俺の書いている小説がクラスの美少女に見られていたんだが……

夜葉音

俺の書いている小説がクラスの美少女に見られていたんだが……

「あっ、すまん」


「――こっちも……ごめん」


 たまたまぶつかったときにスマホの画面が見えた。

 ――なぜこいつが俺の小説を読んでいる?

 俺は、天童文哉、普通の高校生だが、周りには陰キャとと思われているらしい。

 まあ、目に髪かかっているし自分でも暗いとは思う。

 そんな俺はとある小説サイトで『なぜか美少女がいつもついてくるんだけど……どうしたらいい?』という小説を書いているがまあ、登録している人の数は十人以下という感じだ。


「今度から気を付ける」


 そう言うとすぐに立ち去った。

 こいつは、赤聖戸玲奈、学校一の美少女と言われるというラノベから出てきたかのような人間だ。

 まあ、見た目と言動は一緒だが陽気すぎて俺は苦手だ。

 しかし、どうしたものかあんな奴に見られているとは……もしかしてゴミみたいとかであざ笑っているのか。


「それなら最新話まで読まないはずだが……」


 まあ、たまたまだろう……というかそう思いたい。

 俺は家に帰って小説の続きを書いた。


「うっ、まぶしいなあ」


 夢中で書いていると朝になっていた。

 こんな時間まで書いたのは久しぶりだな。

 いつもは遅くても夜の十二時までにはやめるのに朝までやってしまった。

 学校へ行く準備して朝飯の準備をした。

 俺が一人暮らししたいと無茶を言って生活しているからなあ。

 まあ、親には感謝している。


 俺は朝食を食べて家を出た。

 あっ、やば、投稿するの忘れてた。

 学校へ行きながらもスマホで欠かさず投稿した。


 学校へ行くと俺の数少ない友人が待っていた。

 名前は、甲斐葉猪高。

 こいつはまあ一年の時最初席が隣でしゃべることができるようになった感じだ。


「おはよ、お前また徹夜したか?」


「毎回思うがなぜわかるんだ?」


「そりゃ、お前目の下クマできてるからな」


 え、クマできてたのか。

 今までもばれていたのはそれが原因か。


「お前ただでさえ陰キャに見えるんだからそういうの何とかしろよ」


「そう言われてもなあ……」


「せめて髪ぐらいは上げたらどうだ」


 そう言うと俺の前髪を持ち上げてきた。

 めんどくさくて切っていないだけなんだが目にかかっていたほうが落ち着くっていうのもある。


「お前やっぱ顔いいのにもったいないな」


「そうか?俺はそう思わないけど」


 顔いいなんてほとんど言われないからなあ。

 まあまず、それを言ってくれる友人とか知り合いが少ないからな。

 そんなこと考えながらも俺は、教室へ向かった。

 猪高は別のクラスだから途中で別れた。


「おはよっ、ふみ」


「ん?ああ、瑞樹か」


「ん?じゃないよ。何も返してくれないしさ」


 こいつは、燐賀瑞樹。

 親の知り合いの子でまあ、幼馴染だ。

 こいつはなんか赤聖戸に並ぶ美人と言われているらしい、俺も顔はいいと思う、顔は。

 というか俺の周り陽キャ多くないか?猪高といい瑞樹といいその他もろもろ。


「ねえ、無視しないでよ」


「無視はしてないただ話すのがめんどくさいから」


「ん?めんどくさい?私と話すことが?」


 瑞樹は少し怒っている様子だった。

 周りの奴はあーあと言いたそうな顔をしている。

 そんな顔してないで助けてくれないか?こいつ怒ると面倒なんだよ。

 そう思っても助けてくれるものなんて誰もいない。


「ねえ、瑞樹なんで天童と話してるの?」


 うげぇ、出たよ俺の嫌いな赤聖戸が。

 本当にこいつ嫌い、まじで、なんでこんな奴がいるんだろうなあ。

 そのうえ、俺の書いてる小説が本当に読まれてるのなら吐き気がする。


「え?だってふみほかに話す人このクラスにいないんだよ」


 場が固まった。

 さらっとそういうこと言うのやめないか?なんか悲しくなってくる。


「そ、そうなんだ。まあ、特に言うことないねそれなら」


 その言い方はやめてくれないか?まるで俺がかわいそうな奴みたいな言い方は。

 すると鐘が鳴り先生が入ってきた。


