第4話 不思議な力



「だいぶよくなりましたよ。ソフィア様」


 私を助けてくれた男の人、レイゼルさんがそう言いながら私の包帯を今日も新しいものにかえてくれた。

 あれから10日たって、傷は驚くほどよくなっていた。

 レイゼルさんの薬と魔法のおかげだと思う。

 レイゼルさんはすごいんだよ、薬を作れたり回復魔法が使えるの。

 焼きただれた肌がほんのりピンクになって、焼けた後もだいぶ消えて来た。


 痛みも全然なくなったんだ。


「あー」


 って言うと、レイゼルさんがにっこり笑ってくれる。

 声はやっぱりまだ出ないけれど、でももう痛みはないよ。


「ソフィア様、傷が治った事は内密にお願いします。

 もしこれ程回復していると神殿に知られてしまうと、嫌がらせをしてくる可能性が高いので」


 私の包帯を変えながらレイゼルさんが言うの。


 うん。そうだね。お母さまもデイジアも私が大嫌い。

 きっとあの酷い火傷のまま一生苦しむ事を望んでる。

 私は頷きながら全身に包帯を巻くの。治ったのがばれないように。


 でもすごい。こんな傷治せるなんて聞いた事ないよ。


『どうしてこんなにすぐ傷を治せたの?』


 私が紙に書いて尋ねたら、レイゼルさん笑って、


「実は少々不思議な力をもっていまして。このことは神殿に秘密にしております。

 ですからこのことはくれぐれも他言無用で」


 って、しーってやるから私はうんうん頷いた。


 でも何でこんなに不思議な力をもっているの?って聞いたらレイゼルさんが悲しそうに笑って、


「実は私も自分の生い立ちがわからない状態でして。

 記憶をなくしてさ迷っていたところ神殿に保護されました。

 ……記憶はいまだ取り戻せません。

 ですが、私は昔から不思議な力が使えました。傷を治せるのもその力の一つです。

 神殿の者でもここまで短時間にあのような火傷を治す事ができるものは誰一人いないでしょう。

 この力の事は私と、ソフィア様以外知りません。

 傷がここまで治せると思っていなかったがゆえに、神殿は私に貴方の世話をさせたのだと思います。

 ですから傷が治っても、治らないふりをしなければいけません。

 大変かと思いますが……お願いできますか?」


『うん!大丈夫だよ!ずーっと内緒にできる』


 私が紙に書いてレイゼルさんに見せると、レイゼルさんが笑ってくれた。


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