよ。今のところはね」

「私の解呪は完ぺきではありませんから、この先何が起こるか分かりませが」

 トールがそんな余計なひとことを付け加える。


「そうだな。ここで確かめてみよう。ルル、キスをするよ」

「人前でなにを言っているのです?」

 恥ずかしすぎて真っ赤になる。


「大丈夫だ。トールはいないと思え」

「無理です!」

 だって、トール様ったら、興味深げにじっとみているのよ。


「トール、後ろを向いていろ」

 そうよ。後ろ向いてて。


「おそれならがら殿下、それでは現象を確認できません」

 トール様が真面目くさった顔で言う。


「しょうがない。ルル、すぐに済むから」

 これ以上わがままは言えないわね。私は首を縦にふった。


 レイモンド殿下の形の良い唇が昨夜と同じように近づいて来る。恥ずかしい。そして唇が重なった。


 どうなったの? 私、どうなっちゃうの? 恐る恐る目を開けた。


「よかった。何の変化もないようだ。お前は人間に戻ったよ」

 レイモンド殿下がとっても優しい笑みを浮かべる。なぜか胸がきゅっとした。


「ありがとうございます。レイモンド殿下、トール様」

 

 ついうっかりポロリと泣いてしまったけれど、涙は水で真珠にはならなかった。





 私はその日から、また勉強を始めた。


「ルル、今日は無理しなくていいよ」

「いいえ、レイモンド殿下に助けて頂いた命です。私、頑張ります!」


 そうよ。彼の為に頑張るわ。海の泡の運命からは免れたわけだしね。


「ほどほどにね」


 そう言ってレイモンド殿下がちゅっと私の頬にキスを落とした。ドキドキして心臓に悪い。


 トール様は、「何かのきっかけで、別の動物になってしまうかもしれませんよ」なんて言っていたけれど、大丈夫そう。

 私は夫の為に、一生懸命勉強することにした。




 そしていよいよ。夜がやってきた。緊張する。

 お勤め頑張らなくちゃ。


 ノックの音がしてレイモンド殿下が入ってきた。


 どきどきする。


 いつもみたいに、何かお話しするのかと思ったら、彼は何も言わず私を優しく抱きよせた。


 そして美しいお顔が近づいて来る。


 ああ、今日はキスする宣言はしないんですね。私は慌てて目を閉じた。


 柔らかい唇が触れる。それだけで胸が高鳴る。ゆっくりと唇が離れレイモンド殿下と目が合う。青くてサファイヤのような綺麗な瞳、しばらく見つめ合った後、ぎゅっと抱き寄せらた。


 窓からは月の光が煌々とさす。空には綺麗な満月が……って、あれ? いま体が縮んだ感覚が! 


 とても上の方で、レイモンド殿下が驚いたように目を見開いて私を見下ろしている。何なの? いったい何が起きたの? 私、また喋れなくなってる!


 慌てていると、レイモンド殿下が優しく抱き上げてくれる。片手で抱っこされているわ。どいう事?


「大丈夫だよ。落ちついて聞いて。ルル、君はその……。いま、とても愛らしいモモンガになっている」

 ええ! なんで? なんでモモンガ?


「恐らく私が魚ではなく、陸の動物にと頼んだからだと思う。きっとこれがトールの精一杯だ。

 ルル、とりあえず今日はもう寝よう。どうするかは明日考えよう。それに私はモモンガが大好きだ。ルル、とってもかわいいよ」


 そう言って、モモンガな私を同じベッドに寝かせてくれて、なでなでしてくれる。

 ありがとう。レイモンド殿下。嬉しいよう。




 翌朝、私は朝の光でぱちりと目が覚めた。レイモンド殿下の腕の中にいる。嬉しい。モモンガな私を抱きしめて眠ってくれたんだ。


 見上げるとレイモンド殿下の優しい青い瞳があった。おでこにチュッとキスを落とされ、腰を引き寄せられた。


 え? おでこ、腰って。


「うん、昨日の現象はだいたい見当がついた。ルルは満月にモモンガになってしまうようだね。いまはいつもの美しいルルに戻っているよ」

「え?」


「問題ない。満月の夜だけ、モモンガになってしまうことは二人だけの秘密にしよう」


 そう言って、レイモンド殿下が花が綻ぶような笑みをみせた。



 その後もちょっと不安だったけれど、レイモンド殿下の推測通り、私は満月の夜にモモンガになる。それ以外は普通の人間として過ごしていた。



 最近はレイモンド殿下が満月の夜になると森へ連れてってくれる。私はそこで存分に遊んだ。


「なんだか、ルルはとても楽しそうだな。モモンガの体は気に入ったかい? 私もルルと同じ呪いをかけてもらおうかな」


 木々の間を滑空するのがとっても気持ちがいいの。モモンガ最高! でも呪いは駄目絶対。




 あとはちゃんと彼の奥様をやっています。

 レイモンド殿下のお嫁さんになれて、いまはとっても幸せです。






♢♢♢




 その頃、王位を継ぐ予定だった第一王子のフィリップは、隣国で生活していた。


 第二王子ヘンリーに「兄上は働かないから、運命の愛に生きてください。この国は私と弟のレイモンドで支えていきますので、どうかご安心を」と隣国に追い出されたのだ。


 彼は今運命の乙女ベアトリスとそれなりに幸せに生きている。


「ちょっとどういうことですか? 外に妻がいるって? あなたの国も、うちと同じ一夫一婦制ですよね?」


 ベアトリスが今日も金切り声を上げる。


「いや、その、それはあれだ。私は美しいから、もててしまうのだよ。それに優しいから女性に縋られると断れなくてね」


 困ったようにフィリップが眉尻を下げる。


「そんなわけないでしょ? 美人とみれば、いい顔しているからじゃないの! なんですぐに若い女とみると口説いて、結婚してやるとかいうのよ! もう悔しい! 腹立つわあ!」


 新婚早々のキレた妻に、王子は今日も顔をひっかかれるのだった。


「うわあ。ごめんなさい!もう浮気はしません」

「何度目だ、こら! もう信用できないんだから!」


 彼らの夫婦喧嘩はこの国の風物詩となった。






 終わり


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りべんじ?☆まーめいど~人魚姫は二度目の人生を幸せに生きる~ 別所 燈 @piyopiyopiyo21

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