第2話 タクシーに相乗りするは、ビジネスパーソン

 

 これは、たまたまテレビ番組で某国への往復航空券に当選した知人とのバディ旅の話。「君海外慣れてるでしょ、初めての海外だから付き合ってよー」と言われて、現地集合、現地解散なバディ旅をすることに。


(いや、緯度的にはあってるかもしれないけれど、経度的には150度くらい違う国に僕は行っているのであって、某国は初めてなんですけどね……)



 某国空港、夕方。彼の初めての夜は、空港の客引きたちにつかまり、近くの謎のホテルに監禁されて過ごした。初めての夜に、廊下に出ることもままならない不安なまま、彼は臭い枕を涙で濡らした……

 あるよね~、外から鍵かけるタイプのぼったくりホテル、たぶん。

 良い子は空港で客引きにつかまってはいけませんからね。



 翌日、初日のホテルだけは押さえていた僕は、彼と現地集合。

「まともなホテルだ~」と、彼は感動していたけれども、いやそれよりも、ぶらり旅でも初日のホテルは押さえておけばいいでしょ、、、

……そんなことを思っていた僕も、某国某ハッテン場にて外から鍵を閉められたドアをけ破ることになったりした後に(僕サイドの話はいずれ)……現地解散。



 彼は早めに空港へと向かうタクシーに乗った。僕はそれを見送って、ひとり街に戻る……まさか直後に彼が巻き込まれているとは知らずに。


 彼を乗せたタクシーはすぐ次の交差点で左折し、停車した。ドアが開きシルバーのアタッシュケースを抱えた生真面目そうなビジネスパーソンがさっと乗り込んでくる。ここはそういうものなのかとチラリと横目にビジネスパーソンを見やると、すっ

とシルバーのアタッシュケースが彼の膝の上に置かれた。……置かれたまでは良いのだが、同時にビジネスパーソンの手は彼の股間に……満足げに頷くタクシー運転手。


 そう、ここは某国はバンコク市なのだった。



 タクシー運転手とビジネスパーソンとはきっとグルに違いない。そう思い固まったまま、彼の頭は眩暈を覚えグルグルと回転した。


 やがて伸ばされたビジネスパーソンの手が両手となり、あそこのチャックがおろされ始めた時……、某武術有段者の彼の技がついに炸裂した。


……ムエタイ使いに対抗できるような彼の話で良かったね。そして、ナイフや銃も登場しなくて。

良い子のみんなは、できるだけ気をつけようね。


……ていうか、緯度が下がると、どの経度でもタクシーのトラブルはなぜあんなに多いのか……

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