第17話 : 首都防衛戦〜異世界人〜

——— 聖王国の首都“リンベル。そして、その北に位置する街”グライフヴァルト“。

 その中間で、魔王軍推定5万と聖王国軍4万の首都防衛戦が開始した。


 開始早々に、総司令ティグリスの突撃で前線を押し込む事に成功。

左側を守る第三軍と五郎たち三人も奮闘し、聖王国軍は、戦局を有利に進めた。


 しかし、左側の戦場に一人の魔族が出現する....


 「カルディア副官!失礼します!グスタフ軍団長から、左側に魔族出現との事です!」


 「やはり、出たか......承知した。」


 (今は、ティグリス団長に中央を行けるところまで押し上げてもらうしかないな。問題は、あと何人来るか...)



 左の戦場では、五郎と第三軍副団長のダルシードが魔族と戦っていた。


 ダルシードの長槍の高速の突き、そして五郎の舞うような剣技、この二人の攻撃を二本の短剣で捌く魔族。


 「ダルシードさん!」


 五郎は、そう言うと少し距離を取る。


 ダルシードは、それだけで五郎が何をしたいのか理解したのか、長槍を突く速度を上げる。


 魔族は、防戦一方であるが、致命傷は避けている。


 「音速衝撃波ソニックウェーブ!」


 五郎がスキルを使う。剣を振ると衝撃波に変わり、衝撃の刃となって飛んでいくというスキルである。MPがなくなるまで使用できる。


 五郎が、放った衝撃の刃が、魔族に目掛けて飛んでいく。


 「ちっ。うざったいなぁ。」


 魔族は、舌打ちをすると身体を反って、五郎の攻撃を避ける。


 ダルシードは、魔族が体勢が崩れたのを見ると、即座に槍を叩き込む。


 魔族は、流石に避けられないと踏んでか、腕でダルシードの槍を受ける。


 槍が魔族の右腕を貫通する。魔族は、右腕を力まかせに槍から引き抜くと、何事もなかったような表情でダルシードの懐へ潜り込む。


 そして短剣をダルシードの腹へと突き刺そうとする。


 だが、ダルシードは力一杯に身体を捻り、魔族の短剣を避ける。少し短剣の刃がかすった程度であった。


 五郎は、もう一度音速衝撃波ソニックウェーブを魔族に飛ばし、同時に間合いを詰め、魔族へと斬りかかる。


 五郎の剣が、魔族の身体を斬りつける。

傷は浅かったようで、魔族は倒れないが、五郎は、そこからもう一発、近距離から音速衝撃波ソニックウェーブを使い、魔族を斬りつけた。


 「ぐはっ!」


 魔族の身体を斬りつける。身体からは、血が吹き出し、今度はダメージを与えられている。


 「ソージ、やられているのかしら?」


 魔族の後方から、背中に弓矢を背負う女性の魔族が現れた。角は、戦っていた魔族と違い、一本の角が頭の中心から生えている。


 「シキブ。負けてねえよ....それにしてもお前まで出てきたのか?」


 「ええ。あちらさんは、想像以上に対応が速くて、結構押されちゃっているのよ。」


 女の魔族は、そう言いながら弓矢を引いた。

いつの間にか、弓矢を構えていた。そして放たれた弓矢は、風を切る音を出しながらダルシードへと飛んでいく。


 「ダルシードさん!」


 五郎の声に反応し、ギリギリで矢をダルシードは、躱す。


 しかし....


 魔族の射った矢は、速度を落とさずに真っ直ぐに飛んでいく。


 「グサッ!」


 「レビーさん!!!」


 矢は、後方で大鬼と戦っていたレビーの身体を貫いた。


 レビーは、訳が分からなかったが自分の身体を触り、大量の血が流れているのを把握した。


 体の真ん中に穴が空いており、レビーはそれを視認すると力なく地面へと倒れた。

 

