第6話 ほのぼの【全能】獲得

「っておい、進化コイン使ったのかよ!!」


 リュウが慌ててカウンターから身を乗り出す。


「ユノちゃん、SSR以上のスキル持ってたの?」


 サクラも驚いた様子だ。

 リュウとサクラに、花音がのの花のスキル【雑用】について説明する。

 すると2人は、呆然として声を揃えた。


「「何だ、そのスキル……」」


 リュウががっくりと肩を落として言った。


「もったいねぇ……いくらHRスキルとは言っても、さすがに弱すぎんだろ。とっとけばよかったのに……。てか、そもそも何でそんなスキルがHRなんだ?」

「どう考えても、HRの内容じゃないわよね」


 サクラもリュウに同意した。

 花音が慌ててとりなすように言う。


「ま、まあ。ほら、外れスキル大覚醒!!なんてこともありますし?さ、ユノ、どう進化したか見てみようよ」

「う、うん」


 花音に急かされ、のの花がステータス画面を開く。

 スキル欄に、確かに1つ初見のスキルがあった。


「これか。えっと、スキル名は……【全能】?」


【全能】。

 何とも強そうな名前に、花音たちの視線がのの花へ釘付けになる。


「レアは……UR《ユニークレア》?こんなのあったっけ?」

「「UR⁉」」


 再び、サクラとリュウの声が重なった。

 リュウが、ハイテンションで身振り手振りを交えながら解説する。


「URってのは、HRだのSSRだのとは別次元にあるスキルだ。HRまでのスキルは条件を満たせば必ず取得できるが、URはその名の通り特有のスキル。SSO内に2つと無い、一点物のスキルだぜ。でも、HRがURに覚醒するなんて聞いたことねぇ」

「そ、それって……!!」


 花音が興奮して声を上げる。


「本当に外れスキルが覚醒しちゃったってこと?」

「いや、まだ分からねぇ。具体的なスキルの内容を見てみないことには……」


 3人がのの花の方を見ると、ステータスを見て完全に固まっていた。


「えっと……ユノ?スキルの効果は?」


 もしかして、そうでもなかったのか。

 まあ、元の【雑用】があの効果だしな……。

 そんなことを考えながら花音が聞くと、のの花はぱっと顔を上げて言った。


「これは!!」

「「「これは?」」」


 興味津々な様子で、3人が身を乗り出す。


「強……」

「「「つ、つよ?」」」


 のの花に焦らされて、3人は今にも崩れ落ちそうだ。


「……いのか、よく分かんない!!」

「「「何だよ!!」」」


 耐えきれず、3人が崩れ落ちた。

 というより、芸人みたくずっこけた。


「はあ、焦らしやがって。もういい。ステータス見せてくれ」

「すみませんすみません。あ、私のIDこれです」

「そういえば、私もユノちゃんたちとフレンドじゃなかったわね」


 サクラ、リュウとそれぞれフレンド登録を済ませる。

 リュウは早速フレンド欄を開き、のの花のステータスを閲覧した。


「えっと?これか。URスキル【全能】。効果は『常時、全ステータスを20%上昇させる。また、全ジョブの適正を獲得する』……か」


 10秒ほど沈黙が流れたのち、サクラとリュウ、花音がまたしても声を揃えた。


「「「これ、強すぎる!!!」」」


 3人から一気に見つめられ、一瞬きょとんとするのの花。

 しかし、どうやら【全能】はめっちゃ強いらしいと認識し、「えへっ」と笑った。


「わ~い、強いスキル~」

「いや、普通はそんなのんきにしてられねえぞ……。ユノは、このスキルの価値分かってんのか?」

「すいません。私たち初心者なもんで……」


 なぜかリュウに謝ってしまう花音であった。

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