「ほら、さっさと席付いてください。そうしないと……」


 俺は急いで席に着いた。

 この山井先生は見た目はよく男子に人気だがそのかわりドSで一瞬でも隙を見せると連れていかれ体罰と言われてもおかしくないようなこととかいろいろしてくるやばい先生だ。

 まあ、それを望んでいる変態がいるのが気が引けるが。


「……まあいいです。今日は――」


 終わるとまた瑞樹が話しかけてきた。


「ねえねえ、また徹夜したでしょ」


「やっぱりばれるのか」


「うん、クマがすごいからねえ」


 朝、鏡なんて見ないからな。

 俺は今日から少し鏡を見ておこうと思った。

 まあ、忘れていなければの問題だが。


「しっかりと寝たほうがいいよ」


「お前は母さんか何かか」


 そんな注意してくるのいないからなあ。

 一人暮らししているがたまに母さんがやってくることがある、その時にいろいろとしつこく言われるんだがそれ以外で言われることなんてほとんどない。


「ふみ何やって徹夜なんかしてるの?」


「動画見てる」


「動画なんかいつでも見れるでしょ」


 はあ、こいつと話すのは本当に大変だ。

 めんどくさがっているとチャイムが鳴り俺は席に着いた。


 2


 放課後になり部活の時間帯になった。

 俺は姉が今までやってきていたが卒業し俺しかいない文芸部に所属していることになっている一応。

 と言っても文芸部は部室にパソコンがありそれで小説を書いているくらいだ。

 俺の書いている小説は顧問と姉に伝え文芸部で執筆している。

 俺は担当の山井先生の元へ向かった。

 一応顧問ということになっているが部活をしっかりと行っていれば特に何もない。


「今日もしっかりと部室の戸締りをして鍵を返したら帰ってください」


 俺は部室に向かった。

 はあ、俺はもともと部活に入るつもりなんてなかったのにあの姉が勝手に申請書出していたからな。

 まあ、運動部じゃないだけましだ、運動なんか言うクソみたいな事やらないといけなくなるからな。


 俺はパソコンを開いていつものサイトへ向かった。

 メアド変えなくていい辺りはマジで感謝している。


「しかし、この後どうしようか?」


 これが初の作品ということは置いておいて、まずリア充どもの気持ちなんてわからないから、ここからどう持っていけばいいのかが全く分からない。

 姉の小説を参考などにはしているがこれだけはイメージが付かず伸ばし伸ばし書いているという感じだ。


「あいつに聞いてみるか」


 俺は数少ない友人の中でも数少ない彼女持ちの奴に電話した。

 名前は、成井千也。

 俺がボッチ飯してる時に急に『何やってんだ?』とか話してくるやばい奴だ。

 こいつはまあ、いい奴なんだが危険だ。

 俺のスマホのパスワードとかすぐに盗み見て開けようとしてくるからな。

 そんな奴の彼女は桐月風香という千也の幼馴染だ。

 俺とは別のクラスだがこのカップルは同じクラスだ、時々流れてくる噂はまあ無視してるほとんどのことがあっているしな。

 千也につながった。


『よっ、文哉どうした?』


「突然だが、お前と桐月の交際について聞きたい」


『本当に突然だな。なんだ彼女でもできたのか?』


 俺に彼女なんてできるわけないから冗談だが妙にうざい。

 こんな性格の奴によく彼女なんてできたもんだな。


「お前ふざけんな。まあ、少し知りたくなっただけだ」


『ふ~ん、まあいい今度文芸部のパソコン見ればいいだけだからな』


 は?ふざけんなよ。

 こいつが付いてこようとしても絶対にパソコン開かないようにしなといけないな。

 警戒はしておこう。


「冗談はいいから教えてくれ」


『ああ、なら今日は――』


 聞いているがこいつらのいちゃつき具合がよく分かった。

 何?俺への嫌がらせか?話だとこいつら授業中までいちゃつてるんだが。

 先生の誰かに密告していくことを決めた。


『まあ、こんぐらいだ』


「ああ、ありがとう。この礼は今度足蹴りで済ませてやる」


『は?なぜ?ふざけ――――』


 俺は無理やり電話を切って書き始めた。

 意外と参考になったため家に帰ってもこれはたくさん書けそうだ。