 阿子がそれを見てレビーさんへと駆け寄る。


 「レビーさん!レビーさん!」


 阿子がレビーの身体を揺すり、ポーションなどを使うも、既にレビーは、死に絶えていた。


 それを見て、五郎と阿子は、魔族を睨みつける。


 「五郎、阿子!慌てるな!やつの思う壺だぞ!」


 ダルシードは、今にも魔族へ飛び掛かろうとする気配を五郎と阿子から感じ、声を張り上げる。


 「くっ!」


 五郎も頭では、分かっているが抑えきれないそんな形相で歯を食いしばり、必死に耐える。


 阿子も冷たくなったレビーの身体を見つめながら、必死に耐えた。


 すると、少し離れた場所で大鬼たちと戦っていた慶三郎とルーカスがダルシードと五郎の所へ来た。


 直情的である慶三郎を心配したダルシード、五郎だが、慶三郎の表情は、冷静であった。


 「ダルシードさん、五郎。あの角野郎たちを二人にするのは、良くねぇ。俺と師匠で弓使いを相手するから、もう1匹を二人に頼む。」


 そう言うと、慶三郎は魔族へと目を向ける。


 「副団長。レビーは良い奴だったよ。そっちは任しましたぜぇ!」


 ルーカスもいつも通りな立ち振舞いではあるが、口調から圧を感じる。


 「ああ。頼むぞ!」


 ダルシードは、強く頷く。


 「バーサクッ!!!」


 慶三郎の身体を赤黒い光が包み込み、5秒間への超人へと変化させる。


 踏み込みと同時に二人の魔族へと距離を縮める。

“シキブ”と“ソージ”という二人の魔族もその速さに反応できていない。


 「うおりゃっ!!」


 慶三郎は、上から魔族目掛けて大剣を振り下ろす。


 大剣が巻き起こす風圧で周りが吹っ飛び、魔族も身体を飛ばされる。


 すると、シキブとソージが左右に離れた。

その瞬間、五郎、ダルシード、ルーカスは、慶三郎の狙いが、2人の魔族の分断である事を理解し、即座に間合いを詰める。


 慶三郎もバーサクが切れる前にと“シキブ”へ追撃する。


 「ちっ!なんなのこの大剣使い!」


 魔族“シキブ”の矢を至近距離で交わす慶三郎。

そのまま大剣を叩き込む。


 しかし、シキブはそれを躱し、慶三郎の腹を蹴る。

 慶三郎の大きな身体が後ろへと吹っ飛ぶ。


 「くっ!あとちょいだったのに!」


 あのまま行けば、間違いなくシキブの身体は、真っ二つであっただろう。しかし、大剣を振るう寸前に“バーサク”の5秒が切れてステータスが30%まで落ちてしまったのだ。


 すかさず、慶三郎に矢を射ろうと弓を引くシキブ。それを防ぐようにルーカスが斬りかかる。


 「くそっがっ!」


 ルーカスの剣がシキブの身体を頬を掠る。

シキブは、距離を取り、再び矢を射ろうとするが、ルーカスは間合いを離さないように追撃を繰り返す。


 「しつこい!」


 シキブは、腰に付けていた細剣を手に取り、ルーカスと剣を打ち合う。


 (くそっ!10分!早く経てよっ!)


 慶三郎が通常のステータスに戻るまでのインターバルは、10分。

 戦場においては、とてつもなく長い時間。


 しかし、バーサクを使用した事によってシキブとソージの2人の魔族を引き離した結果は、大きい物だった。


 身体にダメージを受けているソージと戦うダルシードと五郎。


 表情は、冷静だが、内面に怒りを爆発させて、猛攻をソージへと仕掛ける。


 「ちっ!面倒だぁ!火炎の大蛇フレイムギドラ!」


 ソージの背後から火炎が蛇のように五郎、ダルシードへと襲いかかる。


 しかし、それを冷静に二人は避け、ソージへと攻撃を続ける。


 ソージは、先程ダルシードの槍で貫かれた右腕を庇いながら攻撃をいなすも、全部の攻撃は避けられずに徐々に、二人の攻撃がソージの身体へと刻まれていく。


 ダルシードは、スキル“衝撃インパクトにより、槍の攻撃力を増加させ、五郎も”加速世界アクセルワールド“により速度を上げ、更に追い討ちを掛けていく。


 (ここで決める!)

 (このチャンスでこいつを倒す!)


