#183 メイカの火に当たりながら
ランタンの火が灯り、二人の男女と狭い屋内を照らしている。
あなたはそのランタンを手に取り、間近で眺める。
メイカケイの火が、あたかも彼女の人生の様々な苦楽を映し出すかのように、しっとりと静かに立ちのぼっている。その火は苦難に見合う幸楽を得たのだろうか?
――明らかに、そうではない。命の火の恵は、そのような見合いの勘定とは無縁のところで気高く灯り、あなたを暖かく照らしている。
あなたはランタンをそっと脇に置くと、メイカケイに言う。
「メイカケイ。俺の昨日の言動は、後先を考えない、無思慮なものだった。しなやかではなかった…… 俺は明日朝、あんたと共に農場へ行き、農場の皆に和解を請いたい。俺がするべきことは、何でもする」
「そのことは、もういい」メイカはあなたの手を握り、言う。「これは俺の、俺だけのことだよ。お前はこれ以上、俺と農場には関わるな。お前は旅を続けなきゃあ、ならねえんだよ。俺の火も、抱えていってな」
老婆はランタンの火を消し、自らの寝床についた。
「おやすみ、エイカ」
「……おやすみ、メイカ」
あなたもまた、寝床についた。
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