第6話 気づいてくれた?私の気持ち
私と黒崎くんがみんなのところへ戻ると少し遠目に赤井くんとなっちゃんの姿が目に入った。
なにやら神妙な面持ちで…。
私が声をかけようとしたと同時に赤井くんの声が耳に入ってきた。
「青野さんが好きなんだ…ずっと前から…ぼくとつきあってほしい…。」
私は自分の目を…耳を疑った…。
なんとなくは心のどこかでは気づいていたこと…認めるのが怖かったこと…。
でも…まさか…自分の片想いの相手の告白を今、まさに目の当たりにするなんて…。
「何いってるの…?赤井くんのことが好きなのは…ゆうちゃんなんだよ…。」
となっちゃんが動揺しながら赤井くんに必死で話しかけている。
「知ってる…なんとなくは気づいてた…。」
「だったらなんで?」
「白瀬さんのことは好きだよ…でもそれは友達としてだから…。きみへの好きとはちがうんだ…。」
私は堂々とした赤井くんの告白にもちろんショックは隠せなかった…。
だけど…なぜかもやもやしていた気持ちがすーっと晴れていくのを感じていた…。
失恋…。
告白もせず…。
と同時に親友の恋の成就を心から願いたいと思った瞬間だった!
私の足は自然と2人の方へと向いていた。
「ゆうちゃん!」
なっちゃんは驚いて…焦りで体が固まっている。
赤井くんもそう…。
「はい!」
といってなっちゃんと赤井くんにペットボトルの水を差し出した。
「よかったじゃない!なっちゃん!」
「なんでそんなこと…?ゆうちゃん、赤井くんが好きなんでしょ?なんですぐにあきらめられんの?」
となっちゃんが声を少しあらげて言った。
「それは…赤井くんが好きだからだよ…赤井くんはちゃんとはっきり言ってくれた…。なっちゃんのために…。」
「白瀬さん…。」と赤井くんが切ない表情で私を見る。
「誰だって…好きな人には幸せになってもらいたい…たとえそれが私じゃなくても…。」
「ゆうちゃん…。」
というなりなっちゃんが大粒の涙をこぼした…。
「ごめん…。私、赤井くんの告白…嫌じゃなかった…それどころか嬉しかった自分がいて嫌だった。ずっと成績でライバル視してたのは私なのに…なぜか…いつからか私も目で赤井くんを追ってた…。」
「なっちゃん…。」
なっちゃんは私の気持ちを知ってしまってからは…自分の気持ちを知られるのが怖くて封印したらしい。
今の私との関係が壊れるのが嫌だったから…。
私にいつも気を遣ってしんどかっただろう…苦しかっただろう…。
「だったらもう、何も問題ないじゃない!私との関係も壊れないし、赤井くんとも両想いだし!」
泣いてる顔をあげ、なっちゃんがいった。
「ほんとにいいの?」
「もちろん!好きな人の好きな人が…自分の親友なんて素敵じゃない?」
と精一杯の笑顔でいった。
「白瀬さん…ありがとう。」
と赤井くんがなっちゃんの方へ向きをかえ…再び…
「青野さん、もう一度いう…僕とつきあって下さい!」
なっちゃんも涙を拭いながら真剣なまなざしで…
「はい…。」と答えた。
私は心から2人のことを喜んでるし…よかったと思っているのに…なんでだろう…心にぽっかり穴があいたような感じがした。
「ん、これ…。」
といって一部始終をみていた黒崎くんがペットボトルを私にくれる。
「あ、ありがとう。」
水を受け取ったと同時に、奥でさっきの買ったものを2人仲良く食べていたみゆちゃんと京也くんが私たちの方へやってきた。
「飲み物ありがとな!」と京也くん。
「ごめんね…ありがと!」とみゆちゃん。
といつもの感じでペットボトルを黒崎くんから受け取っていた。
なんか…この変わらない感じに…今の私の心は救われた感じがした…。
「そろそろ花火見えるとこ行こうぜ!」
と京也くんがみんなを誘い花火大会がある河原の方へ歩き出す。
みんなもそれにつられてゆっくり歩いていく。
周りには花火大会に向かうたくさんの人達が一緒に歩いていく。
みゆちゃんと京也くん…。
なっちゃんと赤井くん…。
みんな…楽しそう…。
どっちも私の理想のカップル…ほんとにそう思える!
私は右隣、少し前を歩く黒崎くんをみた。
黒崎くん…どう思っただろう…。
バカだって笑う?
失恋女にかける言葉なんてない…か。
ほんと無表情だし何考えてんのかわかんないや…。
帰りたい…。
そんな中…私の両足はまるで足かせをつけられているかのように…重い…。
鼻緒ですれて痛いから?
ちがう…私…本当は……。
その時…
「白瀬はまちがってねえよ…。」
私の足は止まっていた…。
えっ何?今なんて?
私…まちがってない?
よかった…。
この一言…たったこの一言を…私は待っていたのかもしれない…。
黒崎くんが立ち止まり、みんなも振り向く。
「どうしたの?ゆうちゃん。」とみゆちゃんがきょとんとした表情でいう。
「私…ここで帰るね。じつは父さんにこの時間に帰るように言われてたの…始めにいっちゃうとしらけちゃうでしょ?」
みんなは驚き、なっちゃんはうかない表情をしていたが周りは人が多いこともありみんな納得してくれた。
「ごめんね、みんな!花火楽しんできてね!」
と私はみんなが向かう方向に手をふり、笑顔で見送った。
少し目をそらした黒崎くんにも…。
そうして、私はみんなとは反対方向へと歩き出した。
人の流れに逆らって…。
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