 しかし、気になるのは本当に赤聖戸が読んでいるのかだ。

 本当にそうなら今にも投稿をストップしたい、ほかの読者には迷惑がかかるが。


「はあ、どうしたものかな」


 いろいろと考えた結果忘れることにした。

 集中できなくなるからな。


 俺は学校である程度書き後は家で書くことにした。

 小説書くのは楽しいが学校来てまでは書きたくないんだよなあ。

 ああ、そういえば結構今日と昨日で書けたしもう一話くらい投稿しておくか。

 俺は結構書けた日は二話投稿することにしている。

 すると廊下で声がした。

 珍しいなここなんか通るやつもいないし第一知られているかも怪しいところだ。

 まあ特に気にすることなく戸締りをしているとふと耳に入ってしまった。


「面白いのに何で人気ないのかな?『天雨』先生の作品」


 は?いやまさか、聞き間違いか同じ名前の作家だろう。

 間違っていなければだがこの声は赤聖戸の声だ。

 俺は、自分の苗字から天と童の、う、を取った名前で『天雨』という名前でやっている。

 昨日のことと今の『天雨』という作家の名前間違っていなければだが赤聖戸は俺の小説をやはり読んでいることになる。

 は?嫌なんだが。

 別にあいつに何かされて嫌なことをされたわけではないが性格が苦手だ。


「あれ?珍しい。さっき二話目投稿されている。今読んじゃおっと」


 あ?俺さっき投稿したが……いやいや偶然が過ぎるだろ。

 俺はもうこのまま帰るつもりだったが廊下に赤聖戸がいるため帰りたくても帰れない。


「へえ、今日は結構進んだんだ。ゆっくり進むのいいと思うけどなあ」


 確かに今日の話は結構進んだがまさかこいつに読まれてるなんてことは……

 俺は絶対に読んでないことを願いたい、と思っている。

 もし仮にだ、こいつが俺の小説を読んでいるのであればいつ知ったんだ?

 俺はこの小説を投稿し始めて半年以上は立っている、それで登録の人数が十人も行かないとさすがに読むやつはいないだろう。

 だとしたら考えられるのは、初投稿からそう経ってない時か?


「ずっと読んでいるけど『天雨』先生に一度でもいいから会ってみたいなあ。たぶんこの学校にいる人みたいだけど」


 これは認めるしかないようだな、赤聖戸は俺の小説を読んでいる。

 しかし、なぜこの学校にいる奴だと……いや、この学校で起きてる出来事なども元に書いているからこの学校の奴にはわかるのかもしれないな。


「あー、面白かった。早く明日にならないかな?続き読みたいなあ」


 出したくねえ、こいつに読めれてるとか一番最悪なんだけど。

 俺は、こいつに読まれるくらいなら投稿しないほうがましだと思ったが部活の活動だしほかの読者にも迷惑がかかると思いやめた。


 赤聖戸が立ち去った後俺は山井先生に鍵を返して帰る予定だったがいつもより返す時間が遅れたため少し怒られた。

 まあ、言っても十分ぐらいだったのであまり怒られなかった。

 ついでに千也と桐月のことも話しておいた。

 山井先生に伝えただけなのにもう全体に広がった、俺もこうならないように気を付けないといけないな。


「帰ったら続き書くか」


 今日はさすがに徹夜するとやばい気がするからいつも通りの時間にやめることにした。

 そろそろ暑くなってくるな、日が落ちるのがだんだんと遅くなり日光が強くなってきて夏に近くなってくると感じる。

 ああ、もしかするとそろっと母さん来るのか?部屋掃除しないとな。

 いつも季節の変わり目に来るから毎回部屋ぐらいは掃除している。


「帰りに掃除道具とか買って帰らないといけないな」


 帰るついでに夕飯と掃除道具をいろいろ買って帰ろう。

 近くのスーパーによっていろいろと買ったがまだ足りないものがあるからめんどくさいが今度ホームセンターに行くことにした。


「も少し品ぞろえ、揃えて――」


 スーパーに愚痴を言っていたら何故か赤聖戸がいた。

 あいつこんなところに来る必要あるのか?見たことないしな。

 俺は夕飯を買うために毎日ここへきているが少なくともあいつが来ているところは見たことがない。

 いや俺と時間が被らなかっただけか?