 二人の気持ちは、同調する。


 一瞬にして、数十もの剣撃を魔族ソージの身体に叩き込む五郎。


 ソージは、完全に勢いを無くし、五郎と入れ替わるようにダルシードの槍がソージの胸部へと突き刺さる。


 「畜生がぁ......」


 胸部から血を噴き出し、倒れるソージの首を冷静に五郎がねる。


 五郎たちの周りで戦う兵士が、歓喜する。


 その声を聞き、顔をしかめる魔族シキブは、ルーカスと剣を打ち合い続けている。


 (ステータスが戻ったらすぐに斬る!)


 慶三郎は、ルーカスと魔族の攻防から目を離さない。


 (ちっ!ソージがやられたか。それにしても、こいつ段々と剣速も力も上がってきてる!スキルかっ!)


 シキブが顔を険しい物にしているのは、ソージが倒されたという事だけでなく、相手ルーカスの不可解さの方が大きかった。


 ルーカスのスキル:能力永続増加クレッシェンド

 

 剣を交わる毎にステータスが、少しずつ上がっていくスキルである。


 時間が経過する度に、徐々にルーカスの動き、剣の力が強くなっているのを感じ、対応が調整できない。


 しかも、徐々に上がっていくため、なかなか気づけない。


 初めに決闘した慶三郎もそうだった。


 シキブも次第に対応できず、身体に切り傷を増やしていく。


 「レビーの仇、討たせてもらうよ。」


 ルーカスは、いつもの陽気な感じではなく、暗く冷静な声色でシキブへと呟く。


 「くっ!」


 ルーカスは、徐々に剣を捌けなくなってきたシキブを見て、一気に畳みかける。


 右から左に下から上にとスキルによって上がったスピードを駆使して四方八方から剣を振るう。


 「終わりだよ。魔族でも女性は斬りたくなかったが。」


 「てめぇーなんざこっちから願い下げだぁー!」


 ルーカスの振った剣がシキブの首を右から左へと通過する。


 シキブの頭部が空中へと舞い上がり、身体は、重力に任せて地面へとドスンッと倒れる。


 「おーーーーー!」


 左の戦場に現れた魔族二体を討ち取った事を確認し、兵士たちが歓喜の声を上げる。

 

 「第三軍!魔族が倒された!突撃!!!」


 グスタフがそれを見て大声を張り上げ、突撃の合図を出す。



 「ハッハッハッ!グスタフ殿!やりおったのぉ!こちらも突き進むぞぉ!」


 左からの歓声を聞き、魔族を討伐したと理解した総司令ティグリスは、更に中央と右へ進撃の合図を出す。


 「ふんっ。ソージとシキブがやられたのか。まあよい。」


 「ほぉう...こちらにもやっと魔族が出張ってきよったか!遅くて待ちくたびれたわ!」


 ティグリスの前に二人の魔族が現れた。

片方は、細身の長身に一本の曲がった角の魔族で槍を持ち、ティグリスを見ている。


 「あの爺さん、大鬼一人で殺しすぎだよ!」


 「ナガツグ。あいつは、向こうの総司令だ。」


 「へー。総司令がこんな所まで来てるんですね〜。さてやるかー。」


 ナガツグという魔族は、やる気がなさそうな顔で槍を構える。


 もう一方の魔族は、小柄だが威厳ある風格で頭から2本の角が生えており、身の丈と同じぐらいの剣を担いでいる。


 「ナガツグ、お前は、シキブ達がやられた右の方にいけ。こいつは俺がやる。」


 「なんじゃ、両方来ないのかー。詰まらんのぉ!

