第27話 ほのぼのギルドホーム完成!!

 1週間の間、のの花は一生懸命に働いた。

 土地を整地し、資材を加工し、ギルドホームを建て、家具を造り……。

 そして今ここに、「おとぎの国」のギルドホーム完成である。


「完っ成っ!!!!!」


 玄関の外側に立ち、のの花が両手を突き上げた。

 花音たちがねぎらいの言葉を掛ける。


「お疲れ様、ユノ」

「ユノちゃんお疲れ様っ!!」

「頑張ったわね~、ユノちゃん」

「お疲れ……様です……」

「ああ、よく頑張ってたぜ、ユノ」


 のの花は「ありがとうございます」と頭を下げた。


「みなさんのお手伝いのおかげです」


 いくら大工も鍛冶屋も木こりもこなせるのの花とはいえ、もし1人だったら膨大な作業を1週間で完了できていない。

 冒険職のメンバーは素材集めや買い出し、市民職のリュウは金属の加工で建設に貢献した。

 そうして出来上がったギルドホームは、まるで貴族の屋敷のような見た目と規模だ。


「ねえユノ!!早く中見せてよ!!」


 花音がわくわくで待ちきれないというそぶりを見せる。

 のの花は笑顔で頷き、ゆっくりと木製の扉を開けた。


「「「「「おぉぉぉぉ~」」」」」


 玄関だけで、花音たちから感嘆の声が上がる。

 6人が靴を置くには十分すぎる大きさの靴箱と、出かける前にチェックする用の全身鏡が設置されていた。

 靴箱の上には、温かさを感じさせるライトが3つ置かれていて、それが優しく玄関を照らしている。

 色はピンク、水色、黄色の3色。どれもが淡いパステルカラーだ。


「これ、私たちが捕まえてきたやつ?」


 黄色のライトを手に取って、サクラが聞いた。


「そうですよ~。ほわほわ蛍から作ったライトです」


 ほわほわ蛍は、サクラと花音が捕まえてきたSSO内に生息する虫の一種だ。

 モンスターではないため、攻撃はしてこないし冒険職でも生きたまま捕まえられる。


「さあさあ、どうぞ~」


 のの花が入ってすぐのドアを開け、みんなを招き入れる。

 ドアの向こう側は共用のリビングスペースだ。


「あ……あの光は……」


 グレンが天井に光るシャンデリアを指差した。

 その輝きは、雪山で見た一際目を引く雪煌石と同じものだ。


「雪煌石を加工したものですよ。グレンさんが雪竜を倒してくれたおかげで、素敵なシャンデリアが出来ました。ちなみに加工はリュウさんが」

「素敵です……。本当に……みんなで作ったんですね……」

「そうですよ~」


 さらにのの花は、キッチン・バスルーム・2階にある個室・バルコニーなどを案内した。

 どこも、淡くファンシーな色合いでまとめられている。

 カーペットやベッドなど要所要所で取り入れられたモフモフも含めて、全部のの花の好みだ。

 幸い、女子の多い「おとぎの国」では大層評判が良かった。

 念のために言っておくと、決してリュウがこれを嫌がっている訳ではない。


 一通りの案内が終わり、全員リビングに戻ってきた。

 リビングの中央に大きな机があり、それをぐるっと囲むように椅子が並べられている。

 それぞれ好きな場所に座ったところで、唯一立っているのの花が話を始める。


「ということで、まずはみなさんお疲れ様でした!!今日からここが、私たち『おとぎの国』のホームになります!!」


 のの花が拍手をすると、みんなも、もう一度拍手をして自分たちをねぎらった。


「ギルドホームが完成して必要なものが揃ったところで、今日は『おとぎの国』の方針を決めていきたいと思います。例えば規模。もっとメンバーを誘って大・中規模ギルドを目指すのか、現状のメンバーのみにして小規模ギルドとして活動するのか……とかです」


 よどみなく話すのの花を見て、サクラが花音に耳打ちする。


「ユノちゃん、だいぶギルマスっぽくなったわね」

「リュウさんに、VRMMOの何たるかを叩き込まれたみたいですよ」

「なるほど、それにしても自信いっぱいって感じ」

「それは同意です」


 のの花はみんなの顔を一度見まわしてから言った。


「ギルドの規模に関して、何か意見はありますか?」

「はい……」


 手を挙げたのはグレンだ。


「私はこのまま……少数精鋭でいくのが……いいと思います……。」

「私も賛成だわ」


 グレンの意見に、サクラも賛同した。


「今から新たなメンバーを集めるのは大変だし、戦力的には大規模ギルドにも引けを取っていないはず。大規模だと統制も取りづらくなるし、このメンバーでほのぼのやってけたらいいんじゃないかしら」

「俺もサクラに同意だな。あと2、3人は加えてもいい気がするが、掲示板なんかでの大規模な募集はやめていいだろう」


 初心者であるのの花にとって、グレン、サクラ、リュウというベテランゲーマーの意見は貴重だ。

 花音とアイリンも同意したので、「おとぎの国」は小規模ギルドとして運営していくことになった。


「あとは……今後の活動予定とかですね。ただ近くにイベントがある訳でもないので、各自レベルアップに努めるという感じでいいですか?」

「それについてなんだが、ちょっといいか?」


 リュウは席を立つと、のの花の背後にあるモニターのスイッチを入れた。

 その画面に、第一層全体の地図が映る。

 のの花は、みんながモニターを見れるように自分も座った。


「ちょうど、この辺りだな」


 リュウは第一層の西側、以前にのの花が攻略したゴブリンのダンジョンがある森を指差す。


「この辺りに、めちゃくちゃヤバいモンスターが出る隠しクエストがあるらしい。どうやら敵がかなり強いらしく、今までのクリア人数は0だ」

「誰もクリアしてないってことですか?」

「そうだ。どうだろう、ここに挑んでみないか?」

「私はいいと思います」


 そしてのの花が後ろを振り返ると、みんな「やりたいやりたい!!」という顔をしていた。

 未クリアのクエストと聞いて逆にクリアする気が出てくるあたり、このギルドはかなり異常と言える。

 まあ、それに恥じない戦力なのだが。


「決まりだな。早速出発するか?」


 リュウの問いかけに、のの花はやる気MAXモードの表情で頷いた。

 そして立ち上がり、ギルドマスターらしく締める。


「ではみなさん!!未踏破の隠しクエストへレッツゴー!!」

「「「「「レッツゴー!!」」」」」


 楽し気に準備を始める、やる気満々のメンバーたち。


 その頃運営は、グレンがのの花のギルドに入ったことを確認して、完全にやる気をなくしていた。

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