「夕飯何にしよっかな?」


 あいつ自分で料理できるんだな、てっきりできないと思っていた。

 言っても俺は簡単なものしかできないからこういうのも言える口じゃないかもな。

 小さいころから親の料理の手伝いや一人で家族の分を作ったことはあるがレシピが覚えられず簡単なものしかできない、レシピを改造しながら作るのは得意だが。

 俺は、赤聖戸のことを忘れて家に帰った。


 今日の夕飯は作ろうと思ったがめんどくさくなり結局弁当で済ませることにした。


「いただきます」


 こういう生活していると栄養バランスがひどくなるが……まあ、死なない程度にしとければいいだろう。

 俺は夕飯を食べすぐに執筆し始めた。


「ここ、どうしよう?」


 数話に一回、主人公とヒロインが話す場面があるんだが毎回どういうことを書こうか詰まってしまう。

 こういう時にはいつもの――

 俺は冷蔵庫からエナドリを出した。


「ぷっはぁぁぁ、やっぱこれだよな」


 俺は、いつもとあるエナドリのピンクを飲んでいる。

 これはネットで見ても人気あるよなあ。

 実際人気があってもおかしくない味だしな。


「いろいろな種類や別のエナドリも飲んだがこれだよな」


 他のエナドリもうまいんだがどれを飲んでもこれに戻ってしまう。

 あ、手が止まってる書かないと――

 俺はエナドリを飲みながらも執筆し続けた。


「ああ、もうこんな時間か」


 時計を見ると一時を越していた。


「今日はさすがに寝ないとやばいな」


 まだ執筆することはできたが寝ないとまずいもしかすると授業中寝るかもな。

 俺は電気を消し布団に入った。

 そして明日に向けて寝た。


 3


「ああ、くそもう少し早く寝ていればよかったな」


 体がだるいし頭も痛い。

 こんな状態で学校へ行くのはあれだが完全に俺の生活リズムが乱れているせいだもんな、さすがに行かないといけないな。

 朝飯を食って家を出た。

 もちろん今日は忘れずに投稿しておいた。


 学校へ着くと珍しく瑞樹がいた。


「おはよ!ふみ」


 俺は無視した。

 昨日よりテンション高くなっていないかこいつ。

 無視すると怒ってくるのは分かっているがいい加減かまわないでほしいしめんどくさい。


「ふみ?無視はよくないんじゃないかな」


「いることは分かっていたからいいだろ」


「何を言っているのかな?私も無視したほうがいいのかな?」


「ああ、ぜひともそうしてくれ」


 俺は話していると疲れるし無視してもらっていたほうが楽で助かる。

 こいつと話すことなんて特にないしな。

 そのまま無視して教室へ向かった。


「は?なんでもういるんだ」


 教室に入ると瑞樹がいた。

 俺、瑞樹より先に行ったよな?じゃあ何でここにいるんだ。


「……」


 何もしゃべらない。

 怖っ、無視するのは別にいいんだが、俺より先にいることを話さずにじっとしているのが怖い。

 まあ、何かしらの方法で来たんだろう。

 俺はそのまま無視して席に座った。


「ねえ、無視しないでよ」


 ……すいません、ここに言動を矛盾させた人がいるんですけどどうすればいいんでしょうか?誰か対処方法を――――

 俺はネットに書き込もうとした。


「何してるの?」


「いや、ここに言動を矛盾した人がいるから対象法はとネットに書き込もうと――」


「え?誰のこと?」


 は?こいつ自分のしていることわかっていないみたいなんだがどうすればいい?

 俺はついでにネットへ書き込んだ。

 返信は早かった。


「ん?なになに『無視していたほうがいいのでは?』確かにそうだな」


 俺は瑞樹を無視することにした。

 いやぁ、ネットって便利だ。


「ねえ、ねえってば」


 俺は無視を続けたまま頭の中で小説のことを考えていた。


「ねえ、瑞樹が話しかけてるんだし答えれば」


 俺が小説のこと考えていたら――

 は?なんで赤聖戸から話しかけてくる?やめてくれ。


「なんだ?」


「なんだ?じゃなくて瑞樹が話しかけてるんだから返してあげないの?」


「べつに瑞樹が勝手にやっていることだろう?」


 だって俺は何もしてないのに勝手に話しかけくるからな、無視したっていいだろう。

 俺は心の中でいろいろと考えたが無視することにした。


「ねえ、聞いてるの?……瑞樹こんな奴放っておいて行こう」


 ぐはっ、こいつ椅子蹴ってきやがった。

 蹴りは強く俺が乗っているのにかかわらず結構横に動いた。

 こいつ蹴り強いな、本当に女子か?


