第4話 ほのぼのプレイヤー間交流
「ふう、結構集まったんじゃない?まだ服にするには足りなさそうだけど」
目の前にできたモフモフの山を見て、花音は汗をぬぐった。
2時間ほどウサギを中心にモンスターを狩りまくり、2人のレベルも9まで上がった。
レベルが上がる度にステータスへ5ポイントが振れたので、ステータスも上昇している。
のの花は全体をバランスよく上げ、花音はATAとDEX、LUCを中心に上げた。
「ちょっと疲れたし、いったん街に戻ろっか」
「待って!!もう1体出てきた!!」
毛皮をアイテムBOXに収納したのの花の後ろから、ウサギがぴょこっと飛び出す。
花音がすかさず弓矢を構え、確実に射抜いた。
例によって、モフモフの毛皮が後に残る。
「さすが~。ユカ、めっちゃ上手くなったね」
「えへへ、ありがと」
実際、この短時間で花音の射撃精度はグンと上がっていた。
もしかしたら、ちょっとした才能があったのかもしれない。
「毛皮1枚追加っと」
のの花が毛皮を拾い上げると、その下には何やらきらりと光るものがあった。
500円玉より一回り大きいくらいの、金色のコインだ。
「何だろ、これ」
のの花はそのコインも拾うと、花音に渡した。
「これ、さっきのウサギが落としたみたい。ユカが倒したから、ユカにあげるよ」
「お、ありがと。えっと、なになに……?」
花音がコインをタップすると、詳細な情報が表示された。
《スキル進化コイン・金》
効果:SSR以上のスキルを進化させることができる。
「これもしかして、めちゃくちゃレアアイテムかも」
「ね、金ピカだしね」
「いや、見た目の問題じゃなくて。効果がなかなかにえぐい」
「本当に?使ってみる?」
「いや、激レアだとしたら無駄遣いしない方がいいかな。街に戻って、アイテムショップかなんかで聞いてみよう」
2人は再び鼻歌を歌いながら、元の街へ戻っていった。
SSOには、料理人というジョブもある。
料理人を選んだプレイヤーは、街の中で思い思いに飲食店を営んでいる。
のの花がどうしても食べたいと言ったので、2人はとある喫茶店に入った。
初期装備として、SSOの通貨であるゴールドが配られている。
ケーキとドリンクくらいなら、余裕で楽しめるだろう。
「いらっしゃいませ~。何名様ですか?」
この店の制服と思われる衣装に身を包んだ女性店員が、にこやかに迎えてくれる。
「2人です!!」
「あ~、お2人様ですか~」
のの花が答えると、女性店員は困ったように店内を見回した。
「あいにく、店内がかなり混雑しておりまして……。2名様が一緒に座れる席がご用意できません。少しお待ちいただくしか……」
「あ、そうなんですか……」
のの花が残念そうに言うと、近くのテーブル席に座っていた女性が手を挙げた。
「2人が嫌じゃなければ、私は相席でもいいよ~」
長い黒髪を後ろで束ね、椅子には長剣がたてかけてある。
クールな見た目だが、目はとっても優しそうだ。
「いいよね?ユカ?」
「うん」
という訳で、初めてのプレイヤー間交流である。
「私はサクラっていうの。あなたたちは?」
「私はユカです」
「私はユノです!!」
ケーキとジュースを待つ間、3人は互いに自己紹介した。
女性プレイヤーはサクラといい、それなりに高ランクの剣士らしい。
「2人は、今日からSSOを始めたんだ」
「そうなんです。ちょうど初討伐に行って、街に戻ってきたところです」
「そう。どう?このゲームは楽しい?」
「楽しいです!!モフモフでもう最高です!!」
「モフモフ……?」
のの花の言葉に、サクラが怪訝な顔をする。
「あ、ユノはウサギの毛皮が気に入ったみたいです。さっき、めっちゃ集めてたんで」
「ああ、スノーラビットのことね。確かにアレ、真っ白でかわいいわよね」
「ですよね!!」
モフモフに共感してくれる人を見つけ、のの花のテンションが高い。
そんなのの花をほほえましく思いながら、花音は先ほどゲットした《スキル進化コイン・金》を取り出した。
「サクラさんって、このゲーム結構やってるんですよね?」
「ええ、そうよ」
「じゃあ、このアイテムがどれくらいレアかって分かりますか?」
花音がコインを見せると、サクラは驚いて顔色を変えた。
「これ、どうしたの?」
「ウサギを倒したら、毛皮と一緒にドロップしたんです」
「スノーラビットから……。これ、すごくレアなアイテムよ。価格的なことは分からないけど、ドロップ率はすんごく低かったはず」
「やっぱり、そうなんですか」
初日から、激レアアイテムをゲットできたようだ。
のの花と花音の顔がぱあっと明るくなった。
「相席になったのも何かの縁だし、私の知り合いがやってる店を紹介してあげよっか?そいつは鍛冶屋だから武器を中心に商売やってるけど、アイテムの買取とかもやってるから」
「ぜひ、お願いします!!」
「うん。まあ、そのコインは売らない方がいいと思うけど、今日雑魚狩って落ちたアイテムとかもあるでしょ?」
「はい!!」
着々と人脈を築いていく2人だった。
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