第61話 会いに来て

 



「今日もかわいいですよソフィア様」


 ルヴァイス様のお仕事を手伝うようになってもう半年。

 この王宮にきてから一年とちょっとたつ。

 私ももう16歳になった。

 今日は他領地への視察の日。

 かわいい緑いろのドレスを着てルヴァイス様と馬車に乗ってお出かけなの。

 ルヴァイス様やテオさん、研究所の人たちと、ほか領地でこっそり育ててる畑を見に行くんだ。


「おーかわいいな恰好だなソフィアちゃん!」


 王宮の外にいくと、ジャイルさんが誉めてくれた。


『クレアさんが選んでくれたの』


「ソフィア様は何を着ても似合いますから選びがいがありますね」


 クレアさんがお世辞を言ってくれる。

 ルヴァイス様ほめてくれるかな?

 そんなことを考えながらキュイを肩にのせて帽子をかぶったら


「用意はできたか、ソフィア」


 って、お外用のマントに身を包んだルヴァイス様が私たちと合流した。


「あー」


 ルヴァイス様!!私は嬉しくてルヴァイス様に近寄ると、ひょいって抱き上げてくれる。

 ルヴァイス様は一時は立つのも難しいくらい体力が落ちちゃったけど今はだいぶ戻ってきた。

 それでもやっぱり病気前のルヴァイス様と比べるとだいぶ細い。

 忙しくて体力をつけている時間がないって言っていたけど大丈夫かな。


『大丈夫?疲れない?』


 私が聞くとルヴァイス様が笑って、


「そなたを抱き上げられないほど弱ってはいない」


 と、髪の毛を手に取るとキスをしてくれる。

 それがうれしくて私はルヴァイス様に抱き着いた。


 今日ははじめてルヴァイス様の婚約者としての同行視察。

 宮殿以外のお仕事なんだ。ルヴァイス様の役にたてる。

 今までは守られるばかりだったけれど、これからはちゃんとルヴァイス様を守らなきゃ。


 だって婚約者だもの。夫婦は支えあうって本に書いてあったよ。


 それにしても――。


 私は馬車に揺られながら外を見た。


 レイゼルさんいつ会いにきてくれるのかな。


 あれからレイゼルさんの手掛かりは何もつかめていない。


 残っていたはずの動物の足跡もいつの間にか消えてしまった。


 ルヴァイス様のエリクサーを作るとき、レイゼルさんの声が聞こえた気がしたけれど……それもよく思い出せない。


 でもなんとなく、レイゼルさんは生きていて、私のことを守っていてくれる気がするんだ。


 もう少しで夢がかなうよ、レイゼルさん。

 だから――会いにきてくれると嬉しいな。


 私はそう思いながら空を見上げた。



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