「え、でも……」


「いいから、こんな奴と話す理由なんてないでしょ」


 そう言うと瑞樹を連れて離れて行った。

 もうこっちこないでくれ腹が立つ。


 特にそのあと関わってくることはなかった。

 午前中の授業が終わり昼飯をどうしようか悩んでいた。

 まあ、腹減ってないし食わなくてもいいか。


「文哉いるか?飯食おうぜ」


「なんだ?猪高。俺は腹減ってないぞ」


「いいから来いって話したいこともあるしな」


 なんだ話したいことって?

 俺は仕方がなくついていった。

 外の誰もいないベンチへ来た、ここ使う奴いないからな。

 するとパンを渡された。これは感謝しないとな。


「で、話したいことってなんだ?」


「ああ、俺も詳しくは知らんが――」


 猪高の話だと俺が赤聖戸のことを怒らしたことが学年チャットで広がっているらしい。

 情報伝わるの早いな、朝起きたこととはいえそれにしても早い気がする。


「早いな伝わるのが」


「まあ、人気の高い奴の話だからな。その口調から言うとこの話は本当だということか」


 俺はその時のことを話した。

 いうほどたいしたことではないので軽く話しただけだ。


「怖え、人が乗っている椅子が動くってどういうことだよ。男でも少し動いたらいいほうだろう」


「結構勢いあったからな、俺が転んでいてもおかしくはなかった」


 あいつ俺より力あるだろ、俺は蹴っても椅子なんか動かないからな。

 怒らせるのだけはやめておこうと思った、最悪骨が折れるかもしれないからな。


「まあ、怒らせないほうがいいな。俺から言えるのはこれくらいだ」


「ああ、あいつとは関わりたくもないからな」


「そう言えばお前ああいう性格の奴誰でも嫌いだよな」


 あの性格してる奴はめんどくさくて俺は嫌いだ。

 特に何かあったわけではないが赤聖戸だけはほかの奴の倍は嫌いだ。


「他の奴より倍は嫌いだしなぜクラスメイト何だ?ってくらいには嫌いだ」


「赤聖戸と何かあったのか?」


「いや特にない」


「それは……理不尽に嫌いなだけじゃないのか?」


 まあ、確かに何もしてないから嫌いになるとは理不尽きまわりないかもしれないが、今日のことがあるしな。

 今日のことでもう絶対にかかわらないというか関わってきそうなことはしないようにしようと思った。


「まあいいか、話はこれぐ――!っち、こっちへ来い」


「なんだ?」


 猪高が見ている方向を見ると赤聖戸と瑞樹がこっちへ来ているのが見えた。

 最悪のタイミングだな。

 ここから裏を回って校舎に戻ろうと思っても立ち入り禁止になっていて戻ることはできず少し離れたところへ行き二人が離れるのを待つしかなくなった。


「ねえ?文哉と話していて嫌だと思わないの?」


「?そんなことないけど……中学の時までに比べてあまり話さなくなったんだよね」


 確かに俺は中学の時まで陽キャとまではいかないが誰とでも話していた。

 だが、それはその時はそっちのほうが楽だと思ったからだ、本当は一人でいたかったが合わせたほうがいいと思っていた。

 高校になり知っている顔は少なくなり一人暮らしにもなり話さなくてもいいだろうと思い話さなくなっただけだ。


「そうなの?今はそんな感じしないけど……」


「うん、本当にしゃべらなくなったよ」


 猪高が変なものを見るような目でこっちを見てきた。

 なんだその目は……


「本当なのか?考えられんが」


「ああ、本当だ。楽だと思っていたからな」


 ばれるとまずいので小声で話した。

 いやまじかみたいな顔をされても困る。


「それは放っておいていいんじゃない?それともあいつのこと好きなの?」


 は?何言ってんだあいつ。

 瑞樹が俺のこと好き?馬鹿じゃないのかそんなことあるわけないだろ。

 昔からあいつのことは見てきたがそんなそぶりは見せたことすらない。


「え……まあその……」


「どっちなの?その言い方されると気になるんだけど」


「えっと、好きなのかな?」


 いやどっちだよ。

 俺は心の中でツッコミを入れた。

 それはそうと猪高はにや付くのやめないか?いやにや付くというよりにちゃあのほうがあっているのかもしれないな。


「どっちなのそれは……」


「えっと……話していると顔が熱くなりそうだしほかの女子と話していることなんてほとんどないけど少し楽しく話していると嫌だなあとか思うよ」


「私もあまり言えないけどそれは多分恋だよ」


 俺は驚きを隠せないが、女子と話してるところなんてほとんどないけどっていう言葉はどうかと思う。

 しかし、俺はどうすればいい?ここから抜け出すこともできずこのまま聞くのか?俺はなんかの差恥プレイでも受けているのか?

