第23話 ほのぼの新メンバー加入

「ということで!!私たちのギルドを見学に来てくれた……えっと……」

「どうしたの?」

「えっと……」


 黒ローブさんを「ドラゴンアーモリー」に連れて来たはいいものの、まだ名前を聞いていなかったことに気付く。


「あの、自己紹介してもらってもいいですか?」


 のの花がお願いすると、黒ローブさんは小さく頷いた。


「ええと……○×△@□◇%&$#……」


 恐ろしく声が小さい。

 誰も聞き取れず、店内に微妙な雰囲気が流れる。


「あの、もうちょっと大きな声でお願いしてもいいですか?すいません」


 黒ローブさんが人付き合いの得意なタイプでないことは、のの花もなんとなく察している。

 出来るだけ優しく、出来るだけ笑顔で言った。


「すみません。聞こえなかったですよね……」


 わずかに大きくなった声が、申し訳なさそうに響いた。


「ゆっくりでいいですよ」


 サクラからも優しく声を掛けられ、黒ローブさんが一度深呼吸する。

 そして今度はギリギリながら聞こえる声で自己紹介した。


「えっと……グ……グレ……グレンといいます……。職業は……剣士……です……。えっと……ユノさんに誘われて……見学……来ました……。よろしく……お願いします……」

「グレンって、まさかあのグレンか?俺が知ってるその名前は、第1回イベント1位の激強プレイヤーなんだが」

「あ……それ……私です……」


 ずっと被っていたフードを取ると、確かにそこにはあのイケメン剣士の顔があった。


「「「「え……えええええええ!?」」」」


 全員が驚きの声を上げる。

 グレンは恥ずかしくなったのか、「はうう……」と声を漏らして再びフードを被ってしまった。


「グレンって女だったのかよ……」

「あう……すみません……」

「いや、謝るようなことじゃねえよ。勘違いしてたのはこっちだし。何と言うか、イメージが違いすぎたんだ」

「で、ですよね……」


 話を聞いてみると、素のグレンは人見知りで恥ずかしがり屋の女の子らしい。

 ただゲームで戦っている時だけは、まるで二重人格のように別人となるのだ。

 彼女のようなトッププレイヤーが未だにギルドへ所属していないのは、ひとえに極度の人見知りが原因だった。


「グレンさんみたいなトッププレイヤーが入ってくれるなら、それはもちろん嬉しいわ。でもいいの?うちのギルドマスターはユノに決まってるし、グレンさんならギルマスの実力はあると思うけど」

「私は……ギルドに入れるだけでありがたいです……。その……ギルマスをやるような……性格ではないので……。あ……でも……入れていただけるのなら……頑張って戦力になります……」

「まあ、戦力としては十分すぎますよ。私はいいと思うな。ね、ユノ?」

「うん!!私もぜひ、グレンさんに入ってほしいな!!」

「俺も賛成だ」


 ということで、第1回イベント1位、2位、5位が所属する鬼のようなギルドが誕生した。


「えげつない戦力アップだが、数は力になる。最低でもあと3人は欲しいな」


 リュウが言うと、グレンが手を挙げた。

 これからはギルドメンバーになるということで、もうフードは被っていない。


「あの……1人なら……心当たりがあります……。私の妹なんですが……呼んでもいいですか……?」

「どうだ?ギルマス」


 リュウに振られたのの花がグーサインを出す。

 グレンがメッセージを送ると、5分ほどで妹さんがやってきた。


「はじめましてっ!!姉ちゃんの妹のアイリンで~す!!職業は回復士です!!よろしくお願いしますっ!!」


 グレンの妹は、姉と正反対の快活少女だった。

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