 それともお主一人でわしを楽しませる事ができるのかのぉ?」


 「ふっ。じじいが調子に乗るなよ」


 周りでは、魔族出現とティグリスを守るようにと兵士たちが喚いていたが、副官カルディアが周りに集中しろと命令を出している。


 ナガツグという魔族は、左、つまり五郎たちの所へ向かっている。


 「カルディア副官!!ティグリス様をお守りさせて下さい。」


 ため息を吐き、静かに言葉を出すカルディア。


 「コルテスよ。前を見よ。」


 コルテスは、前を見る。なぜか戦場に静寂が漂っている。兵士たちも大鬼たちも。


 そこには、ティグリスが一人佇んでいる。大斧がついた槍を肩に担ぎ、見下ろすティグリス。


 地面には身体が半分になった先程の魔族。


 「ど...どうい....どういう....」


 コルテスは、言葉に詰まり、その光景を凝視するしかない。


 「コルテスよ。まあ、そういう事だ。持ち場に戻れ。」


 「は、はいっ!」


 カルディアは、コルテスの肩をポンッと軽く叩き、そう言うと、次は戦場全体に聞こえるように大声を張り上げた。


 「魔王軍を排除せよ!!!戦争はまだ終わっとらんぞぉ!!!」


 カルディアの大声で兵士たちが動き出す!歓声は上げずにただただ、身体を動かし、目の前の大鬼たちへ攻撃を加える。


 「ば、化け物か。貴様....人間のくせに....」


 「ふん!。」


 魔族が生き絶えるとティグリスは、大声をあげる。


 「弱いの!弱いの!魔族ー!訓練が足らんぞぉ!ガハハハッ!」


 一瞬にして、魔族を倒すティグリス。魔族に油断はあったかもしれない。


 だが、魔族はティグリスの振り下ろした大斧を確かに受け止めた。


 しかし、そのまま気付いた時には身体を切られていた。


 ティグリスの無双振りは、止まる事はない。

魔族を倒した事を無かったことにするかのように大鬼たちを倒し、突き進む。


 左に向かった魔族ナガツグも自分の身の危険を感じたのか一旦、後方へと引いていった。


 首都防衛戦の初日は、聖王国側の大勝利に終わった。


 ただ、数が違う。戦闘が開始されてから判明した事だが、推定5万というのは、あくまで推定であって、続々と追加部隊が後方から流れてきており、推定の倍ぐらいは、いるのでは?

 そういった予想をする者もいた。


 テントで五郎たちは、レビーや今日死んでいった兵士たちの葬式を行った。


 葬式とは言っても火を焚き、各々が祈るだけの簡単なものではあったが。


 大幅に前線を上げ、魔族も退けた事で明日も同じく戦場を3つに分け、進軍するという方向へ決定した。


 大きな火がうねるように夜空へと立ち上る。

煙がさらに天へと伸びていく。


 そんな様を五郎たちは見て、この首都防衛戦の勝利を願った。


 2日目。太陽が地平線から顔を出す。

 すでに隊列を整えた聖王国軍の前に大鬼の大軍、空には怪鳥の群れ、所々に巨大な身体を出す一ツ目巨魔サイクロプス


「なんだか、昨日より多くないか....」


 兵士たちは、魔王軍の隊列を見て、ざわめいていた。


 総司令ティグリスや左側の戦場を担う副司令グスタフも敵の数を見て顔を険しいものにした。


 「増えたねぇ〜やっぱり、この調子だとまだまだいるかもなぁ〜」


 ルーカスがいつも通り陽気に言う。


 「全部ぶっ飛ばしてやる!」


 慶三郎が意気込んで、進軍の合図を待っている。


 太陽が、地平線から半分顔を出したのを見計らって、ティグリスとグスタフは、声を張り上げる。


 「皆の者。進軍!!!」


 一斉に進軍を開始する聖王国軍。

昨日の大勝利の余韻からか敵の数が増えたように見えても、兵士たちの士気は、高かった。


 昨日と同じく、中央のティグリスの突撃により、全体が前へと引っ張られる。


 昨日よりも激しい攻撃を見せるティグリスに火をつけられたように兵士たちも自ら気合いを入れて、魔王軍へと攻撃を開始した。


 (やっぱり、昨日より多いですね。それにティグリス様があれだけの攻撃を加えているのに、敵の数が減っているように見えない.....後方からの戦力補充か.....)