 俺は少し顔が熱くなっていると感じた。


「もういいよね?この話やめよう恥ずかしくなってくるよ」


「まあいいよ。でも今度もう少し聞くかもね」


 そのあとはある程度話して去っていった。


「くっ……ぷっ、そっ、そうかそうか燐賀はやっぱりお前のこと好きなんだな」


「笑うな、俺だって初めて知ったわ」


 驚いたまさか瑞樹が俺のことが好きなんて……

 初めて知ったことに動揺を隠せない。

 というかやっぱりってどういうことだ?


「は?お前まさか気づいていなかったのか。行動から俺はそうなんじゃないかと思っていたがな」


「は?いやいやあの行動のどこにそんなことが――」


 え、ないよな?俺がボッチしてるときに話しかけてきたり、ずっとかまってきたり、これのどこでわかるんだ?

 なぜそう思えるのか疑問に思っていたら――


「好きでもないのにお前みたいなやつに話しかける女子なんかいないだろ」


「そういうもんなのか?それとお前微妙にディスってないか?」


 なんで俺はこうも女子に関してはディスられないといけないのか?

 毎回のようにディスられたりすることに不満を感じた。


「まあこんなことも聞いたし頑張れよ」


「ふざけんなよ。ああ、そうだひとつ聞きたいことがあるんだが……」


 俺は昨日密告した千也たちのことについて何かなかったか聞いた。

 こいつは千也たちと同じクラスだからな何かあったらわかるだろう。


「ん?千也か?…ああ、そういえば何人かの先生に連れていかれていたな。桐月もだが。それがどうした?」


「一人じゃなくて何人も来たのか」


 猪高に昨日密告したことを言った。


「お前結構ひどいことするな」


「そうか?いちゃついていた上に授業中だぞ、密告したほうが面白そうじゃないか?」


 猪高はクソを見るような目で引いていった。

 いや引かないでくれないか?俺そんなひどいことしてないと思うんだが……


「やっぱ結構お前ひでえな」


「いや俺は正しいことをしただけだが?決してくそみたいにいちゃついているのがうざいからとかじゃないし面白そうという興味本心でもないからな」


「本音出てるぞ」


 は?本音じゃないが、まさか小説書くために聞いたがうざくて密告したわけではないぞ決して。

 まあ、軽い気持ちだったんだがこうなるとは思わなかった。

 千也たちに蹴られてもおかしくはないだろうな。


「お前がうざいと思うようなこととかしないほうがいいな」


「あ?だから俺は正しいことをしただけだ」


「すまん、そういうことにしておく」


 こいつもぼろ出したらすぐに面白い方向へ持って行ってやろう。

 少し期待しながら教室へ戻った。


 4


 俺は部室へ向かった。

 あいつ絶対に許さない。

 授業が終わり山井先生のところへ向かう最中歩いていたら後ろから千也から飛び蹴りを食らった。

 あいつ「お前密告したろ」と言って蹴ってきやがった。

 連れていかれたとき何人もの先生に囲まれてずっと説教と質問を食らっていたらしい。

 自業自得としか言いようがないな、まあ桐月には巻き込んでしまって申し訳ないと思っている。

 本当は千也だけにしようと思ったが面白そうと思い巻き込まれてもらった。

 桐月はこんな俺にも優しいから謝ったら「私たちが悪かったんだし、いいよ」と言ってくれた。

 千也には蹴りを入れといた。


「これ小説のネタにできるかもな」


 俺は展開を構成するネタを手に入れた。

 これは意外といいネタかもしれないな。

 俺は部室へ向かいながら考えてみた。


「あれぇ?誰もいないのかな?」


 What?なぜ赤聖戸がいる?

