さかしま

星野すみれ

帝都壊滅

 少女は空に目を向いて、青空の下に穢れなき「女神」のような者がいる。

「女神」は何も言わずただ淑やかに空で漂っている。

「テンシ?」と少女は思わず囁いた。

周りの人もその天使のことを気づいた。けど皆は黙っていて、息を潜めていた。

見たことのない、聞いたことのない、わかるはずもない。

突然無限の光がその天使の右手に集まっていて、段々膨張してきて、この世の終焉の光となる。

これから何が起こるのが想像できる。

おそらくその天使がこれより「神罰」を下すのであろう。

少女はもうこの16歳の身で大勢の人を殺した、もう何も怖くないと思ってきた。

けれど、この瞬間彼女は何もできず、ただ呆然で空に仰ぐ。身が震えて言葉すらできなかった。

「母さん。」彼女は自分がもうすぐ亡くなった母のところに行くと思った

「姉様、伏せて!」彼女の後ろからもう一人の少女が叫んできた。

ただの一瞬で、彼女の王国と野望は全て灰塵になった。

大地は焼かれ、灰は天を塞ぎ、日光すら見えなくなった

瓦礫と死体とかあふれていて、まだ生きてる人の悲鳴を上げってまさに地獄そのものだった

そして、彼女はまだ生きていた、また立ち上がっていた。

「あっ、貴女に助けられるの案外だな。愚かな妹よ。」

父、兄もう死んだ今これからこの国はどこに行くのだろう

そう考えて、少女は胸の中にある決意をした。

「自分でこの帝国の行先を決める」と

「あの天使を倒す」と

復讐のためではない、怒りの感情も含めていない。

ただ綺麗で美しいと思っていた。

自分のものにして欲しいと思っていた。

けれどあれは人の叡智人の力では絶対戦わない敵だった。ならばどうする?

ここで諦めるのか?違う!違うんだ!

だからこそ、あらゆるの手段を尽くして作戦を考えべきだ。

まずやるべきことは秩序の維持、兄と父が亡くなった今、自分はもうこの王国での第一継承者であるが、影に潜んでる魑魅魍魎たちは必ず何かやってくるのだろう、権力の争いは人類の歴史より長く古い存在だ。

だが今の皇女の身回りに衛兵もいない、身の安全も保障できない。

「国王陛下、第三皇女殿下!ご無事ですか!」真っ黒な遠くから騎兵隊の馬蹄の響きが聞こえてきた。

幸いなことだ。ここに迫ってきたのは近衛軍第七中隊の騎士長ブリジットだ。

彼女が一年前、王都の暴乱を制圧するためになりたてた直属部隊である。

「お前らこそ、無事でよかった。父と兄はもう。」

「エリシカ殿下、ご判断を」

言うこともない、景色が晴れた時、エリシカ皇女は馬に乗って軍営の方に走った

おそらく、これから数日間はこの王都は更なる地獄になっていくのだろう。


酸素不足のせいか、しばらくの間でエリシカは酷い目眩を感じて、動かなくなった。

エリシカは手綱をブリジットに渡して彼女が乗れと命じた。

途中でエリシカはずっとブリジットを抱いて、その背中に寄りかかっている。そして母親のことを思い出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

さかしま 星野すみれ @Sumire44

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