 ティグリスの副官であるカルディアは、戦況を見つめて、なんだかよくわからない違和感を感じてた。


 「おりゃ!おーりゃ!師匠数減らないっすね!!」


 「あぁ〜多すぎるってのぉよぉ〜!これなんかあるっしょっ?」


 左の戦場で慶三郎とルーカスが大鬼をたちを斬りながら話していると、グスタフが喝を飛ばしてきた。


 グスタフもルーカスもカルディアと同じく違和感を感じていたが、それが一体なんなのかは、わからない。

 油断はしないようにしつつ、目の前の敵を倒していった。


 2日目、開戦してから3,4時間は経とうとしていた。

 戦局は、拮抗状態であった.....

魔王軍は、間違いなく被害は受けている。だが、前へと進めないのだ。


 すると、右から足音が聞こえてくる。


 「ん?」


 皆がそちらの方向を見る。そこには、砂を巻き上げて行進してくる黒い影。


 「ふ、ふ、副官!!み、み、右側から魔王軍の援軍です!!」

 

 「数は?」

 

 「その数、さ、さ、3万。3万です!!」


 (3万だと....なにか仕掛けてくるとは、思ったがそんな兵力どこから)


 「わかった!右側、グスタフ殿にも伝えてこいっ!」


 「はっ!」


 伝令係は、駆け足で左側へと向かっていった。


 カルディア副官は、冷静を装っていたが、内面では、焦りを感じている。


 目の前には、昨日より増えているだろう魔王軍の軍勢。それに加えて、突如右側から現れた3万の敵戦力。


 「———以上です!」


 「わかった。」


 「グスタフ団長!3万の敵援軍とは本当なのですか!?西側ファンブルグが抜かれたと言う情報もないですし、い、一体....」


 第三軍の団長補佐が、報せを受けたグスタフへと動揺を隠せない様子で言っており、その動揺は、第三軍の本部全体に瞬く間に広がった。


 「静まれ!!!敵が増えたからと言ってやる事は、変わらん!左側は、素早く押し込み、中央の援助に向かうぞ!」


 グスタフは、腹の底から声を出し、本部の動揺を一喝した。


 (実際のところ、ここに来て3万の援軍は、まずい。ヘリーディンの戦いのせいで、聖王国側は、援軍は望めん.....)


 グスタフは、苦虫を噛んだように顔つきを険しくした。


 しかし、そんな状況の下だが、前線で戦う兵士たちや五郎たちは、昨日の勢いのまま、攻勢を続けており、しばらく拮抗していた前線を徐々にだが、押し上げている。


 「加速世界アクセルワールド!」

 「焼き尽くせ!火炎の球フレイムボール

 「帯雷電電たいらいでんでん!」


 五郎たちは、新しく覚えたスキルを使いこなして、目の前の大鬼や怪鳥、一ツ目巨魔サイクロプスを葬っていく。


 「敵は、多いけど強くはないね!このままどんどん進んでこぉ!!」


 阿子は、魔法のコツなどを特訓で学び、量も威力も上がった。阿子の放つ炎や氷の魔法に貫かれ、焼かれていく大鬼や怪鳥の群れ。


 「どんどんいくよ!氷の矢アイスアロー×3」


 しかし....


 阿子が、放った三本の氷の矢が急に何もない空中で弾かれた。


 「えっ!?なになに?MPは...まだたくさんあるけど.....」


 MP切れによる魔法が解除されたのかと思い、慌ててステータスを確認するが、まだまだある。


 「お、おい!どういうことだよ..」


 慶三郎が何かを見て、驚いている。


 五郎も大鬼の群れから出てくるを見て、目を丸くする。

  

 大鬼の群れから出てきて、姿を表す杖を持つ眼鏡をかけた男性。


 遠目でその姿を確認した第三軍団団長グスタフの顔は、鬼の様な形相に変わっている事に、周りにいた補佐たちが気付く。


 「あらら。勇者来てんのかい。そら手こずるわけや。まあ、そこまで強くはなさそやけどな。」


———その男は、意地悪そうな笑みを浮かべて、五郎たちを一瞥すると、杖を構える。

同時に、中央で魔王軍の死体の道を築いているティグリスの前にも1人のが姿を見せていた。


 「小僧.....どこかで会った顔だなぁ?」


 ティグリスは、その人間の顔を見て過去を思い出していた。





 





 












 

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