 部室の前で赤聖戸が立っていた。

 なぜここに……いや、何か……もしかして……

 赤聖戸が持っていたのは多分山井先生のまとめるべき資料だろう。

 山井先生は俺にいつも資料を押し付けてくる、そのうえ「これしなかったら廃部ですよ」という脅しまでつけてきて……

 まあ実際山井先生が廃部を止めているおかげでこの部活が残っているもし山井先生がその気になればすぐにでも廃部にすることは簡単だろう、そのため俺はこういう雑用なども受けている。


「しかしどうするかなあ?あいつがいる限りは行きたくないんだが」


 俺がその場から離れよとしたら――


「あれ?なんであんたがここにいるの?」


 っち、見つかったか。

 しかしどうしようか?たまたま通ったことにするか。

 俺はたまたま通ったことにしようとしたが……


「それここの鍵だよね?場所書いてあるし。早く開けてくれない?」


 なんでこの状態でわかるんだよ。

 俺は手で握っていたが指と指の隙間から見えていたみたいだ。

 仕方がなく俺は部室の鍵を開けて中に入った。


「へえ、中ってこうなってるんだ」


「早く帰ってくれ」


 いちいちめんどくさいことをしようとするな。

 は?なぜパソコンが起動している。

 見るとパソコンはスリープモードになっているが電源は入っていた。

 あれが見られたらまずい。

 このパソコンは勝手に山井先生が見たりするのでパスワードはかけてはいけないことになって。


「なんでこんな部室にパソコンが?いいや見よっと」


 ああ、くそっ間に合わなかった。

 どうしようばれるよな?

 俺は一気に絶望へ叩き落された。


「ふ~ん、このサイト使って……あれ?ログインしている?」


 まずいそこ押されたらばれる。


「おい、やめろ」


「え、別にいいじゃん。ちょっとぐらいだし」


 するとカーソルを持って行って……

 仕方がないここは……

 俺は赤聖戸の手を取った。


「何するの?急に手、触ってきて」


「何って開こうとするから」


 そう言うとあきらめたように離れて行った。

 見られなくてよかった。


「な~んてね。えいっ」


 こいつやりやがった。

 するといつもの小説のページが開かれた。


「え、なんで『天雨』の名前が?」


 俺は昨日の自分へ殴りたい気持ちでいっぱいだった。

 赤聖戸はやはりすごく驚いた様子でこっちを見てきた。


「ねえ?これは何?」


 すると『なぜか美少女がいつもついてくるんだけど……どうしたらいい?』の管理画面を見せつけられた。

 言い訳できるはずもないな。


「なんだ?悪いか?」


「いやそうじゃなくてなんであんたがこの小説を書いているの?」


「部活だからな」


 今では趣味みたいな感じだがもともとは部活動として始めたから間違ってはいないだろう。

 しかし、ばれるとはな。

 予想外のことが起こったので動揺している。


「そういうお前もなぜこの小説のことを知っている?」


「だって投稿されてすぐに読んで面白くて多分一番最初に登録もして今まで読んでいるんだもん。知らないわけないじゃん」


 お、おう。赤聖戸、意外と読んでいたんだな。

 というか一番最初ってどれだけ前だよ。

 この小説に登録がされたのは投稿されてから数日だったはずその時はうれしかったのを覚えている。


「まじか、お前だったんだな」


「アクセス歴見てもいい?」


 なぜアクセス歴が見たいんだ?

 本当は見せたくないんだが登録してくれているしな一回ぐらいは見せてやるか。

 俺は管理画面からアクセス歴のページを開いた。


「あっ、あった。ここ見て」


 見ると投稿初日のアクセス歴だった。

 三人に見られていたのか……


「で、これがなんだ」


「この三人の中の一人私だよ」


「は?お前、投稿初日から見ていたのか?」


 うそだろ、投稿初日に見つけるってどんなだよ、それに見る奴なんてほとんどいないしな。

 俺は少しありがたいと思った。


「まさか、会えるなんてね」


「俺もまさか読んでる奴がお前だったなんて思ってもいなかった」


 数日前から知っていたとはいえ初日から見ているなんて思ってもいなかった。

 俺はうれしくなった。


「そっかあ、私にばれたけどどうするの?」


「まあ、しょうがないとしか思っていないな」


 その後も感想などいろいろとこの小説について話し合った。

 まさかこいつとこんなにも話すなんて思ってもいなかったな。


「ありがとう、参考になった」


「ねえ、暇な時たまにここにきていい?」


 こいつにばれる前だったら絶対に拒否していただろうがいろいろと聞きたいこともあるしな。


「ああ、いいぞ」


「ありがと、じゃあね」


 そう言うと帰ってしまった。

 まさかこんなことになるとはな、でもいいこと知れたのかもな。

 心の中で何かかが揺れた。


「今日も頑張るか」


 そしていつも通り小説を書き始めた。

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